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医師以外の無資格者が行う在宅医療、どこまで可能?

19.08.27
ビジネス【法律豆知識】
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医師法上、医師以外の無資格者が医療行為を行うことは原則として認められていません。
もっとも、日本が超高齢化社会に突入し、在宅医療が推進されるにつれ、医療行為の概念も変化し、医師以外の無資格者でもかつては医療行為とされていた行為を行うことが可能となったものもあります。
また、『社会福祉士及び介護福祉士法』の改正により、介護福祉士が行える行為も増えました。
今回は、医師以外の無資格者が行うことが可能な在宅医療に関連する行為についてご説明します。
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従前の『医行為』の解釈とは?

医師法上、『医業』は医師でなければ行うことはできません。
これに違反した場合、罰則が課されます。
医業とは、法律上、『医行為』を『業として』行うことをいいます。
『医行為』とは、行政上、『当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為』を意味すると解釈されており、『業として』とは、『反復継続する意思をもって』を意味すると解されています。
要は、人体に危害を及ぼすおそれが大きい行為が医行為となるわけです。

医師制度は、免許制を採用しており、医師は医師免許を取得しなければ医行為を行えません。
このような制度を採用した目的は、『免許による医行為の質の担保』と『適切な医療の提供による国民(患者)の生命身体の安全を確保』する点にあります。
そのような観点から、従前は、医行為の範囲は広く解されており、血圧測定や視力の測定も医行為に含まれるとされていました。


家族や介護福祉士が行える医行為とは?

ところが、日本が超高齢化社会に突入し、介護の需要が増しました。
介護の現場では、家族あるいは介護福祉士などによって検温や血圧測定、服薬確認などの胃ろう栄養の実施、褥瘡(じょくそう/床ずれのこと)に対するガーゼ交換、喀痰吸引、人工肛門患者のパウチ交換などが日常的に行われていたわけですが、これらの行為が医行為に該当し、医師または医師の指示を受けた看護師しか行うことができないとなると、患者の家族や介護福祉士のそれらの行為はすべて違法となり、介護の実態にそぐわなくなります。
そこで、厚生労働省は、各都道府県知事宛の通知において、検温、血圧測定、パルスオキシメーターの装着、軽微な切り傷などに対する簡単な処置、爪切りなどにつき、医行為から除外する旨の解釈を示す通知を出しました。
そのため、これらの行為を患者の家族や介護福祉士が行っても、違法とはならなくなりました。
また、社会福祉士及び介護福祉士法の改正により、一定の要件の下、介護福祉士による喀痰吸引や胃ろうによる栄養管理が認められることになりました。
これによって、介護福祉士による医行為もある程度は、法的根拠をもって認められたことになります。
もっとも、ここで医行為から除外ないし法律によって介護福祉士によって可能とされた行為は、限定的であり、介護の実態と行政解釈の乖離がすべて解決したわけではありません。


医行為でも許容される範囲とは?

行政解釈や社会福祉士及び介護福祉士法の改正により、患者の家族や介護福祉士が行える医行為の範囲は拡大しました。
もっとも、これ以外に患者の家族や介護福祉士が行える医行為がないかというと、そういうわけではありません。
たとえば、医行為の必要性、目的の相当性、手段の相当性、非侵害利益の軽微性といった要件がいずれも認められるような場合は、患者の家族や介護福祉士の行為が形式的には、医行為にあたるとしても、実質的違法性を欠き、患者の家族や介護福祉士の行為が法的に許容される場合があります(もっとも、これらの行為が許容されるかは、事案によりけりであり、無制限に許容されるわけではありません)。
また、患者の急変時に患者の家族や介護福祉士が行う救命措置などの医行為は1回的なものであり、『業として』という要件を欠くことから、違法とはならないと解されています。
このように、形式的には医行為にあたる行為であっても、事案によっては、医師以外の患者の家族や介護福祉士が行っても違法とはならない場合があることに注意が必要です。

在宅介護の必要性の向上を受けて、患者の家族や介護福祉士が行える行為の範囲は拡大しましたが、依然として行える行為には限界があり、行政解釈も法改正も追いついていません。
いずれは、立法による手当てがなされるでしょうが、それまでは、通知などの行政の動きを注視する必要があります。


※本記事の記載内容は、2019年8月現在の法令・情報等に基づいています。