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【認知症対策】親の資産が凍結される前に。「家族信託」の基本と税務の落とし穴

26.08.14
生前対策
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皆様、こんにちは。いつもご愛読いただき、ありがとうございます。
最近、「親が認知症になったあとの財産管理」について、ご相談いただくことがとても増えてきました。そこで今回は、ニュースや書籍でも話題になっている「家族信託」について、税理士の視点からメリットと注意点(とくに税務上の落とし穴)を、なるべくやさしくお伝えしていきます。
ご家庭の大切な財産を守るために、ぜひ最後まで読んでください。

1. なぜ今、家族信託が注目されているのか

高齢化が進む日本では、「認知症」は誰にでも起こりうる身近な問題になっています。 2022年時点で、65歳以上の高齢者のおよそ3.6人に1人が認知症または軽度認知障害の症状があると推計されており、2050年には日本の人口のおよそ10人に1人が何らかの認知機能の障害を抱えると予測されています。
※出典:厚生労働省研究班・九州大学 二宮利治教授「認知症及び軽度認知障害の有病率調査並びに将来推計に関する研究」(令和6年報告)。2022年推計約1,002万人、2050年推計約1,218万人(いずれも認知症+軽度認知障害の合計)。

 


認知症による社会への影響は増加する一方ですが、一番のリスクが財産の「資産凍結」です。

「介護費用は親の預金から出せばいい」と思っていませんか?

 本人が認知症などで判断能力を失うと、法律上、銀行口座からお金を引き出せなくなってしまいます。

「いざとなれば実家を売って施設の費用に充てよう」と思っていませんか?


不動産の売却も、本人に判断能力がなければできません。共有名義の不動産があると、共有者の一人が認知症になっただけで、全員の同意が得られず、売却も修繕もストップしてしまいます。

「成年後見制度を使えば大丈夫」というのは、実は大きな誤解です


終身制と費用負担

資産が凍結されたあとにそれを解除するには、家庭裁判所へ成年後見の申立てが必要です。ただ、ここには重い負担が隠れています。専門家が後見人に選ばれると、月2〜6万円ほどの報酬で平均利用期間10年と想定すると240万円~720万円の費用負担がかかります。さらに、一度成年後見制度を開始したら本人が亡くなるまで原則として終了できないことが大きな問題となります。
※2026年6月成立の改正民法により、将来的に終身制は見直される予定です(施行は2028年頃の見込み)。ただし専門職への報酬や資産運用の制約は改正後も変わりません。

家族の意向が通りにくい

「息子である自分が後見人になれるはず」と思って申し立てても、実際には家庭裁判所が司法書士・弁護士・社会福祉士などの専門職を選ぶケースが大半を占めているのが実情です。

資産管理の制約
居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必須で、許可のない売却は無効になります。また、株式投資などの積極的な資産運用は、後見人の善管注意義務の観点からそもそも認められないのが実務上の運用です。

家族信託は、成年後見制度が抱える「硬直性」「継続コストの見えにくさ」「資産承継設計の不在」を、判断能力があるうちに契約で先回りして解消する仕組みとして位置付けられます。

この事態を防ぐ確実な予防策として、いま「家族信託」が求められています。


2. 家族信託とは?(最小限の仕組み)

家族信託とは、信頼できる家族に財産の管理・運用・処分を託す仕組みです。

主に次の3人が登場します。
・委託者:財産を持っている本人。信託を設定する人
・受託者:委託者から財産の管理・運用・処分を任される人
・受益者:信託された財産から生まれる利益を受け取る人

家族信託では、委託者自身が受益者を兼ねるケース(自益信託)がほとんどです。

「親の財産を子が管理し、そこから生まれる利益は親のために使う」という、安心できる体制をつくることができます。


3. 家族信託のメリット 家族信託でできるようになること

・認知症になっても財産管理を続けられる 
事前に設定しておけば、委託者が認知症になっても、受託者が財産を管理・処分できます。
・二次相続まで財産の行き先を決められる 
通常の遺言では「その人が亡くなったあとは誰に」という二次相続先までは指定できません。家族信託なら「夫が亡くなったら妻へ、妻が亡くなったら長男へ」というように、複数世代にわたる設計が可能です。
・成年後見よりも柔軟に対応できる 
信託契約の中に「不動産が古くなったら売却して買い替えてよい」といった具体的な指示を盛り込むこともできます。


4. 他の制度との違い

 財産管理や承継の制度には、家族信託のほかに「遺言」や「成年後見制度」があります。それぞれの違いをまとめました。



5. デメリット・注意点(税理士からの警告)

これまでの成年後見制度と比べて便利に見える家族信託ですが、税務・法務の面で知っておくべきリスクもあります。

・身上保護はできない
家族信託はあくまで「財産管理」の仕組みなので、身上保護が必要な場合は任意後見制度などと併用する必要があります。

・節税効果はない
家族信託を設定しても、相続税や贈与税の評価額は変わりません。「家族信託で相続税が安くなる」というのは誤解で、節税目的には向いていません。

・損益通算ができない
賃貸物件を信託財産にする場合、信託内で生じた損失は、給与所得や他の不動産所得と損益通算できません。

・遺留分侵害額請求のリスク
特定の相続人だけに多くの財産が渡るような設計にすると、他の相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。


6. こんなご家庭におすすめです

・ 将来、介護施設の入居費用のために自宅を売却する可能性があるご家庭
・ 親が高齢で遠方に住んでいて、子が不動産の賃貸管理・修繕・売却を進めたいご家庭
・ 障がいのあるお子さんの生活費や医療費を、継続的に支払う仕組みをつくりたいご家庭
・ 事業承継で、株式を信託財産にして後継者に経営権を引き継がせたいご家庭


7. 手続きの概要と費用

手続きのステップ

 1.信託の目的・対象財産・受託者を整理する
 2.信託契約書を作成する(トラブル防止のため公正証書にするのがおすすめです)
 3.不動産は法務局で信託登記を行い、現金は信託口口座を開設する
 4.受託者が信託契約書の内容に従って、財産の管理・運用を始める

費用の目安

 ・専門家報酬:信託財産の1%前後、または最低30万円程度からが一般的です
 ・公正証書作成費用:公証役場に支払う実費がかかります
 ・登録免許税:土地は固定資産税評価額の0.3%
 (※令和11年3月31日までの軽減税率)、建物は0.4%が発生します


8. よくある誤解Q&A

Q. 家族信託をすれば相続税は安くなりますか?

A. 安くなりません。家族信託そのものに、直接的な節税効果はありません。

 

Q. 認知症になってからでも家族信託は使えますか?

 A. 原則としてできません。判断能力が失われたあとは、新たに設定することはできません。

 

Q. 信託期間中、確定申告は必要ですか?

 A. 必要です。不動産の名義が受託者であっても、税務上の収入は受益者の所得として扱われるため、受益者が申告・納税を行う必要があります。


9. まとめ:専門家に相談すべきタイミング

家族信託は、認知症の兆候が出てからでは手続きができなくなるため、早めのご相談をおすすめします。また、設計ミスが思わぬ課税や親族間のトラブルにつながるケースがあるため、信託の設計段階から税理士をはじめとする専門家に相談し、法務・税務の両面からしっかりと検証することが重要です。 当事務所でも、最適な財産管理・承継のプランをサポートしております。「我が家に家族信託は必要なのか?」といったご相談からでも構いませんので、まずは無料相談で、ご家庭に家族信託が必要かどうかの診断だけでも受けてみませんか。