【必読】「教育資金贈与特例」3月末で完全廃止へ―改正の背景と「金融機関の締切」に関する注意点
本日は、長らく相続対策・生前贈与の定番として活用されてきた「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置(以下、教育資金贈与特例)」について、制度終了に伴う緊急の実務情報をお届けします。
昨年末の令和8年度税制改正大綱において、本制度の適用期限は「2026年(令和8年)3月31日をもって終了(延長なし)」となることが最終確定しました。
現在、2026年2月上旬。「あと1ヶ月以上ある」とお考えの方は、認識を改める必要があります。
実務の現場では、すでに「受付終了へのカウントダウン」が始まっており、一刻の猶予も許されない状況です。
今回は、なぜ本制度が終了に至ったのかという背景と、3月末に向けた金融機関のシビアな締切り状況について、詳細に解説します。
1. なぜ「廃止」されたのか? 令和8年度税制改正の議論
そもそも、この制度は2013年(平成25年)に「高齢者世代が保有する資産を、現役世代(子育て世代)へ早期に移転させ、経済を活性化させる」という目的で創設されました。1,500万円まで非課税という大きな枠は魅力的で、累計で数兆円規模の資産移転に寄与してきました。
しかし、導入当初から現在に至るまで、政府・与党税制調査会の中では常に「格差の固定化につながる」という厳しい議論が交わされてきました。
▼ 「金持ち優遇」との批判
本制度を利用できるのは、まとまった資金を持つ富裕層に限られます。結果として、「富裕層が税負担なく資産を孫へ移転させるための節税ツール」になっているとの批判が根強くありました。 政府はこれまでも、適用対象となる所得制限(受贈者の所得1,000万円以下)を設けたり、贈与者が死亡した際の管理残額に対する相続税課税を強化したりと、徐々に「包囲網」を狭めてきましたが、今回の改正でついに「制度の役割は終わった」との判断が下されました。
▼ 他の支援策との兼ね合い
また、高校授業料の実質無償化や、大学等の修学支援新制度など、国としての教育支援策が拡充されてきたことも背景にあります。「個別の富裕層への減税ではなく、社会全体での支援へ」という政策転換が、今回の廃止決定の決定打となりました。
2. 「3月31日」では間に合わない―金融機関の締切
ここからが本日の最重要ポイントです。 法律上の期限は「2026年3月31日」ですが、皆様が手続きを行える期限は、それよりもはるかに早く到来します。
金融機関(信託銀行、銀行、証券会社等)にとって、本制度の口座開設や入金処理は非常に事務負担が重い業務です。契約書の確認、戸籍謄本による親族関係の確認、税務署への申告データの作成など、バックオフィスでの処理に時間を要します。
そのため、多くの金融機関では、3月末の駆け込み需要によるパンクを防ぐため、「社内的な受付締切日」を設定しています。
▼ 具体的なスケジュールの目安
各行で異なりますが、概ね以下のようなスケジュール感が一般的です。
2月中旬〜下旬
・ 新規口座開設の相談・予約の事実上のリミット。
・ 必要書類(戸籍謄本等)の準備期間。
3月10日〜15日頃
・「新規申込」の受付最終期限とする金融機関が多いラインです
・ これ以降は、書類不備があった場合に3月末までの完了が保証できないため、
受付を断られるケースが出てきます。
3月20日頃
・「追加贈与(入金)」の着金期限。
・ 既に口座をお持ちの方が資金を追加する場合も、この日までに振込手続きを
完了させる必要があります。
つまり、「3月31日に銀行に行けば間に合う」というのは大きな誤解です。
その日には、すでに窓口は閉ざされています。
3. 既存契約者の方へ―「追加贈与」のラストチャンス
「うちは数年前に孫の口座を作ってあるから関係ない」と思われている方も、今一度ご確認ください。 「非課税枠の使い残し」はありませんか?
本制度の上限は受贈者(お孫様)一人につき1,500万円です。例えば、過去に500万円だけ贈与して口座を開設している場合、残り1,000万円の枠が残っています。 この残枠を活用できるのも、今回の3月末(実質3月中旬)が最後です。
4月1日以降は、いかなる理由があっても、この専用口座への非課税での追加入金はできません。将来、お孫様が医学部に進学したり、海外留学を希望されたりした場合、今のうちに追加贈与しておかなければ、その都度贈与税を気にする必要が出てきます。
手元資金に余裕があり、相続税対策効果を高めたいとお考えの場合は、「枠一杯までの追加贈与」を検討いただければと思います。
4. 制度終了後(2026年4月以降)はどうなる?
最後に、制度終了後の取り扱いについて整理します。 「3月末で制度が終わると、口座のお金も引き出せなくなるのか?」というご質問をいただきますが、その点はご安心ください。
• 預けた資金の有効性
2026年3月31日までに入金された資金は、制度終了後も有効です。
お孫様が30歳になるまで(※一定の要件を満たせば40歳まで)は、
教育資金として引き出す限り非課税です。
• 領収書の提出
これまで通り、教育資金として支払った領収書を金融機関へ提出する必要があります。
この事務手続きは4月以降も継続されます。
• 契約終了時の課税
お孫様が年齢制限に達した時点、あるいは口座残高がゼロになった時点で
契約は終了します。
もし契約終了時に使い切れない残高(管理残額)があった場合は、その時点で
「お孫様への贈与」があったものとみなされ、贈与税の課税対象となります。
【結論】今すぐアクションを
教育資金贈与特例は、確実かつ大きな節税効果が見込める数少ない制度でした。その扉が今、閉じようとしています。
もし、ご自身のアクションプランとして、 「孫への援助を考えていた」 「口座は作ったが、入金はまだ少額だった」 という状況であれば、早急に金融機関へご連絡ください。必要書類である戸籍謄本の取得だけでも、役所の混雑状況によっては1週間程度かかる場合があります。
ラストチャンスを逃さないよう、賢明なご判断をお願い申し上げます。