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歯科医院特有の医療廃棄物『撤去冠』の取り扱いについて

24.08.06
業種別【歯科医業】
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患者の歯から取り外した金歯や銀歯などのいわゆる『撤去冠』は、患者からの要望があれば渡すこともありますが、通常は不要物なので歯科医院で処分することになります。
撤去冠は歯科医院特有の医療廃棄物で、ある程度溜まった段階で専門の金属業者に売却します。
このときに得た売却収入は漏れなく計上しないと、税務調査で指摘され、場合によってはペナルティを受ける可能性があります。
売却収入が発生する撤去冠の基礎と、適切な取り扱いについて、理解を深めておきましょう。

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金歯に使われる金の買取価格が上昇中

歯科医院では、さまざまな医療廃棄物が出ます。
医療廃棄物とは、医療機関などで医療行為などに伴って排出される廃棄物のことで、紙くずやビニール片などの一般的なゴミとは分けられます。
撤去冠も医療廃棄物ですが、貴金属が含まれているため、すべてを廃棄物として捨てるのではなく、溶融処理が行われた後、貴金属部分については回収されます。
ちなみに、医療廃棄物のなかには、血や口内粘液が付着したガーゼや脱脂綿、注射器などの感染性廃棄物があります。
感染性廃棄物は、人が感染した、もしくは感染するおそれがある病原体が含まれる、またはついているもの、あるいはそのおそれがあるものを指しますが、『撤去冠』は感染性廃棄物には含まれません。

撤去冠はもともと患者の口内に詰められていた金歯や銀歯です。
どちらも素材に貴金属が使われており、特に金歯に使われている金はとても高価な貴金属の一つです。
近年は同じ自費治療でもセラミックを選ぶ患者が増えたため、冠(クラウン)や詰め物に金を使うことは少なくなってきました。
それでも金属アレルギーのある患者は、銀と比較してアレルギーが起こりにくい金を選びますし、歯との親和性も高いことから、積極的に金歯をすすめる歯科医師もいます。

金の純度は「K」という単位で示され、いわゆる24Kは99.99%が金の「純金」として扱われます。
ただ、24Kは素材として柔らかすぎるため、金歯には一定の割合で金を含む「金合金」を使用するのが一般的です。
アクセサリーなどによく使用される「18K」も金が75%含まれた金合金です。

冠として使用されるのは、この18Kや、金に銀や銅やパラジウムなどを加えた金合金、またはプラチナを加えた白金加金になります。
そして、これらの金の撤去冠は、貴金属の含有量によって、金属業者に買い取ってもらうことが可能です。
金の買取価格は常に変動していますが、ここ数年は上昇傾向にあり、2024年3月には1グラム1万3,000円台に突入しました。

撤去冠の売却収入の計上漏れに注意

保険治療で使われる銀歯も、貴金属の含有量によっては売却が可能です。
銀歯は貴金属の組み合わせによって、いくつか種類がありますが、金12%、パラジウム20%、銀40~50%の貴金属を加えた「金銀パラジウム合金」を使うのが今の主流です。
金とパラジウム、銀の含有割合は決められていますが、それ以外の貴金属の割合に明確な規定はありません。

「金パラ」とも呼ばれる金銀パラジウム合金ですが、金や銀、パラジウムなどの貴金属は、金歯と同じように、精製と分析を経て、その含有量に応じて買い取ってもらうことができます。
銀の買取価格も上昇しており、2024年6月には1グラム160円台に突入しています。
また、パラジウムの買取価格も10年前と比べると上昇しており、2024年6月時点で1グラム4,800円~5,200円台を推移しています。

多くの歯科医院では、この撤去冠を一定期間溜めておき、ある程度の量になったら、金属業者に売却し、売却収入を得ています。
金や銀など貴金属の買取価格が上昇していることから、近年は、撤去冠の売却収入が高額になることもあります。

通常、撤去冠の売却収入は雑収入として計上しますが、もし計上漏れがあった場合、税務調査の際に指摘され、重加算税などのペナルティを受ける可能性もあるので注意してください。
すでに金属業者に撤去冠を渡しているものの、まだ換金されていない場合は、税務調査の際に説明できるように、預け入れた資料を残しておくようにしましょう。
また、換金されていない撤去冠は、収入としてではなく、資産として計上することになります。

撤去冠の売却収入は、高額になる傾向があるため、税務調査で入念に調べられる項目の一つです。
歯科医院として、適切な取り扱いを心がけましょう。


※本記事の記載内容は、2024年8月現在の法令・情報等に基づいています。