税理士法人ベストフレンド

日本のお家芸・ジョブローテーション

15.10.16
ビジネス【人的資源】
dummy
「ジョブローテーション」と言っても聞き慣れない言葉かもしれませんが、人事管理用語です。計画的な配置換えのことで、定期的な人事異動として企業の中のニュースになったり、ある場合は波風を立たせたりしています。

大企業の場合、社員として採用されたときから、ある程度の異動は覚悟の上でしょう。ただ、遠隔地への異動は、社員の生活にもかかわりますから、大きな問題となります。
dummy
<転勤もジョブローテーション> 
なぜ、ジョブローテーションが日本のお家芸かと言えば、海外では職種で採用されるのが普通ですから、あまり異動がないのです。

例えば、海外の組織体の担当者が、日本の担当者と慣れ親しんだ場合、日本の担当者が突然替わることで、仕事がやりにくくなるそうです。それは、国内の業務についても同じです。むしろ、取引が癒着化しないように、定期的に異動する場合もあります。

しかし海外では、担当する期間が日本より長いのが普通です。 

<ジェネラリストを重んじる日本の組織> 
定期的人事異動の重要な理由は、企業内の仕事を幅広く知ってもらうためです。理想を言えば、どこに配属になっても困らないような。つまり、人材養成の目標は、スぺシャリストでなく、ジェネラリストを育成することにあったのです。

ただし、人数の多い大企業でこのような人事異動をするのは、手間ひまのかかる大作業です。ですから、管理職コースのような長期的人材養成を担う人たちほど、異動が多くなります。つまり異動がない人の方が軽んじられているのです。 

<スペシャリストを志向する人たちもいる> 
しかし、働く人は皆、重んじられた異動を歓迎するかというと、そうとも限りません。ある自治体の女性課長候補は、福祉の仕事がしたくてそのようなところに配属になっていましたが、福祉でない部署の課長に昇進が決まったとき、それを断って退職し、民間のホームに転職しました。

また、図書館員として活躍していた女性は、有能なため大学のほかの部署へ異動になりました。しかし、それを不服とした彼女は、大学院に通い図書館学の修士号を取り、別の大学の図書館に就職しました。これはつまり、日本的人事異動が歓迎されるとは限らないということを示しています。 


企業成長のための人的資源熟考 


[プロフィール] 
佐野 陽子(さの・ようこ) 
慶應義塾大学名誉教授。1972年慶應義塾大学商学部教授。87年から2年間、日本労務学会代表理事。89年から2年間、慶應義塾大学商学部長・大学院商学研究科委員長。96年東京国際大学商学部教授。2001年から4年間、嘉悦大学学長・経営経済学部教授。主な著書:『はじめての人的資源マネジメント』『企業内労働市場』(ともに有斐閣)。 


[記事提供] 

(運営:株式会社アックスコンサルティング)