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通報を受けた労働基準監督署が行う『監督指導』とは?

24.06.11
ビジネス【労働法】
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全国に321署ある労働基準監督署(労基署)は、労働法に関連する各種届出の受付や労災保険の給付、そして、事業者への監督指導などを行う厚生労働省の第一線機関です。
監督指導とは、労働基準監督官が事業場に立ち入り、機械・設備や帳簿などの検査や労働条件について確認を行い、その結果、労働法に違反している事業者に対して、是正を求める行政指導のことを指します。
監督指導は事業所で働く労働者からの申告によって行われることも多く、事業者は原則として指導を拒否することができません。
事業者は監督指導の流れや、近年の実施状況などを把握しておきましょう。
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監督指導の実施件数を把握しておく

各種労働法には、労働条件や安全衛生についての基準が定められており、基準を満たしていない場合は、労働法違反となります。
たとえば、労働基準法では1日8時間、週40時間という法定労働時間が決められており、労使間で36協定を締結していない限り、この時間を超えて従業員を働かせてはいけません。
また、最低賃金法では、従業員に支払う賃金の最低限度額が定められており、これを下回る額を設定できないことになっています。

もし、事業者が労働法違反を行なっていた場合、労基署は従業員からの通報(申告)などに基づき、監督指導を行います。
2022年度は、従業員の長時間労働が疑われる3万3,218事業場のうち、その42.6%に当たる1万4,147事業場で違法な時間外労働が確認されたため、労基署による指導が行われました。
また、同年の賃金不払いについては、2万531件の不払い事案があり、このうち95%以上にあたる1万9,708件が労基署の監督指導によって企業が賃金を支払い、解決されました。

監督指導は法令違反を是正し、事業者に労働法を遵守させるためのもので、従業員が労基署に通報した事業場以外にも、労基署が計画に沿って選定した事業場や、労災事故が発生した事業場などに対して行われます。

対象となった事業場は、まず労働基準監督官による立入り調査が行われ、事情聴取や、帳簿および設備の検査などによって、本当に労働法違反があったのかどうかが調べられます。
労働基準監督官とは、事業場の調査に際してさまざまな権限を持つ厚生労働省の専門職員のことで、予告なく事業場へ立ち入り、自由に帳簿を確認したり、従業員に話を聞いたりすることができます。

労働基準監督官による立入り調査の流れ

労働基準監督官による立入り調査は、証拠隠滅の可能性などがあるため、原則として予告せずに抜き打ちで実施され、事業主は労働基準監督官による立入りを拒否することができません。
もし、立入りを拒んだり、妨害したりした場合は、労働基準法第120条に基づき、30万円以下の罰金に処される可能性があります。
妨害には事情聴取で嘘をついたり、書類の提出を拒んだりする行為なども含まれるので、注意してください。

立入り調査の結果、労働法違反が認められた場合には、労基署によって是正を図るよう指導が行われます。
指導には違反した内容の重大性に応じて、是正勧告書を交付する『是正勧告』、指導票を交付する『改善指導』、使用停止等命令書を交付する『使用停止命令』のいずれかが行われます。

事業者は交付された書類に基づき、期日までに改善し、労基署に報告する義務があります。
改善が認められなかったり、報告を怠ったりした場合には、再度立入り調査を受ける可能性もあります。
また、繰り返し指導を受けても是正しなかったり、違反行為が継続して行われていたりするなど、特に悪質なケースの場合には検察庁への送検や、企業名の公表などの措置が取られることもあります。

こうした監督指導を受けないためには、労働法に違反しないことはもちろんですが、事業主はリスクを把握したうえで、労働環境を整備することが大切です。
近年は働き方改革の影響で、違法な時間外労働に対しては、特に調査が厳しくなっているといわれています。
事業主は、賃金不払残業(サービス残業)や、従業員の健康を害するような過重労働をさせないように、最大限注意を払わなければいけません。

2024年7月には、厚生労働省の『過労死等の防止のための対策に関する大綱』が見直され、労働時間の数値目標や、年次有給休暇取得の数値目標がより厳しく定められる予定となっています。
監督指導もこれまで以上に厳格化する可能性があるため、事業者は日頃から適切な労務管理を心がけるようにしましょう。


※本記事の記載内容は、2024年6月現在の法令・情報等に基づいています。