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建設業界では、なぜ『談合』が行われてしまうのか?

23.10.03
業種別【建設業】
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建設業界における談合とは、国や地方自治体などの公共工事に関連する競争入札において、業者同士が前もって話し合いを行い、落札業者や落札価格を決めておくことを指します。
これは、談合であらかじめ協定を結んでおけば、持ち回りによる落札や、相場よりも高い金額での落札が可能になるからです。
しかし、談合は独占禁止法に基づく不当な取引制限の違反に該当するため、禁じられています。談合が発覚した場合、独占禁止法違反として刑事罰を受ける可能性があります。
建設業界で特に談合が多い理由や、談合を行った際のペナルティなどを説明します。
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談合を招く競争入札の仕組みと発注方法

税金を財源とする公共工事は、税金を無駄に使わないためにも最安値で行う必要があり、その工事の多くは競争入札によって受注業者が決められます。
競争入札に参加した業者のなかで、最も低い価格を入札した業者が工事を請け負うことになります。
しかし、談合によって業者同士が事前に入札価格を取り決めていると、相場よりも高い金額で落札されてしまいます。
つまり、本来は最安値で落札されるはずの公共工事が高い価格で落札されてしまい、税金の無駄遣いにつながります。

また、談合によって工事を業者間の持ち回りで受注しあうようになると、入札で競う必要がなくなるため、適正な工事の履行や技術力の向上などが阻害されてしまう恐れもあります。

税金が無駄に使われ、建設業界の健全な発展にも悪影響を与えることから、談合は法律によって厳しく禁じられています。
しかし、それでも建設業界では度々、談合事件が発生します。
ここ最近でも、リニア中央新幹線の建設を巡る大手ゼネコンの談合事件が話題になりました。

なぜ、建設業界では談合が起きやすいのでしょうか。
その理由の一つは、競争入札の仕組みにあります。

公共工事の競争入札には、入札の参加者を広く一般から募る『一般競争入札』と、発注側が一定の基準を満たしている業者のみを参加させる『指名競争入札』があります。
どちらも入札した業者のなかから、発注側に有利な条件を提示した業者が選ばれることには変わりありません。
ただし、指名競争入札の場合は、事前に参加する業者がすべて公表されていたため、業者同士が結託しやすいといった問題がありました。

また、公的な建設工事の場合、「施工」がはじまるまでに、「企画」「調査」「設計」などを行う必要がある場合もあります。
これら事前作業は本来、発注側が行う必要がありますが、工事の規模から完遂するのが困難になり、民間企業に頼らざるを得ません。
その結果、入札前に民間企業がプロジェクトにかかわり行なった作業費用を、談合による不正入札後に精算するといったケースが起きやすいといえます。
このようなケースでは、発注者側である公務員が談合に関与していることが多いのも事実です。
公務員が不公平な状態で受注業者を決めたり、予定価格を漏洩したりすることを『官製談合』 と呼びます。

競争入札には、受注者と業者以外にもかかわる人は多くいます。
しかし、さまざまな立場の思惑以外にも、談合が行われる理由としては「そもそも受注できる仕事が少ない」「安定して仕事を請け負う必要がある」など、業界の構造的な問題にも一因があるといわれています。

談合が発覚した場合に受けるペナルティ

談合は公正な競争が妨げられ、税金の無駄遣いにもつながるため、独占禁止法によって禁止されています。
独占禁止法は公正な競争を阻害する可能性がある行為を禁止する法律で、もし違反すると、公正取引委員会から違反行為を排除するための排除措置命令や、課徴金納付命令が出される可能性があり、悪質な場合には刑事告発が行われることもあります。

さらに、刑法第96条の6第2項にも『談合罪』として規定されており、3年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。
ただし、談合罪で立件されることは少なく、一般的には独占禁止法に基づく不当な取引制限の罪で立件されることになります。

また、公正取引委員会では談合を防止するために『課徴金減免制度』を設けています。
課徴金減免制度は、談合を行った業者が違反内容を公正取引委員会に自主的に報告した場合に、本来は科せられるはずの課徴金が減免される制度のことです。
課徴金減免制度は、談合を持ちかけた業者にも適用されるため、談合を持ちかけた業者が違反を報告したことにより、談合の誘いに乗った側だけが処罰を受けることになる可能性もあります。

ほかにも、官製談合を防ぐために、発注側である国や地方自治体に対して対応を求める『入札談合等関与行為防止法』などで、談合は厳しく規制されています。
談合は必要悪という論調もありますが、違法行為であり、発覚するとさまざまなペナルティを受けることになります。
談合を行わないことはもちろん、自社の取引が談合にあたらないかをよく確認することが大切です。


※本記事の記載内容は、2023年10月現在の法令・情報等に基づいています。