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節税につながる『貸倒引当金』を経費計上するには

23.09.12
ビジネス【税務・会計】
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取引先が倒産してしまい、売掛金や貸付金などの債権が回収できないことを『貸倒れ』といいます。
取引先の倒産は極力避けたいものですが、自社ではどうすることもできません。
しかし、万が一に備え、貸倒れを避けるためにあらかじめ回収できなさそうな金額を見積もり、『貸倒引当金』として経費計上をしておくことが可能です。
法人や個人事業主にとって節税効果もある、貸倒引当金を計上する際の方法や注意点などを解説します。
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将来的に回収できそうな債権とは?

貸倒引当金とは、貸倒れに備えて損失額を予想し、損金として経費計上する引当金のことです。
引当金とは、将来的に発生する費用や損失に備えて予算に繰り入れておく見積金のことで、この貸倒引当金のほかにも、従業員に支払う退職金に備えた『退職給付引当金』や、修繕に備えて積み立てる『修繕引当金』などがあります。

貸倒引当金は、将来的に回収できなさそうな取引先の債権を備えとして計上するための引当金であり、実際に損失が発生していなくても経費として計上できます。
そのため支出を伴わずに、課税される所得を減らすことが可能です。
ただし、どんな債権でも貸倒引当金として計上できるわけではありません。

計上できる債権は、回収できる可能性が低く、事業と関係のあるものに限られます。
たとえば、回収できない見込みの売掛金や貸付金、受取手形、未収金などは対象になりますが、前渡金や保証金、敷金、手付金などは対象外になります。

貸倒引当金は事業年度の末日に、回収できない債権の見積を出して、その金額を損金として計上することになります。
貸倒引当金として計上する債権は、回収できる可能性のない取引先別で処理する『個別評価金銭債権(不良債権)』と『一括評価金銭債権(不良債権以外)』に分け、それぞれの債権に応じた計算方法で金額を算出します。

更生手続開始の申立てや更生計画認可の決定が行われているなど、回収が極めてむずかしい債権は『個別評価』、それ以外の債権は『一括評価』で貸倒引当金を算出します。
貸倒引当金の繰入限度額は個別評価と一括評価でそれぞれ異なるため、前もって確認しておくようにしましょう。

貸倒引当金として経費計上する際の注意点

回収できる可能性がある『一括評価』で貸倒引当金を計上した場合は、損失が発生しなかった分に関して、翌年度の収益に計上する必要があります。これを『戻し入れ』といい、会計上は『貸倒引当金戻入』という勘定科目で仕訳を行います。

貸倒引当金戻入の会計処理には、2種類の方法があります。
まず、前期末に計上された貸倒引当金を全額消し込む処理をし、当期末において計上されるべき貸倒引当金の正しい金額を改めて繰り入れる『洗替法』です。
次に、前期に計上した貸倒引当金から当期末に発生した実際の貸倒引当金の差額を求め、足りない分を戻し入れる『差額補充法』です。

貸倒引当金は事業年度ごとに計算するため、どちらの会計処理を行ったとしても、節税効果を得られるのは最初に貸倒引当金を計上した1年目だけになります。
2年目からの節税効果はほとんどありません。
また、貸倒れによる損失が発生せずに、戻し入れの金額が当期の繰り入れた金額よりも増えてしまうと、当期の所得を上げてしまうことになるので、注意が必要です。

なお、貸倒引当金が適用できるのは、法人であれば資本金が1億円以下の中小法人(大企業の完全子会社除く)や一部の金融機関などに限られます。
個人事業主は青色申告でも白色申告でも、貸倒引当金を計上することができます。
ただし、青色申告の場合は一括評価で貸倒引当金として計上できますが、白色申告の場合は個別評価による貸倒引当金しか計上することができません。

法人にも個人事業主にも節税メリットのある貸倒引当金ですが、計上するための計算方法や会計処理は複雑です。
貸倒引当金を経費計上をするのであれば、まず税理士に相談することをおすすめします。


※本記事の記載内容は、2023年9月現在の法令・情報等に基づいています。