税理士法人ベストフレンド

今後、対象拡大の見込みか。『求人の不受理』について

23.02.07
ビジネス【人的資源】
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政府は労働力の確保や維持を図る一つの手段として、働き続ける女性を増やすとともに、男性の育児休暇制度の取得を推進しています。
2022年4月、10月に改正育児・介護休業法が施行されたことに伴い、変更点を追記した職業安定法施行令も施行され、妊娠・出産や男性の育児休業の申し出を理由に労働者を不当に扱った企業の求人について、職業紹介事業者やハローワーク、特定地方公共団体が求人の受け取りを拒めるようになりました。
そこで今回は、一定の労働関係法令違反のある求人者からの求人の申し込みなどを受理しない『求人不受理』について説明します。
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例外として認められる求人不受理

昨今、コロナ禍で鈍化した採用市場は、少しずつですが回復傾向にあります。
それに伴い、企業の求人活動における法令遵守がこれまで以上に重視されるようになってきました。

では、求人活動において、どのような法令が関わってくるのでしょうか。
職業安定法第5条の六では、「公共職業安定所、特定地方公共団体及び職業紹介事業者は、求人の申し込みは全て受理しなければならない」と定められています。

原則として、職業紹介事業者やハローワークなどは、申し込みのあったすべての求人を取り扱うことが求められますが、例外として下記の求人申し込みについて受理を拒むことができるとされています。
これを『求人不受理』といいます。

(1)内容が法令に違反する求人
(2)賃金、労働時間などの労働条件が通常の労働条件と比べて著しく不適当な求人
(3)一定の労働関係法令違反の求人者による求人
(4)求人者が労働条件を明示しない求人
(5)暴力団員や関連する法人などによる求人
(6)職業紹介事業者などからの自己申告の求めに応じなかった求人者による求人

公共職業安定所、特定地方公共団体および職業紹介事業者は、求人者である企業が(3)や(5)に当てはまるかどうかは求人申し込みの段階で判断がつかないため、求人を申し込む企業等(求人者)に自己申告を求めることができます。
その際、求人者が虚偽の自己申告を行った場合には都道府県労働局が勧告・公表などを行うことが可能です。

また、(1)の法令に違反する求人については、職業紹介事業者やハローワーク、特定地方公共団体での求人不受理の対象は、育児・介護休業法に違反した企業の求人も含まれます。
仕事と家庭を両立し、労働の継続を実現することを目的とした改正育児・介護休業法が2022年4月より段階的に施行され、同年10月より産後パパ育休、育児休業の分割取得も可能になりました。
これに伴い、職業安定法施行令に追記された職業紹介事業者やハローワーク、特定地方公共団体での求人不受理の対象として下記についても追加されることになりました。

●本人または配偶者の妊娠・出産などを申し出たことを理由とした不利益取り扱いの禁止
●出生児育児休業の申し出に関する事業主の雇用管理上の義務
●出生児育児休業の申し出をしたことなどを理由とした不利益取り扱いの禁止

たとえば、妊娠したことを理由に雇用形態など労働契約内容の変更の強要を行ったり、産後パパ育休の取得を拒んだり、取得したことで昇進・昇格の人事考課で労働者にとって不利益な評価を行うといった行為が該当します。

上記の規定に違反しているにも関わらず行政からの是正勧告に従わなかった場合、企業名を公表されるほか、当該企業は職業紹介事業者やハローワークで求人を受理してもらえなくなります。


求人の不受理となる法令違反とは

では、求人の不受理となるような法令違反とは、どのようなものがあるのでしょうか。
改めて確認しておきたいのは、前述した求人不受理の該当例のうち、(3)の『一定の労働関係法令違反の求人者による求人』についてです。
ここでいう『一定の労働関係法令』には、育児・介護休業法をはじめ、労働基準法、最低賃金法、労働組合法、労働安全衛生法、過労死等防止対策推進法、職業安定法など多数あります。

厚生労働省は『求人不受理の対象となる場合』として、次のような例を出して説明しています。
たとえば、労働基準法および最低賃金法の規定のうち、賃金や労働時間等に関する対象条項の違反に対しては
●過去1年間に2回以上同一条項の違反について是正指導を受けた場合
(不受理期間)法違反の是正後6カ月経過するまで
●対象条項違反により送検され、企業名が公表された場合
(不受理期間)送検された日から1年経過するまで
などが求人不受理の対象となります。

職業安定法、男女雇用機会均等法および育児・介護休業法違反については、法違反の是正を求める勧告に従わず、企業名が公表された場合が求人不受理の対象となります。
こちらの不受理期間も、法違反の経過後6カ月を経過するまでとなります。

これらの措置は一見厳しいものに見えますが、押さえておきたいのは、求人の不受理という措置の目的は違反企業に罰を与えることではなく、違反状態を是正し、労働力の需給における適正かつ円滑な運営を実現することにある点です。労働者にとって能力にあった就職、企業にとって必要な労働力が適切に充足できる。このことが最優先の目的となります。

今後、労働関係法諸法令の改正により新たな規制が追加されると、求人の不受理の対象も、それらに対応して増えていくことが考えられます。
よい人材を獲得するためにも、求人の不受理の概要を理解し、正しい求人を行っていきましょう。


※本記事の記載内容は、2023年2月現在の法令・情報等に基づいています。