税理士法人ベストフレンド

『出戻り社員』を再雇用するメリットと注意点

21.11.09
ビジネス【人的資源】
dummy
コロナ禍において、製造業を中心に景気回復の兆しが見えると同時に、人手不足が再び顕在化しています。
特に中小企業の多くは人材確保が難しくなっている状況です。
そこで注目を集めているのが、一度退職した元社員を『出戻り社員』として再雇用する取り組みです。
現在、日立製作所や三井物産など大手企業を中心に、出戻り社員の採用を積極的に行う企業が増えており、人手不足解消の打開策となりつつあります。
出戻り社員を再雇用する方法と、再雇用のメリットやデメリットを紹介します。
dummy
出戻り社員が重宝される理由

独立や転職、育児や介護など、社員が会社を退職する理由はさまざまです。
そんななか、一度会社を離れた社員を再雇用する動きが加速しています。

元の会社に復帰した、いわゆる出戻り社員は、会社側が性格や能力を熟知しており、社員側も業務内容や社風、経営理念を理解しているので、ミスマッチが起こりづらいと考えられます。

また、新入社員のように会社のルールを教える必要がなく、復帰して早々に、以前と同様の仕事を任せることができます。
一度離れた会社に戻るということは、会社の良さを再認識していたり、社内の事情や人間関係を理解しているため、働きやすさを感じていたりすると思われます。

さらに、職種に関する理解があり、即戦力になってくれる点は大きなメリットといえるでしょう。
新規採用の場合と違って教育の必要がないため研修費や教育コストの削減にもつながり、時間とコストの両面から考えて、出戻り社員は“優良物件”といえる存在です。

また、出戻り社員にはこれまで以上の活躍も期待できます。
特に、独立開業した結果、戻ってきた社員や、他企業に転職して戻ってきた社員は退職後に大きな経験を積んでおり、今まで以上のスキルや知識を有している可能性があります。
キャリアアップして戻ってきた社員は、後輩社員のよいお手本にもなるでしょう。
さらに、退職後に培った人脈で、新しい仕事や人材を会社にもたらしてくれるかもしれません。


再雇用の注意点と制度化のすすめ

一方、元社員を再雇用する際に注意したいのが、待遇面や役職の調整です。

再雇用した社員から、かつて所属していたときと同じ待遇・役職を求められることがあり、条件面で折り合いがつかない可能性もあります。
また、同待遇で迎え入れた場合、ずっと勤務している社員とのバランスを取ることが難しく、社内から不平不満が出ることも考えられます。
業務の面で歓迎されたとしても、必ずしも全社員に喜んで迎え入れられるとは限りません。
特に、その社員が退職した後に入社した社員は、関係性ができていないため、出戻り社員の態度が不遜で威張った感じに映ってしまい、人間関係が悪化する恐れもあります。

短期間だけ再雇用される場合は別として、退職してから数年のブランクがある場合には、社内の制度や業務が変化しており、新しいやり方に対応できない可能性があります。

こうした諸問題を解決するには、中途採用や定年後の再雇用制度とは別に、出戻り社員に対する再雇用制度を整備することです。
たとえば中小企業では、社員を再雇用する制度が整備されていないことが多く、よく検討せずに“なんとなく”復帰させていることが少なくありません。
すると、再雇用はあくまで元社員との個別対応で決定したことであるはずが、まわりの既存社員から「誰でも再雇用してもらえる」と思われてしまう可能性があります。
そうならないためにも、再雇用の条件や待遇面を明確にした『再雇用制度』の構築および整備は必須といえるでしょう。

再雇用制度を整備する際には、復帰にあたって必要なスキルや資格など、再雇用の条件を設定します。
既存社員との兼ね合いも考えながら、再雇用後の給与や肩書など待遇も明文化します。
待遇は、退職するまでの社歴や実績、退職理由や、退職後に手掛けた仕事などを判断材料にするといいでしょう。
そして、再雇用制度の内容が決まったら、社員全員に周知することが重要です。

新規の社員は実際に働いてもらうまで、活躍してくれる人材かどうかはわかりません。
再雇用はそのような不安要素がなく、メリットの多い採用方法です。
出戻り社員を自社の人材確保に活かすため、再雇用制度の整備を考えてみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2021年11月現在の法令・情報等に基づいています。