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知っておこう、子どもへの『しつけ』と『体罰』のボーダーライン

21.10.26
ビジネス【法律豆知識】
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2020年4月に児童虐待防止法と児童福祉法が施行され、親権者等による子どもへの体罰が禁止されました。
国際的には58もの国が子どもへの体罰を法律で禁止しており、日本もこれに加わっています。
しかし、いまだに『しつけ』のためには子どもに手をあげてもよいとする風潮はあり、行き過ぎた体罰が虐待を引き起こすケースも少なくありません。
今回は、大人が正しい判断をするために必要なしつけと体罰の境界線について探っていきます。
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しつけのつもりでも体罰に該当するケース

厚生労働省の集計によると、2019年度に児童相談所が児童虐待として対応した件数は、前年度比21.2%増の19万3,780件になることが判明しました。
心理的虐待や身体的虐待、ネグレクトなどを含む児童への虐待は増加傾向にあり、これらの問題への対応を強化するため、2019年には児童虐待防止法と児童福祉法が改正され、2020年4月から一部をのぞいて施行されました。

また、法律で子どもへの体罰が禁止されると同時に、民法822条で定められている『親権を行う者は監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる』という規定も見直されることになりました。

民法822条は、親が子どもを矯正する目的で実力を行使する『懲戒権』の根拠になるものですが、『教育に必要な範囲』と『懲戒の方法』については明言されていません。

教育に必要な範囲も懲戒の方法も、各時代の社会常識によって変化するものです。
2004年に出版された民法の注釈書である『新版注釈民法(25)改訂版』(有斐閣)では、『目的を達するについて必要かつ相当な範囲を超えてはならない』としてはいますが、『しかる・なぐる・ひねる・しばる・押入に入れる・蔵に入れる・禁食せしめる』などの体罰を容認している記述があります。
しかし、現在の社会常識に照らし合わせれば、これらが児童虐待に該当する可能性は限りなく高いといえます。

厚生労働省では、体罰禁止の考えを普及させ、体罰によらない子育てを推進していくことを目的に、『体罰等によらない子育ての推進に関する検討会』において、有識者による検討を進めてきました。

検討会の発表したパンフレットでは、『たとえしつけのためだと親が思っても、身体に、何らかの苦痛を引き起こし、又は不快感を意図的にもたらす行為(罰)である場合は、どんなに軽いものであっても体罰に該当する』としています。

また、下記の例は全て体罰に該当するとしています。

●言葉で3回注意したけど言うことを聞かないので、頬を叩いた
●大切なものにいたずらをしたので、長時間正座をさせた
●友達を殴ってケガをさせたので、同じように子どもを殴った
●他人のものを取ったので、お尻を叩いた
●宿題をしなかったので、夕ご飯を与えなかった
●掃除をしないので、雑巾を顔に押しつけた

身体的な痛みを伴う体罰だけではなく、子どもの心を傷つけるような行為や、監護を放棄する、いわゆるネグレクトなどの行為も虐待になります
たとえば、「生まれてこなければよかった」や「お兄ちゃんは頑張っているのにお前は本当にダメだ」など、存在を否定したり、兄弟姉妹を引き合いに出してけなしたりする暴言は子どもの心を傷つける行為です。

冗談であっても決して口にするべきではありません。


体罰の悪影響と、なくすための工夫

しつけと称して体罰を行ったり、暴言をはいたりする親はまだまだおり、同時にそのような行為に対して「これくらいであれば問題ない」と考えている人も少なくありません。

しつけと体罰の境界線については、それぞれの家庭ごとの考え方があり、法律で規定されたからといってその考え方が容易に変わるものでもないでしょう。
それでも、しつけとは子どもの人格や才能を伸ばすためのものであるべきです。
身体的な痛みを伴う体罰や心を傷つける暴言は、子どもの人格や才能を伸ばすためのものではなく、恐怖心によって行動を制限しただけなのかもしれません。

検討会はガイドラインにおいて「全ての子どもは、健やかに成長・発達することが権利として保障されており、体罰は子どもの権利を侵害します」と明言しています。
また、これまでの研究から、体罰は子どもの成長に悪影響を及ぼすことが明らかになっているとも述べられています。
親から体罰を受けていた子どもは、全く受けていなかった子どもに比べると、『落ち着いて話を聞けない』『約束を守れない』『我慢ができない』などといった行動問題のリスクが高まるとしています。

親には、子どもの成長のために教育を施す権利と義務がありますが、それは子どもに苦痛を強いるものであったり、ましてや悪影響を及ぼすものであってはならないのです。

子育てはとても大変で、親からすればストレスがたまるものです。
言うことを聞かない子どもに対し、つい手が出てしまいそうなときは、“できないこと”ではなく“できること”に目を向けてみたり、子どものやる気に働きかけてみたりといった工夫をしてみましょう。

そして、どうしても子どもへの苛立ちが抑えられないときは、親自身が自分の心の内側に目を向けてみることも重要です。
仕事や家事で抱える悩みやストレス、孤独感などがある場合は、まずは自分のケアをすることで子どもへの対応も変わるかもしれません。

体罰や暴言など、しつけと称して行き過ぎているなと感じたら、自治体の子育て相談窓口や保健センターなどへ相談したり、家事代行やベビーシッターを活用したりするなど、保護者自身の負担を軽減する対策を行いましょう。

明るく安心できる家庭を築くためには、体罰によらない子育てを行っていくことが何よりも大切です。


※本記事の記載内容は、2021年10月現在の法令・情報等に基づいています。