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企業の不祥事を防止する『内部通報制度』を導入するには

21.05.25
ビジネス【企業法務】
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不正な売上の計上や横領行為など、企業内ではときに予期せぬ不祥事が発生します。
このような不祥事を未然に防ぐために、企業によっては『内部通報制度』を導入しているところもあります。
内部通報制度とは、上司を経由する通常の報告ルートとは異なる報告ルートを設ける制度のことで、特に従業員の数が多い大企業においては、必須の制度といわれています。
企業の健全性を保つためにも大切な、内部通報制度の導入方法を紹介します。
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内部通報制度導入のメリット

企業の不祥事は、ハラスメント行為や架空の経費計上など内部的なものから、品質偽造や談合、贈収賄などの対外的なものまで、さまざまです。
不祥事を起こす人も、経営者や従業員個人であったり、または企業全体であったりとさまざまです。
もし特に規模の大きい不祥事の場合は、刑事罰が科されたり、メディアなどで取り上げられ、株価の急落や顧客離れなど経営に深刻なダメージを受けたりすることも多くあります。

企業の不祥事は国民の安全や安心を損なう恐れがあることから、2020年6月に『公益通報者保護法』が改正され、従業員数が301人以上の企業に対して、内部通報制度の導入が義務付けられました
なお、従業員数が300人以下の中小企業に関しては、努力義務となっています。

内部通報制度は、企業の不祥事に関して、社内相談窓口や法律事務所などの社外相談窓口を設置し、従業員からの通報を受け付け、調査・対応・是正を行う体制のことをいいます。

これは、企業の不祥事の早期発見を実現するものであり、ぜひとも導入しておきたい制度です。
早期に対処できれば被害も最小限で済みますし、対処するよりも先に外部に問題の情報が漏れてしまい、信頼を損ねてしまうようなこともなくなります。
もし、内部通報制度がなければ、会社の不祥事を発見した従業員は、通報先として行政機関や報道機関を選んでしまうかもしれません。
そうすると外部機関の介入を受けながら解決することになってしまい、負担が増えてしまう可能性があるのです。

また、内部通報制度は不祥事の予防機能も果たします。
ハラスメントや横領を行えば、自分が内部通報制度によって通報されてしまうという意識が芽生えるため、従業員が不祥事を起こしづらくなるという効果が期待できます。

このように、不祥事の予防や、内部で迅速に動いて解決するという観点からも、内部通報制度の導入や整備は企業にとっての急務といえるでしょう。


内部通報制度を支える公益通報者保護法

実際に内部通報制度を導入する際には、慎重に整備を進めていく必要があります。

公益通報者保護法では、通報を受けた事実に対処できる行政機関や、報道機関、消費者団体、労働組合なども通報先として認めています。
つまり、公益通報者保護法の通報先の一つとして、内部通報制度があり、通報を受けた企業側は速やかに対処する必要があるのです。

公益通報者保護法では、通報の相談窓口や担当者を定めるように求めています。
たとえば、通報者が電話で担当者に通報する場合、その内容がほかの従業員に聞こえないような環境作りをしなければいけませんし、通報を対面で受ける際にも、担当者と相談していることを、ほかの従業員に知られないような配慮が必要になります。

また、会社の経営陣から独立した通報窓口を設置することも重要です。
大きな不正は経営陣や経営幹部が関与しているケースもあります。
そのような不正も通報できるようにするためには、通報窓口が経営陣から独立している必要があります。
社内の通報ルートのほか、たとえば弁護士や社外監査役などへの通報ルートも整備するとよいでしょう。

通報者は公益通報者保護法によって守られており、窓口担当者は通報にかかわる秘密保持や個人情報の保護を徹底して行う必要があります。
また、通報があったこと自体や、通報に基づいた調査についても秘密にしなければなりません。
それは、ある不祥事に対して、調査対象者に通報があった旨が伝わってしまうと、そこから通報者が特定されてしまう危険性があるためです。

公益通報者保護法では、通報による不利益取扱いも禁止されています。
会社や特定の従業員の不祥事を通報したことを理由に、その通報者を解雇したり、降格や減給などを行ったりなど、不利益を被るようなことがないよう配慮しなければなりません。

もし、少しでも不利益をこうむる可能性があると、従業員が通報を控えてしまうことも考えられます。
内部通報制度を導入する際には、通報者の匿名性の確保と併せて、不利益な取扱いの禁止を徹底することを運用規程にしっかりと明記しておきましょう。

そして、通報を受けた場合は、迅速にその不祥事に対応し、通報者に調査状況を報告する必要があります。
もし、通報を受けたのに対応しなかったり、調査が遅かったりすると、通報者が行政機関や報道機関など、ほかの通報先に通報してしまいます。
そうなると、“不祥事を把握していたにもかかわらず、対処しなかった企業”というレッテルが貼られ、事態はより悪化していくのです。
通報を受けた後は、スピーディーに対処することが大切です。

社内の不祥事や不正を未然に防ぎ、万が一、不祥事が発覚した際にも迅速な対応をとれるようにするためにも、内部通報制度を導入し、クリアな経営を目指しましょう。


※本記事の記載内容は、2021年5月現在の法令・情報等に基づいています。