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債権回収ができないうちに取引先が倒産! 債権はどうなる?

20.08.25
ビジネス【企業法務】
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新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、『倒産』状態になっている企業が増えています。
このような状況では、自社の取引先が突然倒産してしまうという事態も十分にあり得ます。
では、債権回収ができないまま取引先が倒産してしまったら、持っていた債権はどうなってしまうのでしょうか。
担保権(不動産に設定された抵当権等)がある債権の場合と、ない債権の場合に分けて考えてみましょう。
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担保権がある債権の場合

担保権がある債権は、倒産手続きのなかでどのように扱われるのでしょうか。

破産、民事再生、特別清算の手続きにおいては、担保権は『別除権』として分類されています。
これはつまり、それぞれの手続きの進行とは関係なく、手続き外での権利行使が可能であることを意味します。
したがって、債務者の不動産に抵当権を設定している場合、債務者が破産手続きを開始していても、債権者は、その手続きとは関係なく、不動産競売等を申立て、債権回収をすることが可能になります。

なお、会社更生手続きの場合は、担保権は『更生担保権』として扱われ、会社更生手続きのなかでしか権利行使ができなくなります
前述の別除権のように、手続き外での権利行使はできないため、ほかの法的手続きと比べると、その権利が制限を受けることになってしまいます。

また、担保があるからといって安心できない場合もあります。
たとえば、取引先の経営が悪化しているとの噂を聞きつけ、慌てて債務者と交渉して、債務者の財産に担保権を設定したような場合です。
担保権設定後、あまり間を置かずに債務者が倒産手続きを開始すると、当該担保設定行為が偏頗行為(へんぱこうい:債権者間の平等を害する行為のこと)として、否認権が行使され、抵当権設定行為自体がなかったことになってしまいます。

取引先の経営が悪化したと聞いたら、いてもたってもいられず、債権回収のために動くのは自然なことですが、法的手続きの際には否認権という制度に注意が必要です。


担保権のない債権の場合

倒産手続きに入った場合、『債権者平等の原則』が前提となります。
これはすべての債権者が平等になるというわけではなく、同一種類の債権が平等に扱われることを意味します。
担保権のある債権は手続き外で、債権回収が優先的に行われますので、倒産手続きのなかでは、共益債権、優先債権の順で弁済を受け、残りがあれば、一般債権として弁済を受けるイメージとなります。

そもそも倒産手続きは、100万円の債務があるけれども資産は50万円しかない、すなわち、弁済能力がなくなったという状況で行われるものですから、担保権のない一般債権が全額支払われるということはまずありません。
共益債権や優先債権を支払ってもなお余剰がある場合には、各債権者の債権額に応じて配当が行われることになりますが、配当自体がない場合もありますし、あったとしても数パーセントにとどまり、大半を回収できないことが多いのではないかと思われます。

小口の取引先の倒産であれば、債権回収ができなかったとしても大きな影響はないかもしれません。
しかし、経営を大きく左右しかねない取引先の動向には常に気を配り、確実な債権回収のために担保権を設定するなど、適切な対応をとることが肝要です。
債権回収に不安がある場合には、早めに対策を講じることをおすすめします。


※本記事の記載内容は、2020年8月現在の法令・情報等に基づいています。