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『みなし労働時間制』のメリットと違法にならないための注意点

20.07.28
ビジネス【労働法】
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『みなし労働時間制』とは、実際の労働時間にかかわらず、その日の労働時間はあらかじめ定めておいた(労使間で協定した)時間分を働いたものと“みなす”制度で、労働基準法では、『事業場外みなし労働時間制』と『裁量労働制』の要件に該当した場合に適用できます。

しかし、現実にはこのような理解で使われずに、1日または1カ月の残業時間を時間数に関係なく固定で残業代で支払う制度とか、残業代を基本給に含めて支払う方法を『みなし労働時間制』と誤解して使用されることがあります。

『みなし労働時間制』を誤って使用する場合に、会社側には、従業員を自由に働かせられるうえに、面倒くさい残業代の計算をしなくていいのではないかというメリットがありますが、一方で、一定時間を超えた分の残業代を支払わない『残業代未払い』の温床になるともいわれています。
そこで今回は、『みなし労働時間制』のメリットや、導入する際の注意点などを解説します。
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『みなし労働時間制』導入の際の注意点とは?

『みなし労働時間制』とは残業を含めた一定の時間を働いていると“みなす”もので、たとえば、1日の労働時間を8時間とみなす場合は、その従業員が10時間以上働いても、逆に4時間しか働かなくても、8時間分の給与を支払うことになります。
「みなす」とは、一度決めたら例外や反証は認められない仕組みなのです。
それにもかかわらず、労働契約を結ぶ際に『一定時間の残業代を含む』としている場合には、従業員に残業をしたとみなした時間分の給与を支払うわけですから、超過分は別途残業代は支払わなくてもいいと解釈している会社があります。

だからといって完全に残業代を払わないでいいことにはなりません。
上述の『事業場外みなし労働時間制』や『裁量労働制』に該当しない限り、実際の残業時間数に相当する残業代は支払わなくてはならないのです。
また、休日や深夜労働に関する規定が適用外になることはないので、深夜や休日の労働をさせた場合には深夜手当、休日手当を支払うことになります。

それにもかかわらず、『みなし労働時間制』を導入しているからといって一定時間を超えた分の残業代を支払わない会社も多く、残業代の未払いが社会問題となっています。
残業代の未払いは労働基準監督署の調査が入ったり、従業員から訴えられたりと、トラブルに発展します。
『みなし労働時間制』を導入していても、定められた残業代や手当を支払わないのは違法になるので注意しましょう。


『事業場外みなし労働時間制』と『裁量労働制』とは?

『みなし労働時間制』は、正確には『事業場外みなし労働時間制』と『裁量労働制』の要件を満たした場合に導入することができます。

『事業場外みなし労働時間制』とは外回りの営業職など、労働時間を正確に把握することがむずかしい仕事に対して採用されるもので、実際の労働時間ではなく、みなし労働時間で給与を算出することが許されています
ただし、外からでも定期的に報告をさせていたり、管理者が常に行動を把握していたりする場合には、労働時間の算出が可能とされ、『事業場外みなし労働時間制』を適用させることはできません。

一方、『裁量労働制』では、従業員が何時間働いても、労使間で締結した労働時間を働いたとみなすため、みなし時間が所定労働時間内であれば別途残業代を支払うことはありません
しかし、みなし時間が10時間であれば、実際には実働8時間であっても1日2時間分の残業代は支払わなければなりません。
加えて『裁量労働制』が認められるのは、企画業務型(会社の中核である部門で企画立案などを担当。なおかつ、労使委員会を設置し5分の4以上の多数決を決議)と専門業務型(管理者からの指示を受けずに業務を遂行できる研究者や新聞記者、デザイナーなど19の業務)に限られており、どんな仕事でも『裁量労働制』が適用できるわけではありません。

『みなし労働時間制』のメリットとしては、企業側は残業代の計算をしなくて済むこと、人件費の管理もしやすいことがあげられます。
また、従業員にとっても、残業時間が少なくても一定の残業代が受け取れるというメリットがあります。
従業員にとっては残業をしなければしないほど得なのですから、無駄な作業を減らそうと工夫し、限られた時間の中で仕事を終わらせようという意識も出てきます。
そうすることによって、生産性の向上につながり、能力の向上も期待できます。

基本的にはメリットのほうが多いイメージの『みなし労働時間制』ですが、あくまで業務の実態に則して採用する制度であって、残業代を支払わないために導入するものではありません。
導入する際には、自社が本当に『みなし労働時間制』を採用する必要があるのかどうかをよく考えてみましょう。


※本記事の記載内容は、2020年7月現在の法令・情報等に基づいています。