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贈与税・相続税が免除される『事業承継税制』活用のススメ

20.06.23
ビジネス【税務・会計】
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少子高齢化が進み、中小企業では後継者の不在が問題になっています。
望まぬ廃業が増えるなか、政府はこれを喫緊の課題とし、2009年度に『中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律』に基づき『事業承継税制』を制定しました。 
これは、事業を承継する際の贈与や相続において、取得した非上場の株式にかかる贈与税や相続税の納税を減免する制度のことです。
取り組みを強力に後押しするため、2018年度の税制改正では、さらに要件が緩和されました。 
今回は、この制度を利用するための条件や、手続きの方法についてご紹介します。
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事業承継税制とはどんな制度か?
 
業績のよい中小企業が廃業してしまうことは、国家にとっても大きな損失です。
事業の引継ぎを支援するために、これまでにもさまざまな支援策が打ち出されてきました。
事業承継税制は、そのうちの一つです。

概要を説明すると、先代の経営者から後継者に、事業承継を目的として資産を渡した場合、一定の要件のもと、相続税や贈与税の納税が猶予され、さらに先代経営者が死亡した場合には、その納税額が免除されます
2018年度の税制改正においては、2027年12月31日までの時限措置として、この『事業承継税制』の要件が緩和され、制限の撤廃や、猶予割合の引き上げなども行われた特例措置が設けられました。
さらに多くの中小企業がこの制度を利用できるようになっています。
何億円もの納税が免除されることもあり、これまで金銭的な問題で廃業を考えていた事業者にとっては朗報となりました。

具体的には、これまでの措置に加え、納税猶予の対象となる非上場株式を全体の3分の2までとする制限を撤廃。
すべての株式が制度の対象となりました。
さらに、これまでは対象となる株式のうち、相続税の納税が猶予されるのは80%の株式だったのに対し、改正後は猶予割合が100%に拡大しました。

つまり、新しい事業承継税制では、贈与税・相続税も一切なく、後継者に事業を譲ることができるのです。


満たすべき条件と手続きについて
 
上記のものはすべて事業承継税制の特例措置というくくりになっており、制度を利用するためには、満たすべき条件があります。

まず、一つめの条件は、非上場の会社で、中小企業基本法で規定された中小企業であること
中小企業に該当する条件は業種により異なり、たとえば小売業であれば、資本金が5,000万円以下の会社か、従業員の数が50人以下の会社が対象となります。
製造業であれば、資本金が3億円以下の会社か、従業員の数が300人以下の会社が対象です。
業種によって条件が異なるので、国税庁のホームページなどで確認しておきましょう。

また、後継者についてもいくつかの条件があります。
贈与税の猶予を受ける場合には、贈与の時において後継者が20歳以上で、すでに会社の代表権を有しており、役員の就任から3年以上経過していなければいけません。
また、後継者とその親族など特別な関係がある者で、50%を超える議決権数を保有している必要もあります。

相続税の猶予を受ける場合には、相続開始日の翌日から5カ月を経過する日において会社の代表権を有しており、さらに相続開始の時において、後継者とその親族など特別な関係がある者で50%を超える議決権数を保有していることなどが条件になります。

では、こうした条件を満たしたうえで、特例措置の制度を利用する場合には、どのような手続きがあるのでしょうか。

贈与税に関しては、後継者が先代の事業者から会社の一部、または全ての非上場の株式を2027年12月31日までの間に贈与された場合が対象
となります。
まず、自社の継承者や、その後の経営の見通しなどを記載した『特例承継計画』を作成します。
この特例承継計画は、税理士、商工会、商工会議所など、認定経営革新等支援機関の所見を記載のうえ、都道府県知事に提出します。
期限は2023年3月31日までです。

その後、贈与を受けた翌年の1月15日までに、『中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律』、いわゆる『円滑化法』の認定申請を行い、さらに、申告期限となるその年の3月15日までに、贈与税の申告書などの書類を税務署に提出。
同時に、贈与税と利子税の額に見合った担保を提出し、はじめて納税の猶予が認められます。

相続税に関しては、基本的な手続きの流れは贈与税と同じですが、申告期限は先代の経営者が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内となっており、注意が必要です。

このように、『事業承継税制』は、メリットも大きい反面、会社の代表者を退任したり、対象の株式を譲渡したりすると認定が取り消され、再計算した分の贈与税や相続税の支払いが生じるというリスクもあります。
自社の今後をしっかりと見据え、専門家とも相談のうえ、十分な計画を立てて制度を活用していきましょう。


※本記事の記載内容は、2020年6月現在の法令・情報等に基づいています。