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契約書・利用規約に『損害賠償条項』を記載するときのポイント

20.04.24
ビジネス【企業法務】
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取引先と契約書を交わす際、交渉の争点となりやすい条項の一つが損害賠償条項です。 
また、BtoCビジネスにおける個人のお客様に向けた利用規約においては、事業者側としてはリスクヘッジのために免責規定を定めておきたいところです。 
今回は、事業者間取引における契約書や個人消費者との利用規約において、損害賠償条項を検討する上でのポイントについて説明します。
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損害賠償責任が生じる場面

法律上、損害賠償責任が生じる場面は、大きく分けて、(1)債務不履行があったとき(2)不法行為があったときの二つです。
なお、これらとは別途、契約不適合責任(瑕疵(かし)担保責任)がありますが、これは2020年4月1日に施行された改正民法では、債務不履行責任の一種と整理されました。
また、製造物責任というものもありますが、これは不法行為の特則と整理されています。
よって、まずは、『債務不履行』と『不法行為』の二つがあるという整理をしておきましょう。


損害賠償責任の要件と効果

法律は、要件と効果で構成されています。
ある要件(条件)を満たすと、ある一定の法律効果が発生します。

債務不履行に基づく損害賠償責任の要件は以下の四つです。
(1)債務不履行
(2)債務者に帰責事由があること(帰責事由≒故意または過失)
(3)損害の発生
(4)(1)と(3)の因果関係

また、不法行為に基づく損害賠償責任の要件は以下の四つです。
(1)故意または過失
(2)権利または法律上保護される利益の侵害
(3)損害の発生とその額
(4)(1)と(2)および(2)と(3)の因果関係

これらの要件をそれぞれ満たすと、効果として、その損害を賠償する義務が発生します。
損害賠償の範囲は、通常損害と予見することができた特別損害です(民法416条)。


損害賠償条項に関する法律の規制

契約の当事者同士が合意すれば、基本的にどのような内容の契約であっても自由に結ぶことができるのが原則です(契約自由の原則)。
この原則から、契約書や利用規約において、損害賠償責任を免除したり、損害賠償額をあらかじめ決めておいたりすることも自由にできるのが原則です。

しかし、たとえば以下のような法律により、その自由が制限される場合があります。
(1)公序良俗(民法90条)、信義則(民法1条2項)
過度な免責や過大な損害賠償額の予定を定める条項は、公序良俗や信義則に違反し、無効となることがあります。
(2)消費者契約法
事業者と消費者の契約(利用規約も含む)において、消費者保護の観点から、事業者の損害賠償責任を免除する条項(同法8条)、消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等(同法9条)のうち一定の類型の条項は、無効となります。また、消費者の利益を一方的に害する条項は無効となります(10条)。

そのほか、以下の法律においても、賠償額の予定の利率や違約金の上限を定めており、それを超える部分は無効とされます。
(3)利息制限法
(4)割賦販売法
(5)特定商取引に関する法律
(6)独占禁止法

以上の法律の規制の枠内で、損害賠償条項をどのように定めるかを検討し、相手方と交渉することになります。


損害賠償条項に関する契約当事者の立場

ビジネス上、よくある契約の類型として、一方が商品やサービスを提供し、他方の顧客がその対価としてお金を支払うという、売買契約、サービス提供契約、業務委託契約などがあります。
これらの契約においては、基本的に、商品やサービスを提供する側に、損害賠償責任が生じるおそれがあるため、できる限り、損害賠償責任の要件を満たすハードルを上げ、または損害賠償責任の効果を小さくしようとするインセンティブが働きます。
他方、顧客側としては、できるだけ損害賠償責任の要件をみたすハードルを下げ、または損害賠償責任の効果を大きくしようとすることになります。
この両者の攻防は、主に以下の3点で繰り広げられることが多くあります。

(1)要件(帰責事由)
債務者に故意・重過失がある場合にのみ損害賠償責任が生じるとすること(軽過失の場合を免責すること)が考えられます。
過失は、重過失と軽過失に分かれます。
重過失とは、故意と同視し得るほどの著しい注意義務違反という意味であり、事実上、わざとに近い落ち度による場合のみ責任を負うという意味になりますので、顧客側としては、この要件による責任の制限はできる限り設けたくないところです。

(2)効果その1(損害賠償の範囲)
法律の原則からすれば、損害賠償の範囲は、通常損害と予見できる特別損害ですが、これをたとえば、『直接かつ現実に生じた通常の損害に限り』といった形で限定することが考えられます。
この文言では特別損害が賠償の範囲から除かれていますが、どこまでの損害が賠償の範囲に含まれるのかが不明確であり、揉めるリスクがある文言ではあります。

(3)効果その2(損害賠償の額)
損害賠償の金額に上限(キャップ)を設けたり、一定の金額を定めたりすること(損害賠償額の予定)が考えられます。
前者は、上限額が実際の損害額に比べて極端に小さい場合、その上限額を定める条項の効力を否定されることもあります。
後者は、損害賠償を求める側にとっては、損害額を立証しなくてよいというメリットがありますし、損害を賠償する側にとっても、リスクを事前に把握できるというメリットがあります。

以上のポイントを踏まえ、自社の立場が損害賠償を求める側なのか支払う側なのかを確認した上で、損害賠償条項の検討・交渉に臨みましょう。


※本記事の記載内容は、2020年4月現在の法令・情報等に基づいています。