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自社を『社会保険完備』の会社にすることのメリットとは?

20.01.28
ビジネス【労働法】
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社会保険は広義の意味では、国が運営している労災保険、雇用保険、厚生年金保険、健康保険、介護保険(健康保険の一部)をいいます。
狭義の意味では、健康保険と厚生年金保険を総称していうこともあります。 
求人票などにある『社会保険完備』とは、原則的に広義の意味でのこれら5つの保険に加入できるという意味です。 

人を雇用する場合、加入義務のある『強制適用事業所』と、加入義務のない『任意適用事業所』に分かれます。 
今回は、事業主が各種社会保険に加入するメリットについて、紹介していきます。
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強制適用事業所と任意適用事業所の違い

株式会社や合同会社に限らず、法人であれば原則的に社会保険への加入義務があります。
加入義務のある事業所を『強制適用事業所』といいます。
また法人ではなく、個人事業所であっても、従業員数が5名以上の事業所は必ず加入しなければいけません。

一方で、従業員が5人未満の個人事業所であれば、社会保険の加入義務はなく、加入は任意になります。
このような事業所のことを『任意適用事業所』といいます。
例外的に5人以上の従業員を抱える個人事業所でも、農林水産業、旅館や料理飲食店、理髪店などのサービス業、さらに、弁護士などの士業事業所は任意適用事業所となります。
理由は、事務処理能力が乏しい、公簿(法令で義務付けられている書類作成)がむずかしい、雇用実態の把握が困難だからです。

任意適用事業所は社会保険に加入するか否かを選択できます。
社会保険に加入しなければ、事務所と従業員の双方で負担する保険料の納付を免れることができます。
しかし、社会保険が完備されていない事業所には人が集まりにくい傾向にあります。
求職者の多くは福利厚生の揃った事業所を探していますし、社会保険が完備されていないというだけで、候補から外れてしまう可能性も高くなります。
これは大きなデメリットです。

将来的な会社の成長を考えるのであれば、任意適用事業所であっても、社会保険への加入をお勧めしたいと思います。

任意適用事業所が社会保険に加入するには、すでに雇用している従業員の同意が不可欠になります。
全体の半数の同意を得られなければ、社会保険に加入することはできません。
双方に負担がかかるので加入に反対の立場を取る従業員も出てくる可能性があります。
その際は、今後の生活や将来のことを考えるなら加入しておくべきだと従業員を説得する必要があります。


雇用する側の社会保険料の負担割合は?

では、雇用する側の社会保険料の負担はどのくらいになるのでしょうか。
狭義の社会保険料は、従業員の報酬ごとに区分が設定されている『標準報酬月額』に、厚生年金と健康保険の保険料率を掛けて算出することができます。
それぞれの保険に対して、事業主がどのくらい保険料を負担しなければならないのか、保険ごとにチェックしていきましょう。

(1)厚生年金保険
保険料は、事業主と従業員が半分ずつ負担します。
保険料率は、年金制度の改正に基づいて、2004年から段階的に引き上げられてきましたが、2017年9月を最後に引き上げが終わり、現在は18.3%で固定されています。
この18.3%を半分にした9.15%ずつを事業主と従業員で負担するというわけです。

(2)健康保険・介護保険 
健康保険料率、介護保険料率は都道府県によって異なります。
両方合わせて概ね11~12%で、それを事業主と従業員で半分ずつ負担します。

ちなみに労働保険(雇用保険と労災保険)の保険料率は、次の通りです。
(3)雇用保険
事業の種類によって保険料の負担の割合が変わります。
2019年度は一般的な事業であれば、賃金総額に従業員が0.3%、事業所側が0.6%を負担します。
また、農林水産業や清酒製造事業であれば、従業員が0.4%、事業主が0.7%、建設業であれば、従業員が0.4%、事業主が0.8%の負担になります。

(4)労災保険
従業員の保険料の負担はなく、全額を事業主が負担しなければなりません。
労災保険の保険料率は業種によって異なり、それぞれの業種の過去3年に渡る労災の発生率を考慮し、3年ごとに改定されます。
2019年度は、たとえば、食料品製造業であれば0.6%、舗装工事業は0.9%、交通運輸事業は0.4%という割合です。
労災の発生率から割り出されるものなので、危険な業種は割合が高くなる傾向にあり、林業は6%、金属鉱業・非金属鉱業または石炭鉱業は8.8%となっています。

強制適用事業所であるにもかかわらず、社会保険に加入していない企業も存在します。
未加入の強制適用事業所には行政から立ち入り検査が入る可能性があります。

加入義務のある法人、個人事務所は社会保険に加入するようにしましょう。
加入義務がない個人事務所もメリットとデメリットを見比べて、加入するかどうかを検討してみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2020年1月現在の法令・情報等に基づいています。