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秘密保持契約を扱う上で注意したい三つのポイント

20.01.07
ビジネス【企業法務】
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取引先との具体的な取引内容の検討に入る前に必ずといっていいほど締結される『秘密保持契約』。
秘密保持契約書は、契約書の類型の中でも基本的なものとして、法務部の新入社員に任されることも少なくありません。
しかし、開示・受領する情報が重要な秘密情報であれば、漏洩や目的外に流用されるなどのトラブルの際は、紛争解決の拠り所として非常に重要な契約書となります。
そこで今回は、秘密保持契約を扱う上で特に注意したい三つのポイントについて説明します。
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情報提供による損害を防ぐ『秘密保持契約』

『秘密保持契約』とは、一般に公開されていない情報を開示するにあたり、相手方に対し、開示した情報を第三者へ開示することや目的外に使用することを禁止する契約をいい、『NDA(Non-Disclosure-Agreement)』とも呼ばれています。
秘密保持契約が利用される場面としては、業務提携、業務委託または共同開発等を検討するため、双方または一方が自己の有する情報を相手方に開示する場面が典型です。

もし、秘密保持契約を締結せずに、秘密情報を相手方に開示してしまうと、その情報をライバル企業に開示されたり、自社が出願を予定していた特許を勝手に出願される等目的外に使われてしまったりと、秘密情報を開示した企業に大きな損害が生じる事態になりかねません。
そこで、こういった事態を防ぐため、また損害が生じた場合に相手方にその賠償責任を追及するために、秘密保持契約を締結することが必要となります。

秘密保持契約の肝となるのは『漏らすな、(目的外に)使うな』です。
『漏らすな』とは、秘密情報の第三者開示・漏洩の禁止です。
『(目的外に)使うな』とは、秘密情報の目的外使用の禁止です。
以下、この点のほか、三つの重要なポイントに絞って説明します。

なお、秘密保持契約書の記載例については、経済産業省『営業秘密~営業秘密を守り活用する~』というWebサイトにおいて、『【参考資料】秘密情報の保護ハンドブック ~企業価値向上にむけて~』の『参考資料2 各種契約書等の参考例』が参考になります。
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/handbook/reference1-6.pdf


秘密保持契約で押さえておきたいポイント

(1)秘密保持契約締結のタイミング
秘密保持契約は、必ず、自己の秘密情報を相手方に開示する前に締結してください。
なぜなら、通常、契約の効力は契約締結後にしか生じないため、秘密保持契約締結前に開示した秘密情報について、相手方に秘密保持義務を課すことはできないからです。
ただし、もし、相手方が合意してくれる場合には、秘密保持契約の発効日を、契約締結日より前、かつ秘密情報を開示した日より前の日とすることで、すでに開示した秘密情報についても秘密保持契約上の義務の対象とすることができます。
とはいえ、相手方が合意してくれなければ、原則どおり、秘密保持契約の効力が及ばないことになりますので、取引先との交渉にあたり、秘密情報を扱う担当者と、秘密保持契約の締結タイミングについて入念に確認しておく必要があります。

(2)開示する秘密情報と受領する秘密情報の多寡・内容等
秘密保持契約書を作成またはレビューする際は、最初に、秘密情報を実際に扱う担当者に、自社と相手方が相互に開示・受領する秘密情報の具体例や内容を確認します。
そして、どちらの当事者の秘密情報がより重要で、どちらの当事者がより多くの秘密情報を開示または受領するのかを確認する必要があります。
なぜなら、開示する秘密情報と受領する秘密情報の多寡・内容等によって、契約当事者双方が秘密保持義務を負う双務契約でよいのか、いずれかのみが義務を負う片務契約がよいのか、双務契約とするとして、秘密情報を受領する側の義務を重くすべきか軽くすべきかなど、秘密保持契約の内容および作成・レビューの方針が大きく異なるからです。

(3)秘密情報の定義
秘密保持契約の肝となる内容『漏らすな、(目的外に)使うな』の対象となる、秘密情報の定義の仕方にはいくつかバリエーションがあり、この定義次第で、実際に開示または受領した情報を義務の対象に含められるかどうかが異なる場合が生じるため、秘密情報の定義は重要です。

定義の仕方の大きな方向性としては2パターンあります。
第1は、『開示者が受領者に開示する一切の情報』といったように、広い定義とする方向性です。
開示者側としては、秘密保持の対象を広げられるため有利となります。
他方、受領者側としては、自己の義務の対象が広がるため不利となります。
第2は、秘密情報に当たる具体的な情報を列挙したり、『秘』や『Confidential』と明記(ラベリング)した情報に限定したりすることにより、狭い定義とする方向性です。
開示者側としては、列挙した情報に該当しない情報やラベリング漏れのあった情報について、秘密保持の対象にできなくなるリスクがあります。
他方、受領者側としては秘密情報であるか否かが明確になるため、義務違反のリスクを低くできます。

一般的には、秘密情報に該当するかどうかが明確な第2の方向性が望ましいとされていますが、すべての秘密情報にラベリングをすることがむずかしいという実情に合わせて、第1の方向性で定義することも少なくありません。
(2)で述べた、自社の開示・受領する秘密情報の多寡・内容等も考慮して、定義を検討する必要があります。

自社の情報を守るためにも、取引の際に秘密保持契約を結ぶことは重要です。
当事者が正しい知識を持って臨むことが、トラブルを防ぐための第一歩となります。
秘密保持契約を締結する際のポイントには、ほかにも細かなものがありますが、少なくとも上記三つのポイントに注意しましょう。


※本記事の記載内容は、2020年1月現在の法令・情報等に基づいています。