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外出先でテレビに映った場合、肖像権侵害といえるのか?

20.01.07
ビジネス【法律豆知識】
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テレビのロケで街中や空港、駅構内などの様子を撮影し、番組内で放映することがあります。
その際、たまたま周囲にいた通行人等の容貌、姿態が映りこんでしまうことがありますが、本人に承諾を得ずに放映することは、個人の肖像権を侵害することにはならないのでしょうか。
そこで、肖像権侵害について、詳しく説明します。
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そもそも肖像権とは?

肖像権とは、『その承諾なしに、みだりにその容貌、姿態を撮影されたり公表されたりしない自由』をいいます。
個人の容貌、姿態はその人が一個の社会的存在として認識される対象であり、その人格的利益と深く結びつくものであると考えられています。
そのため、肖像権は、明文はないものの、人であれば誰でも当然に憲法上保障される人格権の一種として、裁判所において認められてきました。
なお、肖像権は、『撮影』と『公表』の両方に対して主張できる権利であり、『みだりに』とは、『正当な理由がないのに』という意味です。 


肖像権侵害になるときとは?

では、どのようなときに肖像権が侵害されたといえるのでしょうか。
まず、写真や映像を見たときに、それが誰かを容易に特定できないような場合には、そもそも対象者の人格的利益を侵害したとはいえないので、肖像権侵害にはなりません。
そして、人物を容易に特定できるかどうかについては、各メディアの特性も考慮すべきと考えられています。
たとえば、新聞や雑誌等の静止画メディアとテレビなどの動画メディアでは、肖像権侵害の成否につき結論が異なる場合がありえます。
前者において個人の顔が大きく写り込んでいた場合、肖像権侵害が成立する可能性が高いといえます。
他方、後者においては、個人の顔が大きく映ったとしても、雑踏の映像のなかでほんの一瞬、画面を横切っただけのような場合には、録画してコマ送りでもしない限りその人物が誰かを特定することは容易ではないため、そもそも肖像権侵害にはならない可能性が高いといえます。

また、本人の承諾なく、個人を容易に特定できる方法でその容貌や姿態を撮影、公表した場合は全て肖像権侵害にあたるとすると、新聞やニュース番組等による報道や、映画や写真による創作活動が困難になり、表現の自由が意味を失いかねません。
そこで、個人の承諾を得ずにその容貌、姿態を撮影、公表することがあっても、『撮影、公表する必要性』と『撮影、公表されない利益』を比較して、前者を優先すべき場合には、個人の利益が侵害されたとしても、それは各人が社会生活上我慢しなければならない不利益にとどまる(受忍限度内)として、肖像権侵害にはあたらない、と裁判所は判断しています。


受忍限度内かどうかの基準とは?

受忍限度の範囲内かどうかは、
(1)撮影される側の社会的地位
(2)撮影される側の活動内容
(3)撮影の場所
(4)撮影目的
(5)撮影の態様
(6)撮影の必要性
などの諸般の事情を総合的に考慮し、撮影、公表される側の肖像権と、撮影、公表する側の表現の自由のどちらを優先すべきか判断します。

たとえば、(1)については、政治家等の公的地位にある人物の場合は、表現の自由を優先する要素になります。
(2)(3)については、環境問題について公共の場所でシンポジウムを行うような場合は、表現の自由を優先する要素になりますが、自宅でくつろいだり、病院に入院していたりするような場合は、肖像権を優先する要素になります。
(4)については、報道目的の場合は表現の自由を、単なる嫌がらせ目的等の場合は、肖像権を優先する要素になります。
(5)については、腕章などで報道スタッフであることを明らかにして公道上で撮影する場合は表現の自由を、撮影禁止場所で隠し撮りをするような場合は、肖像権が優先される要素になります。
(6)については、その人物を撮影、公表することに社会的な意義、必要性が認められるか、という観点が重要になります。

肖像権は憲法で認められている権利です。
しかし、肖像権侵害にあたるか否かは、個々のケースにおける個別具体的な事情を総合的に考慮し、表現の自由とのバランスに配慮しつつ、判断されることになります。


※本記事の記載内容は、2020年1月現在の法令・情報等に基づいています。