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相続人がいない賃借人に土地を貸すと面倒なことに!?

19.12.19
ビジネス【法律豆知識】
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所有している土地を人に貸す際、気をつけなくてはいけないことがあります。
それは借りた土地に家を建てて住んでいる賃借人に相続人がいない場合です。
もし賃借人が亡くなってしまうと、貸した土地の返還を受けるために後々面倒なことになってしまうのです。
そこで、例をもとに、どのような対策を取っておけばよいのか、紹介していきます。
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所有者が土地の返還を受けるための流れ

“自分の所有する土地上に賃借人が建物を建てて居住し、その賃借人(ここではAさんとします)に相続人がいない”という経験がある不動産所有者の方は多いかもしれません。
Aさんが何の対策もせずに亡くなってしまうと、Aさんには地上の建物と借地権(土地の6割から7割の価値といわれています)の遺産があることになります。
しかしながら、相続人がいないためにこの遺産を誰も受け取ることはできません。
さらに、土地の所有者も、建物と借地権を取得すること、つまり、土地の返還を受けることはできません。

ではどうなるかというと、Aさんと利害関係のある人(土地の所有者やローンを借りていた場合は金融機関なども含まれる)が、家庭裁判所に相続財産管理人(相続人のいない人の遺産を清算する役割を担う人のこと)の選任の申し立てをし、Aさんの遺産を整理します。
そして、最終的に残った遺産が国家に帰属することになるのです。


賃借人との間で契約書などの作成を

こうした手続きには、手間と時間が非常にかかります。
そこで考えられる対策をご紹介します。

実際にあった例ですが、まずは、Aさんが建物を使用しなくなった段階(施設入居など)で賃貸借契約を終了させるようにします。
これは土地を返却してもらうことが目的で、Aさんからすれば借地権相当額を失うことになります。
これは土地所有者にとってはメリットですが、Aさんにとってはデメリットです。

次に、賃貸借契約が終了した時点で、土地上の建物の所有権も土地所有者に譲渡してもらいます。
これはケースによりますが、古い建物の場合には、建物を解体せざるを得ない場合が多く、解体費用を負担する土地所有者側にデメリットが大きいといえるでしょう。
そして、所有者がAさんの意向に従って、建物内のAさんの動産を処分します。
こうした動産の処分にも費用がかかりますが、これは土地所有者がもちます。
不要となる建物(動産)を土地の所有者が処分するのでAさんにはメリットとなります。
さらに、更新料の支払を不要としました。
当然、更新料を支払わなくてもよくなったということでAさんにはメリットとなります。

重要なことは、土地所有者が一方的にメリットを得るのではなく、Aさんにとってもメリットとなるように契約を締結することです。
土地所有者にとって一方的に有利で、Aさんにとって一方的に不利な合意内容は、後にトラブルを生みかねませんし、内容によっては無効になってしまう可能性もあります。
前述の例では、Aさんと弁護士との間で財産管理契約及び任意後見契約を内容とする公正証書並びに公正証書遺言(遺言執行者は弁護士)も作成されており、Aさんの利益も十分に図られている事案でした。

最終的には、Aさんと所有者の間で、上記の案をベースとした公正証書が作成され、Aさんの死後にその内容が実行されました。
借地権は土地の6割から7割といわれていますが、利用する人間がいない場合には、社会的な価値を持ちません。
土地所有者はもちろん賃借人であるAさんにとっても、自分が亡くなった後の整理は重要です。

賃借人に相続人がいない場合、土地所有者が土地の返還を受けるためには、手間も時間もかかります。
スムーズに事を運ぶためには、あらかじめ、賃借人との間で契約書などを作成しておくことをおすすめします。


※本記事の記載内容は、2019年12月現在の法令・情報等に基づいています。