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準備は万端ですか? “初めての社員”を迎えるときに必要な手続き

19.07.30
ビジネス【労働法】
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起業したばかりの頃は一人で回せていた仕事も、やがて軌道に乗ってくると時間や人手が足りなくなり、社員を雇うという話も持ち上がってくるでしょう。
社員を雇うことは、会社経営の一つのターニングポイントとなります。
雇用の結果が、その後の経営をよい方向へ推し進める場合もあれば、反対に経営が立ちゆかなくなる場合もあります。
“初めての社員”を迎えるために、どんな準備をしたらよいのでしょうか?
必要な手続きをご紹介します。
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雇用時には必ず労働契約書を交わしましょう

初めて社員を雇用するとなると、さまざまな手続きがあり、「何をどうすればよいかわからない」という方も多いのではないでしょうか。
必要な手続きについて順を追って見ていきましょう。

面接などを経て雇う人が決まったら、まずは『労働契約書』を交わしましょう。
労働契約書とは、労働に関する条件を明記した契約書です。
中小企業のなかには、これを交わさずに社員を雇う所もあるようですが、後々トラブルの原因となる可能性があるので、必ず事前に準備しておきましょう。

労働契約書の主な項目は次の通りです。

・契約期間(正社員で継続勤務の場合、“期間の定めなし”と記載)
・就業場所
・業務内容
・勤務時間(休憩時間や残業の有無なども含む)
・賃金
・給与の支払い日(何日締め・何日払いといった内容)
・退職に関する内容

こうした項目を雇用者・被雇用者の双方で確認し、署名捺印します。


『労働保険』『社会保険』の手続きも忘れずに

労働保険(労災保険・雇用保険)や社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入手続きも、社員を迎えるときの重要な手続きです。

一人でも社員を雇用する場合、労働保険は必ず加入しなければいけません。
労働保険に加入する場合、社員を雇用した日から10日以内に、所轄の労働基準監督署に『保険関係成立届』を提出します。
その後、所轄の公共職業安定所に『雇用保険適用事業所設置届』と『雇用保険被保険者資格取得届』を提出します。
社員を雇っても、面倒で労働保険加入の手続きをしない会社もあるようですが、社員からの信頼を得るためにも必ず手続きするようにしましょう。

社会保険は、法人の場合には加入義務があり、個人事業主の方で社員が5人未満の場合や一部の事業(飲食業や美容業、税理士等の士業)は加入義務がありません。
ですが、福利厚生を充実させる目的で任意加入ができます。
健康保険は『健康保険協会(協会けんぽ)』が、厚生年金保険は『年金事務所』が管轄となりますが、手続きは年金事務所で行います。
新規加入の際は、所轄の年金事務所で同時に行い、『健康保険・厚生年金保険新規適用届』と『健康保険・厚生年金保険資格取得届』を提出します。
労働・社会保険以外の手続きでは、1日実働8時間を超えて働く場合に、所轄労働基準監督署に届け出る『時間外・休日労働に関する協定届』(いわゆる36協定)が必要になります。


社員を雇うことで生じる『法定三帳簿』の義務

社員を雇用したら、雇用主にはその適切な管理が求められます。
労働基準法では、労働者を雇用する企業に対し、『労働者名簿』と『出勤簿』を作成し、それに基づいて給与を支払うために、『賃金台帳』を作成することが義務づけられています。
これらの帳簿は『法定三帳簿』と呼ばれており、作成はもちろん、内容をしっかり把握したうえで、所定の期間、保管する必要があります。
また社員の管理以外にも、税金納付を管理するために重要となります。
適切に整備していない場合は処罰の対象となります。
そして毎月の給与の支払、社会保険料の計算、労働保険・社会保険の届出、源泉所得税の納付、年末調整など、さまざまな業務も発生します。
税金に関わることなので間違えるわけにはいきません。

社員を雇えばそれだけ、これら労務・税務処理の作業量も増えていくことは覚えておきたいものです。
新しく迎え入れた社員がスムーズに働くことができるよう、万全の準備をしておきましょう。


※本記事の記載内容は、2019年7月現在の法令・情報等に基づいています。