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職場での怪我! 損害賠償請求の主張は、債務不履行? 不法行為?

18.11.29
ビジネス【法律豆知識】
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労働者が仕事中の事故や災害で怪我をしたり、さらにそれが原因で障碍(しょうがい)が残ってしまった場合、入通院の費用や働けなかった期間の収入分などを、使用者に対し損害賠償請求することがあります。
この際、どのような主張で請求するかは、法的構成によって多少の差が出てきます。
今回は、使用者、労働者ともに、万が一のときに備えて知っておきたい、労働中の事故の損害賠償請求についてご紹介します。
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増加し続ける労働中の事故 

2018年5月、厚生労働省が公表した2017年の労働災害発生状況によれば、2017年の死亡災害、休業4日以上の死傷災害の発生件数はともに前年を上回り、それぞれ978人5.4%増)、120,460人2.2%増)。
死亡災害は3年ぶり、死傷災害は2年連続で増加しました。 
また、厚生労働省が同年発表した『第13次労働災害防止計画』の、過去20年間の死傷災害の発生状況によれば、製造業、建設業においては死傷者数の減少率は全業種平均を上回ったものの、第三次産業の中には増加幅が激しい業種も多く、労働者全体の高齢化や就業構造の変化を考慮した対策が求められているとされています。 

機械に挟まれたり巻き込まれたり、高温や低温の物と接触したり、転倒や転落したりといったことで起こる怪我、ガスや有毒物の中毒、無理な動作による腰痛など、労働中の事故は、さまざまな要因から引き起こされ、ときには障碍などの深刻な被害ももたらしてしまいます。
労働者がそうなってしまった場合、入通院に要する費用や働けなかった期間の収入分などの補償を求めて、使用者に対し損害賠償請求をすることがあります。 


債務不履行と不法行為 

労働契約上、使用者には、労働者の生命や安全を危険から保護し、労働者が安全に働けるように配慮する義務(安全配慮義務)があるとされています。 
そのため、前記義務を怠って、その結果、従業員が怪我などをした場合、使用者は、『労働契約上の義務違反(債務不履行)』を理由として、損害賠償責任を負うことになります。 
また一般に、自己の過失により他人に損害を与えた場合、不法行為(民法709条)責任を負います。
そのため、仮に労働契約がなくとも、使用者に過失があれば、『不法行為責任』を理由として、損害賠償責任を負うことになります。 
ここで注意したいのが、使用者の安全配慮義務違反と使用者の過失とは、重なる部分が多いものの、必ずしも一致するものではないということです。 
では、法律上、両者の違いは何でしょうか。 


安全配慮義務違反と過失、それぞれの特徴 

使用者の安全配慮義務違反と使用者の過失。
この2つの法的構成は、いずれも、それにより生じた損害の賠償をすることには変わりありません。 
しかし、具体的な効果には、多少の差が生じています。 

安全配慮義務違反=労働契約上の義務違反(債務不履行)による損害賠償請求は、消滅時効が10年とされています。 
一方で、過失(不法行為)による損害賠償請求は、請求できるときから3年で消滅時効にかかってしまいます。 

また、債務不履行責任は、請求を受けた次の日から、遅滞の責任(具体的には、年5分の割合の遅延損害金)が生じると解されています。 
一方で不法行為責任は、その責任が生じたときから遅滞の責任が生じると解されています。 

さらに、債務不履行責任では、損害賠償額の相殺(たとえば、貸付金との相殺)を認めます。
しかし不法行為責任では、その債権を、不法行為責任を負っている者から相殺することはできません(民法509条)。 


どちらで主張をすればよいのか? 

遅延損害金の利率は、いずれの構成でも年5分です。
少しでも多くの遅延損害金を請求するためには、不法行為構成のほうが、利息の起算点が早くなるのでお得です。
そのため、不法行為構成のほうが、金銭的には大きな額になる可能性があります。 
消滅時効については、民法改正で修正されるので、今後は、債務不履行構成が必ずしも有利というわけではなくなります。 
一方、不法行為構成はあくまで一般的な原則です。
当事者間の契約関係を前提とした債務不履行構成のほうが、事案に適した解決が図れるのではないかと思います。 

もし労働中の事故による怪我で損害賠償請求をすることになった場合、安全配慮義務違反と過失、どちらの構成で主張をするかは、過去のさまざまな判例も参照しながら、慎重に考えて進めていきましょう。