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医療機関による物販は法律的に問題ない?

18.09.11
ビジネス【企業法務】
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医療機関に対しては、医療法等による厳格な規制が及んでおりますが、医療機関が物販(例えば、サプリメントの販売)を行うことについて、直接規制した規定は存在せず、その可否については、解釈に委ねられています。
今回は、医療機関の物販に関する法的規制についてご説明いたします。
物販は、医療機関の非営利性に反する?
 
医療機関は、“非営利”でなければならないというのは、医療法上の大原則の一つです。
では、医療機関が物販を行って利益を得ることが非営利性の観点から違法となるのかというと、それは誤りです。
そもそも、医療法の規定する医療機関の非営利性の主たる要素は、医療機関が、団体の構成員に対し剰余金の分配をしないことです。
つまり、利益を得ることが禁止されているのではなく、得た利益を構成員に分配することが禁止されているわけです。
そうすると、医療機関が物販を行い、利益を得たところで、それを構成員に分配しない限り医療機関の非営利性に抵触することはなく、何ら違法ではないということになります。


物販は医業の範囲内といえるのか?

医療法上、医療機関は、医業の範囲内の行為しか行うことはできません。
そこで、医業の範囲内といえるためには、医療行為そのものであるか、または医療行為に附随する行為(以下、附随業務)等である必要があります。
物販は、医療行為そのものではないため、物販が医業の範囲内であるためには、附随業務である必要があることになります。
そして、附随業務は行政上、主に

1.患者のための行為であること
2.療養の向上を目的とした行為であること

という2つの要件を満たす必要があると解されています。

まず、「患者のための行為である必要がある」ことから、不特定多数人を対象に行為を行うことはできません。
物販との関連でいうと、医療機関が業務を行っている建物内における物販は医療機関の診察を受けに来た特定の患者相手の行為となるため可能ですが、インターネットによる物販は、不特定多数人相手の行為となるため、不可能ということになります。
次に、「療養の向上を目的として行う必要がある」ことから、療養の向上と関係ない行為はできません。
物販との関連でいうと、歯科クリニックで歯ブラシを販売することは、歯科診療という療養の向上の目的に適うことから可能ですが、歯科クリニックで玩具を販売することは療養の向上と何ら関係がないため不可能です。


MS法人に委託すれば、物販はOKなのか?

医療機関で物販が可能な範囲が限定されているなら、いわゆるMS法人(メディカルサービス法人)を設立して物販すればよいのでは? 
と大半の人が思いつくかと思いますが、この方法に対しても行政は規制をかけており、“医療法人の業務範囲”という通達において、上述の1と2の要件を満たさない限り、MS法人を設立して物販を行うことはできないこととなっています。


結論

以上のことから医療機関は、病院等の建物内の売店等で物販を行うことはできますが、インターネット等で物販を行うことはできません。
仮に、インターネット等で物販を行いたければ、別法人を設立し、当該法人によって物販を行う必要があります。

このように、医療機関による物販には、法律上の制限がありますが、行政上は、医療費削減の観点から、医療機関の行える行為をより拡大していこうという議論もあるところです。
したがって、今後は医療機関によるインターネット等による物販が可能となる可能性は皆無ではありません。
そういった意味では、今後の行政の動きを注視する必要があります。