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理想的なプレイング・マネージャーは組織の空気を読める“ノウハウ・マネージャー”

17.03.08
ビジネス【人的資源】
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これまで、実務をこなしながら部下や後輩の指導に力を発揮するプレイング・マネージャーの重要性を指摘してきました。

プレイング・マネージャーは、営業やITなど突出したスキルを持っていることが多いです。しかし、それだけでは不十分です。 

理想的なプレイング・マネージャーになるには、他にどのような能力が必要なのでしょう?
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■担当部署を超えた業績アップをもたらすプレイング・マネージャー 
アメリカ・インテル社のCEOをしていたアンドリュー・S・グローブ(1936-2016年)は、卓越した経営者であると同時に、その著書は広く読まれました。 
彼は、特に中間管理職に注目しました。中間管理職とは、担当部署の最高経営責任者(CEO)であるがゆえに、担当部署の業績に加えて周囲の業績についても目配りができるはずだと言っています。 
つまり、理想的なプレイングマネージャーは、担当の仕事と指導ができるだけでなく、いかに周囲に影響を及ぼすことができるかが大切だと言うのです。 


■周囲に影響を与えるには「組織の空気を読む力」が必要 
人が勉強や訓練を重ねれば、それだけ労働力としての価値が高まります。 
もちろん、労働力としての価値は学力だけではありません。仕事をする上でのコミュニケーションやプレゼン、セールスなどに関するスキルや、他人を指導する力も重要です。 

そして企業と言っても実は千差万別。規模や業種はもとより、その成り立ちや社風までいろいろな個性があります。 
労働力としての価値が高い人は、どんな企業でも実力を発揮できるかというと、そうではありません。 
ある人は、A社では労働力の価値を十分に発揮できたけれど、B社に転職したら力を思うように発揮できないというケースは、よくあることです。 

そこで、労働力としての価値を「どの企業でも同じように役に立つ一般的な能力」と、「当該企業で特に役に立つ能力」とを分けて考えます。 
「どの企業でも同じように役に立つ一般的な能力」とは、ITの基本スキルやプレゼン能力、コミュニケーション能力などが挙げられます。 
「当該企業で特に役に立つ能力」とは、当該企業の商品・サービスに関する現場での知識やスキル、会議の段取り、部門間調整など、当該企業で通用する特有の能力が該当します。 
これら「当該企業で特に役に立つ能力」を発揮するには、その組織のハードとソフトとが組み合わさった「組織の空気を読む能力」が大事になってきます。 

組織の空気を読む能力が高まれば、担当部署だけでなく周囲の部署に影響を与えられます。ひいては、隣接部署の業績アップをもたらすでしょう。 
「当該企業で特に役に立つ能力」の高さが、プレイング・マネージャーには要求されるのです。 


■中間管理職の理想的な役目は隣接部署の業績アップ 
プレイング・マネージャーと呼ばれる中間管理職は、現場の第一線に立ちながら部下の指導・管理にもあたり、文字通り組織の中で真ん中の要(かなめ)の位置にいます。 
その役目は自分のチームの業績を最大にすることですが、隣接する部署の業績にも影響を与えることが理想的と言えるでしょう。 
複数の部署の業績アップに貢献した中間管理職が評価され、管理職への昇進が可能となる企業の例もあります。  

担当部署を超えた業績アップをもたらすことができるのは、組織のノウハウを熟知しているからです。 
先のアンドリュー・S・グローブの著書『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』では、中間管理職をノウハウ・マネージャーと称しています。 
ノウハウ・マネージャーこそ、理想的なプレイング・マネージャーのかたちということができるでしょう。 


企業成長のための人的資源熟考


●プロフィール● 
佐野陽子(さの・ようこ) 
慶應義塾大学名誉教授。1972年慶應義塾大学商学部教授。87年から2年間、日本労務学会代表理事。89年から2年間、慶應義塾大学商学部長・大学院商学研究科委員長。96年東京国際大学商学部教授。2001年から4年間、嘉悦大学学長・経営経済学部教授。主な著書:『はじめての人的資源マネジメント』『企業内労働市場』(ともに有斐閣)。