税理士法人ベストフレンド

この業務はどちらに該当?『下請契約』で適用される法律の違い

26.10.06
業種別【建設業】
dummy

建設業界では、工事の一部を外部の事業者に委託する『下請契約』が行われていますが、委託する業務の内容や取引条件によって適用される法律が異なります。
建設工事そのものをほかの建設業者に請け負わせる場合は、「建設業法」による規制の対象となります。
一方、建設材料の製造や設計図面の作成など、建設工事とは別の業務を委託する場合には、「中小受託取引適正化法(以下「取適法」)」の適用対象となる可能性があります。
建設業法と取適法の適用範囲の違いや、下請業者を保護する主要なルールを解説します。

dummy

建設業界における下請契約とは

建設業界では一般に、元請業者が発注者から工事全体を請け負い、その一部を専門工事会社などに委託する重層的な下請構造がみられます。
この構造は、各分野の専門技術を効率的に活用し、工期内に一定の品質を確保した建造物を完成させるうえで役立っています。

建設業界においては、元請と下請、あるいは一次下請と二次下請の間で日常的に下請契約が結ばれています。
元請業者は発注者に対して工事全体の完成責任を負う一方、下請業者はみずからが担当する部分の施工責任を負います。
このように、それぞれが施工範囲と責任を分担しながら工事を進める形が、日本の建設業界では一般的です。

しかし、発注側と受注側の間には、多くの場合、会社の規模や資金力に差があります。
取引の条件を決定する際、立場の強い発注側が有利になりやすく、受注側である下請業者が不利益を被ることも少なくありません。
こうした不公平な取引を防ぎ、下請業者を保護するために、法律によるルールが整備されています。
そのため、下請契約を結ぶ際は、取引の内容を整理し、どの法律が適用されるのかを事前に確認することが大切です。

建設業法と取適法の適用範囲と主要なルール

下請契約を結ぶ際、事業者が把握しておきたいのは、委託する業務の内容によって適用される法律が異なるということです。

建設工事そのものをほかの建設業者に請け負わせる場合は、「建設業法」の規制を受けます。
同法は、建設工事の適正な施工を確保し、発注者の保護や建設業の健全な発達を図ることを目的としています。
下請負人を保護するため、契約内容を書面などで明示することや、不当に低い請負代金での契約を禁止することなど、さまざまなルールが設けられています。
代金の支払いについても規定があり、特定建設業者が元請負人となる場合には、一定の下請負人に対して、工事目的物の引渡しの申出日から50日以内で、できる限り短い期間内に支払う必要があります。

一方、工事の請負ではなく、建設材料の製造や設計図面などの情報成果物の作成、一定の役務提供などを外部に委託する場合は、「取適法」の適用対象となる可能性があります。
ただし、建設工事に付随する業務であればすべて取適法が適用されるというわけではありません。
取適法では、製造委託、修理委託、特定運送委託、情報成果物作成委託、役務提供委託など、法律で定められた取引類型に該当することに加え、委託事業者と中小受託事業者の資本金や従業員数などの要件を満たす必要があります。

取適法は、「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」を改正した法律で、2026年1月1日に施行されました。
中小受託事業者の利益を保護するため、価格協議を求められたにもかかわらず、協議に応じず一方的に代金を決定する行為や、手形による支払いなどが禁止されています。

取適法の対象となる取引では、発注内容や代金、支払期日などを明示する義務があります。
また、支払期日は原則として中小受託事業者から物品や成果物を受領した日、または役務の提供を受けた日から60日以内に定めなければなりません。
さらに、中小受託事業者に責任がないのに受領を拒否することや、発注後に代金を減額すること、不当な返品なども禁止されています。

2026年1月1日以降に発注する取適法の対象取引では、振込手数料についても注意が必要です。
一方的に振込手数料を中小受託事業者に負担させ、代金から差し引くことは禁止されています。

建設業界の下請契約では、「建設工事そのものの請負なのか」「製造や役務提供などの委託なのか」を区別することが重要です。
発注側・受注側のどちらの立場であっても、契約の内容に応じて適用される法律とルールを正しく確認し、適正な取引を行いましょう。


※本記事の記載内容は、2026年10月現在の法令・情報等に基づいています。