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相続した不動産を売るなら使いたい『取得費加算の特例』とは

26.10.06
業種別【不動産業(相続)】
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相続した不動産を売却して譲渡所得が生じると、その所得に対して所得税や住民税がかかります。
相続税を納めたうえに、売却時にも課税される二重の負担感を緩和するのが「取得費加算の特例」です。
納付した相続税の一部を売却時の「取得費」に加算し、譲渡所得を圧縮できる強力な仕組みですが、適用期限は、原則として相続開始の翌日から3年10カ月以内と厳格に定められています。
今回は、本特例の法的要件と計算の仕組みを整理したうえで、ほかの特例との併用可否や、実務上の注意点を解説します。

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取得費加算の特例とは? 適用の3要件

取得費加算の特例とは、租税特別措置法第39条に規定される「相続財産に係る譲渡所得の課税の特例」です。
相続や遺贈により取得した財産を一定期間内に譲渡した場合に、その財産に対応する相続税額を「取得費」に加算できる制度のことを指します。
通常の譲渡所得は、原則として売却価額から取得費と譲渡費用を控除し算定されますが、本特例によって取得費がかさ上げされるため、結果として課税譲渡所得を圧縮し、税負担を軽減させることが可能となります。

この特例の適用を受けるためには、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。
1つ目は、相続または遺贈により当該財産を取得した人であること。
2つ目は、その取得した財産に相続税が課税されていること。
3つ目は、その財産を、相続の開始があった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していることです。

3つ目の要件は、一般に「3年10カ月以内」と言い換えられます。
相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内とされているためです。
この期限を過ぎると、特例の適用は認められなくなります。
したがって、売却を視野に入れている場合は、逆算して早めにスケジュールを構築することが不可欠です。

加算できる相続税額は、譲渡した財産の相続税評価額や相続税の課税価格などを基礎とする法定の計算式により算出されます。
なお、計算した加算額が特例適用前の譲渡益を超える場合には、上限はその譲渡益相当額に制限されるため、この特例によって譲渡所得がマイナスになることはありません。

本特例の対象は、その譲渡によって譲渡所得が生じる資産で、不動産だけでなく、株式なども含まれますが、株式などの譲渡による所得が事業所得や雑所得に該当する場合には、対象外となります。

併用できる特例と注意すべきポイント

取得費加算の特例は、ほかの譲渡所得の特例との組み合わせによって、節税効果が大きく変動します。
併用を検討できる主な特例には、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除や、特定の居住用財産の買換えの特例があります。
たとえば、相続した家屋を自身が居住用として使用し、要件を満たす場合は、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」との併用が検討できます。
ただし、同一物件において「特定の居住用財産の買換えの特例」とは、原則として同時に適用できないほか、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの3,000万円の特別控除」とも原則として併用できません。

空き家の特例は最大3,000万円(相続人が3人以上で一定の要件を満たす場合は各2,000万円、適用期限は令和9年12月31日)の特別控除を受けられますが、どちらが有利かは、個別の相続税額や取得費、売却価額などによって異なるため、慎重なシミュレーションが必要です。

さらに、遺産分割において代償分割を選択した場合、ほかの相続人に支払う代償金の関係で、取得費に加算できる相続税額が小さくなるリスクがあるため、代償分割だけでなく、不動産を売却して代金を分ける換価分割なども含めた総合的な検討が求められます。
また、大前提として、遺産総額が基礎控除の範囲に収まった場合や、配偶者の税額軽減などによって、自身の相続税額がゼロとなった場合には、本特例は適用されません。

複数の不動産を相続した場合、どれを売るかで効果が変わります。
また、遺産分割協議が長引くと、期限内の売却がむずかしくなるおそれがあります。

手続き面では、売却した年の翌年の確定申告において、「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」および「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】」などの添付が義務づけられます。
本特例は、税負担を大幅に圧縮できる極めて有効な制度ですが、期間制限や遺産分割方法による複雑な制約を伴います。
そのため、売却を考え始めた段階で、税理士などの専門家に相談することが賢明な準備であるといえます。


※本記事の記載内容は、2026年10月現在の法令・情報等に基づいています。