便利でも要注意! 登記の『オンライン申請』の落とし穴
近年、行政手続のデジタル化が進み、自宅や会社にいながらパソコンなどを使って、さまざまな申請ができるようになりました。
登記についても、オンライン申請であれば、平日の日中に法務局の窓口へ足を運ぶ必要がなく、自宅や会社などから、システムの利用時間内であれば夜間でも手続を進めることが可能です。
ただし、ケースによっては紙の書類の提出を求められたり、事前の準備が必要だったりすることもあります。
これから登記手続を予定しているのであれば、オンライン申請の基本と注意点を理解しておきましょう。
登記のオンライン申請を利用するには
不動産の所有者が変わったときや、会社を設立したときなどに行う登記手続は、これまで法務局の窓口へ出向いて書類を提出するか、郵送で申請するのが一般的でした。
以前からインターネットを通じた行政手続も可能でしたが、2011年2月14日からは、新しい「登記・供託オンライン申請システム」の運用がスタートし、登記のオンライン申請がより便利になりました。
オンライン申請の対象となるのは、不動産の売買や相続に伴う名義変更から、会社の役員変更、本店移転などの法人登記まで、法務局が扱う主な手続です。
具体的な方法としては、「登記・供託オンライン申請システム」で利用者登録を行い、アカウントを作成します。
その後、申請を行うには、Webブラウザを利用する方法と、専用の「申請用総合ソフト」をパソコンにインストールする方法があります。
オンライン申請を行うための方法や必要な準備が異なるため、事前に法務省の案内を確認しましょう。
必要事項の入力などが完了したら、インターネット経由で法務局へ申請データを送信します。
意外と手間と時間がかかる場合もある
法務局の窓口まで出向かずに済むオンライン申請ですが、利用する前に知っておきたい注意点もあります。
まず、前提として、手続が完全にオンラインだけで完結しないケースも少なくないということです。
登記を申請する際、申請書だけでなく、内容を証明するための添付書類が必要になります。
たとえば、相続登記を行う場合には、亡くなった人や相続人の戸籍謄本、誰が不動産を引き継ぐかを取り決めた遺産分割協議書、印鑑証明書などを提出しなければなりません。
これらは重要な公文書であるため、多くの場合、原本を法務局に直接持参するか、郵送して提出する必要があります。
つまり、パソコンで申請データを送った後、結局は紙の書類をまとめて郵送する手間がかかるということです。
また、事前の準備時間も考慮しなければなりません。
オンラインで申請データを送信するには、申請者本人であることなどを証明するため、電子署名を付与できる環境を整える必要があります。
個人の場合はマイナンバーカードを使って電子署名を行いますが、そのためにはパソコンに接続するICカードリーダーを用意したり、専用の署名用ソフトウェアをインストールして初期設定を行なったりする必要があります。
パソコンの操作に慣れていないと、準備の段階でつまずいてしまうこともあるでしょう。
申請のために使用するシステムも、慣れていないと使いづらいかもしれません。
「申請用総合ソフト」を利用する場合は、法務省が提供する同ソフトウェアをパソコンにインストールします。
このソフトウェアでは、登記・供託オンライン申請システムで取り扱う各種の手続を行うことができます。
具体的には、申請書の作成や電子署名の付与、送信ができ、電子公文書の取得やデータ管理といった操作も可能です。
なお、ごくまれに、対象となる不動産の登記簿が「改製不適合の登記簿(電子情報処理組織による取扱いに適合しない登記簿)」に該当し、オンライン申請が利用できない場合もあります。
対象となる不動産はオンライン申請を利用できないため、申請方法を管轄の法務局に確認しましょう。
登記のオンライン申請は、自宅のパソコンから手続を進められるため、平日に時間が取れない人にとっては便利なシステムといえます。
しかし、その一方で、完全なペーパーレスには至っておらず、戸籍謄本などの添付書類を後から郵送する手間が発生することや、電子署名の環境構築、専用ソフトの操作に一定のパソコンの知識が求められるというハードルもあります。
まずは、パソコンの操作スキルや準備できる時間、申請する登記の内容を考えたうえで、オンライン申請を利用するか、従来通り紙の書類で申請するか、判断することが大切です。
手続の複雑さに不安を感じる場合や、対象が改製不適合の登記簿に該当するような場合は、司法書士などの専門家に相談し、手続を依頼するのも方法の一つです。
※本記事の記載内容は、2026年10月現在の法令・情報等に基づいています。