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代表者の住所の一部を表示しない「代表取締役等住所非表示措置」

26.09.01
業種別【不動産業(登記)】
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会社を設立する際には、会社法や商業登記法に基づき、商業登記を行います。
登記記録には会社の重要な情報が記載され、株式会社の場合は代表取締役(代表者)の住所も記載されます。
これまでは、登記記録を閲覧すれば、誰でも代表者の住所を知ることができましたが、2024年10月1日より「代表取締役等住所非表示措置」という制度が始まり、代表者の住所の一部を非表示にすることが可能になりました。
特に会社設立を考えている人に向けて、本措置が創設された背景や、手続きの流れ、注意点などを解説します。

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制度が施行された背景と具体的な手続き

株式会社の代表者の住所は、会社法によって定められた重要な登記事項の一つです。
法務局で取得できる登記事項証明書や登記事項要約書、もしくはオンラインの登記情報提供サービスなどを利用すれば、誰でも会社の情報を確認することができます。
これまでは、代表者の住所は必ず公開される仕組みになっていました。

しかし、インターネットやSNSが広く普及したことにより、自宅の住所が公開されることに対して抵抗感を抱く人も増えてきました。
住所が知られることで、ストーカー被害に遭う危険性や、自宅への過度な営業行為を招くおそれもあります。
スタートアップをはじめとした経済界からも、住所の公開がプライバシーの侵害につながるという指摘が相次いでいました。
そして、このような不安が起業そのものを躊躇させる要因になっているという声も上がっていました。

そこで、プライバシー保護と誰もが安心して起業できる環境の整備を目的に、商業登記規則などが改正され、2024年10月1日より「代表取締役等住所非表示措置」が施行されました。

所定の申出を行うと、登記事項証明書等において、代表者の住所のうち、最小行政区画である市区町村(東京23区や政令指定都市は区)まで表示され、それ以降の部分が非表示になります。
詳細な住所が非表示になることで、個人の生活拠点が特定されるリスクを減らせるということです。

この措置を利用するには、登記の申請と同時に申出を行う必要があります。
単独で「住所を非表示にしたい」と申出を行うことはできません。
会社の設立登記や代表取締役の就任登記、引っ越しなどに伴う住所変更の登記といった、代表取締役等の住所が登記事項となる登記申請が対象となります。

また、申出の際には、会社の実態を証明するための書類を添付しなければなりません。
上場会社以外の一般的な株式会社の場合、「株式会社の実在性を証する書面」「代表取締役等の住所等を証する書面」「株式会社の実質的支配者の本人特定事項を証する書面」の3つの書面を添付する必要があります。
なお、上場会社の場合は添付書類の一部が簡略化されています。

不都合が生じる可能性と措置が終了する例

「代表取締役等住所非表示措置」は、代表者のプライバシーを守るうえで有用な制度ですが、利用するにあたってはいくつかの注意点があります。

まず留意したいのは、登記事項証明書を使って代表者の住所を公的に証明できなくなるという点です。
これまで、銀行などの金融機関から融資を受ける際や、不動産の売買や賃貸借契約を結ぶ際など、さまざまな場面で会社の代表者の身元確認のために登記事項証明書が用いられてきました。
しかし、住所が非表示になっていると、金融機関や取引先が独自に本人確認を行う必要が生じます。
その結果、融資の審査に時間がかかったり、不動産取引で通常よりも多くの書類(会社の印鑑証明書など)の提出を求められたりするなど、業務上の影響が生じる可能性があります。
そのため、制度を利用する前には、自社の今後の事業展開や資金調達の予定などを踏まえ、慎重に検討する必要があります。

また、この措置によって代表者の住所が非表示になったからといって、会社法で定められている登記の義務そのものが免除されるわけではないことに注意しましょう。
代表者が引っ越しをして実際の住所が変わった場合には、これまで通り、定められた期限内に住所変更の登記申請を行う義務があります。

さらに、一度非表示措置を受けたからといって、すべての状況で住所の非表示が維持されるわけではありません。
会社から非表示措置を希望しない旨の申出があった場合のほか、会社の本店所在場所における実在性が失われたと判断された場合には、登記官が職権で措置を終了することがあります。
ほかにも、警察や裁判所、税務署などの官公署から職務上の必要に基づいて請求があった場合には代表者の住所情報が提供されます。
また、会社に対して権利や義務を持つ債権者などの利害関係人は、正当な理由があれば住所が記載された登記申請書や添付書面(附属書類)を閲覧することが認められています。

代表取締役等住所非表示措置は代表者のプライバシーを保護し、安心して事業に取り組める環境をつくるための制度ですが、融資を受ける際に不都合が生じたり、登記官が職権で措置を終了したりすることもあります。
設立直後は融資や契約に備えて住所を表示し、経営が軌道に乗った後、登記申請の機会があれば、非表示措置を申し出るのも方法の一つです。
なお、現時点において、代表取締役等住所非表示措置の対象は、株式会社に限定されていますが、近々、その対象をすべての会社に拡大する改正が行われる予定です。
その他についても、改正が行われる予定ですので、最新の情報を確認するようにしましょう。


※本記事の記載内容は、2026年9月現在の法令・情報等に基づいています。