『3Dプリント総義歯』が保険適用! 今後の展望と可能性
「3Dプリント総義歯」とは、口腔内をスキャンして得たデジタルデータをもとに、3Dプリンターでつくる新しいタイプの総義歯です。
この3Dプリント総義歯が、2025年12月1日から保険適用となりました。
これまで自由診療が中心だった3Dプリント総義歯が保険診療に組み込まれたことは、歯科医院の経営においても一つの転換点となります。
3Dプリント総義歯の概要や算定条件、歯科医院にとってのメリットや将来の展望などを解説します。
保険適用となった「3Dプリント総義歯」とは
これまで主流だった総義歯の製作は、歯ぐきの型とりからはじまり、入れ歯の原型となる咬合床の作成、かみ合わせを決める咬合採得、入れ歯の設計と作成、そして最終調整を行うというものでした。
多くの工程が手作業によって行われており、歯科技工士の技術に依存することもあって、どうしても完成までに長い期間が必要でした。
しかし、「3Dプリント総義歯」では、患者の口腔内のデジタルデータをもとに、「液槽光重合方式」と呼ばれる精密な3Dプリンターを用いて形をつくり上げます。
これにより、人の手による誤差の入り込む余地が減り、より精密で安定した品質の義歯を、これまでよりも短い期間で製作することが可能になりました。
2025年12月1日から保険適用となった3Dプリント総義歯ですが、具体的には、歯冠部分をつくるための材料である「ディーマ プリント デンチャー ティース」と、義歯床部分をつくるための材料である「ディーマ プリント デンチャー ベース」が、新たに特定保険医療材料として追加されました。
保険償還価格は、「ディーマ プリント デンチャー ティース」が1歯当たり59円、「ディーマ プリント デンチャー ベース」が1顎当たり2,026円となります。
ただし、今回の保険適用について、現時点では「口腔内のすべての歯を欠損している場合の総義歯」、つまり上下顎を同時に製作するケースにのみ適用されるという点には、注意が必要です。
部分的に歯が残っている患者への部分入れ歯や、上顎あるいは下顎のどちらか片方だけをつくる片顎の総義歯については、現在のところ保険適用の対象外となっています。
また、保険適用のためには、施設基準が設けられている点にも注意が必要です。
歯科補綴治療について、3年以上の実務経験を持つ歯科医師が1名以上在籍していることなどが要件に含まれます。
さらに、一定水準の診療・技工体制が確保されていなければなりません。
具体的には、液槽光重合方式に対応した3Dプリンターが院内に設置され、歯科技工士が配置されていること、もしくは同様の設備を有する歯科技工所と連携していることが求められます。
3Dプリント総義歯のメリットと将来的な展望
保険適用となった3Dプリント総義歯は、患者と歯科医院の双方にとってさまざまなメリットがあります。
まず、前述の通り、デジタルデータに基づき3Dプリンターが正確な造形を行うため、従来の手作業による工程と比べると、高精度な適合性と再現性が期待できるようになりました。
品質の均一化が期待でき、医療の質を底上げしてくれます。
患者の口腔内データや義歯の設計データを継続的に保存できることも大きなメリットです。
たとえば、患者が義歯を紛失してしまったり、うっかり落として割ってしまったりしても、保存されている過去のデータによって、すぐに新しい義歯をつくり直すことができます。
一から型取りをやり直す必要がないため、患者の不安を即座に解消できるだけでなく、医院側のリカバリーにかかる負担も軽減されます。
また、「念のため、予備の入れ歯をつくっておきたい」という需要にも応じることが可能です。
ほかにも、製作工程の大幅な効率化により、短期間で義歯が仕上がるという点も大きな魅力です。
通院回数を減らすことができるため、通院が負担になりがちな患者の助けになるでしょう。
さらに、歯科医院の経営という視点で見ると、作業時間が短縮されることで、技工所との連携もスムーズになり、結果的に人件費や材料費の無駄を省くことができるというのも、利点の一つです。
現在は上下同時の総義歯のみという制限付きではありますが、将来的には片顎の義歯や、複雑な設計が求められる部分義歯への適用拡大も考えられます。
技術の進歩と共に、保険診療のカバー範囲が広がっていく可能性は十分あるはずです。
歯科医院としては、3Dプリント総義歯が保険でつくれるようになったことを、患者に周知していきましょう。
院内のポスターやホームページ、あるいは定期健診の際の声がけなどを通じて、「最新の技術を使った、早くて正確な入れ歯が保険でつくれます」とアナウンスすることは、他院との差別化にもつながります。
集患のためにも、歯科用3Dプリンターの導入や、同様の設備を有する歯科技工所との連携を検討してはいかがでしょうか。
※本記事の記載内容は、2026年7月現在の法令・情報等に基づいています。