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2026年10月から施行予定! 従業員を守る『カスハラ対策法』とは

26.04.07
ビジネス【労働法】
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近年、顧客からの行き過ぎた要求や暴言によって心を病み、職場を去らざるを得ない労働者が後を絶ちません。
このような「カスタマーハラスメント」、いわゆる「カスハラ」について、各社は対策を余儀なくされています。
社会問題化する状況を背景に、2025年には「労働施策総合推進法」の改正案、通称「カスハラ対策法」が成立し、いよいよ2026年10月から施行予定です。
今回の改正で、企業には「従業員をカスハラから守るための措置」を講じることが、法律上の義務として課せられることになります。
その具体的な内容を確認しておきましょう。

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カスハラと認定される行為とは

「カスハラ」は、厚生労働省の指針などで定義されています。
それによると、顧客などからの言動であって、「社会通念上、許容される範囲を超えているもの」で、かつ「従業員の就業環境を害するもの」である場合に、カスハラと認定されます。

これには、胸ぐらを掴むといった身体的な攻撃はもちろん、大声で怒鳴る、SNSに実名を晒すと脅す、土下座を強要するといった精神的な攻撃も含まれます。
また、正当な理由なく何時間も居座る、毎日何十回も電話をかけ続けるといった執拗な言動も典型的なカスハラです。
これまでは個人の対応力の問題として片づけられがちでしたが、今後はこれらを組織で対処しなければなりません。

東京都などでは、先行して「カスタマーハラスメント防止条例」が施行されてきましたが、条例には罰則や全国一律の義務がありませんでした。
しかし、今回のカスハラ対策法の施行によって、すべての企業が、この問題に正面から向き合う必要が出てきました。

従業員を守るために企業がやるべきこと

今回、新たに「カスハラ対策法」という名前の単独の法律がつくられたわけではなく、正確には、以前からある「労働施策総合推進法」という法律に、カスハラ対策が追加された形になります。
労働施策総合推進法は、2019年の改正によって「パワーハラスメント(パワハラ)」の防止措置を企業に義務づけたことで知られていますが、2025年の改正では、その対象がカスハラにまで拡大されたということです。

では、企業は具体的に何をしなければならないのでしょうか。
同法が求める「雇用管理上の措置」は、大きく分けて「相談体制の整備」と「実効性のある対応体制の構築」の二つになります。

まず、従業員がカスハラ被害に遭った際、すぐに声を上げられる相談窓口を設置しなければなりません。
そして、ただ話を聞くだけでなく、被害を受けた従業員のメンタルヘルスをケアし、場合によっては配置転換や休暇の付与など、適切なフォローを行う体制も求められます。
さらに、実際にカスハラが起きた際に、会社としてどのように対応するか、あらかじめマニュアルを作成しておくなどの「抑止のための措置」も重要です。

もし、これらの義務を怠り、改善が見られない場合には、国から助言や指導、さらには勧告を受ける可能性があります。
それでも従わない場合には、社名が公表されるという厳しいペナルティも設けられています。

また、従業員が安心して会社に頼れるよう、不利益な取扱いの禁止も明文化されています。
「カスハラの相談をしたから」などの理由で、その従業員を解雇したり、減給したり、不当な配置転換を行なったりすることは固く禁じられています。

さらに、企業同士の協力体制についても触れられています。
自社の社員が他社でカスハラを行わないよう、研修などを通じて教育することも努力義務とされました。
これは、「自社の社員を守る」だけでなく、「自社の社員をカスハラの加害者にしない」という視点が、現代の企業倫理として求められていることを示しています。

ほかにも、取引先からカスハラ対策への協力を求められた場合には、互いに協力し合うよう努めることも盛り込まれました。
業界全体でカスハラを許さない空気を醸成していくことが重要になります。

2026年10月の施行に向け、企業には今まで以上に「従業員を守る」姿勢が求められます。
これまで、カスハラによって従業員が強いストレスを受け、休職や離職を引き起こすケースが少なくありませんでした。
企業がカスハラに毅然と対応する姿勢を見せることは、従業員からの信頼を高めることになります。
また、良識ある一般の顧客に対しても、心地よいサービス環境を提供することにつながります。
カスハラ対策法の施行までに、規程の改定やマニュアルの作成、社内研修の実施など、今からできる準備を一つずつ進めていきましょう。


※本記事の記載内容は、2026年4月現在の法令・情報等に基づいています。