税理士法人ベストフレンド

全国の不動産を一括で調べられる『所有不動産記録証明制度』が新設

24.12.03
業種別【不動産業(登記)】
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所有者不明土地の解消を目的に、2024年4月1日から相続登記の義務化が始まりました。
義務化に際して、誰もがスムーズに相続登記の申請ができるよう、環境の整備も並行して進められています。
その一つが『所有不動産記録証明制度』の新設です。
所有不動産記録証明制度とは、相続登記が必要な不動産を簡単に把握できるようにするための制度で、2026年2月2日からの施行が予定されています。
特に相続登記を予定している人は知っておきたい、所有不動産記録証明制度について解説します。

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相続登記漏れの発生で土地を放置することに

相続登記とは、被相続人が所有していた不動産を相続人の名義に変更する手続きのことをいいます。
これまで相続登記の申請は任意でしたが、不動産登記法の改正により、現在は相続人の義務となっています。
もし、正当な理由がないまま相続登記を怠ると、10万円以下の過料の対象になるので注意が必要です。

さて、相続人が相続登記の申請を行う場合、被相続人が所有していたすべての不動産を把握しておく必要があります。
被相続人の不動産を把握していないと相続登記の際に漏れが発生して、そのまま放置することになってしまいます。

しかし、故人である被相続人が所有していた不動産がどこにあるのか、それが土地なのか建物なのかもわからないというケースは少なくありません。
特に地方の歴史ある旧家などでは、1カ所だけではなく複数の土地が各地に点在していることもあります。

こうした被相続人が所有していた所在不明の不動産を、全国的に一括で調査し、リスト化して証明する制度が『所有不動産記録証明制度』です。

これまでとこれからの不動産の調査方法

これまで被相続人が所有している不動産を把握するためには、主に「名寄帳(なよせちょう)」「固定資産税納税通知書」「権利証(または登記識別情報通知)」という3つの調査方法がありましたが、どの方法も完全に漏れなく不動産を把握できるわけではありませんでした。

名寄帳は市区町村の固定資産課税台帳を所有者別にまとめた一覧表のことで、役所の資産税課から取り寄せることができます。
名寄帳はそれぞれの市区町村で作成されているため、市区町村にまたがって所有している不動産は各々の市区町村で取り寄せる必要があり、相続人がその市区町村に被相続人の不動産があることを認識していなければ、そもそも取り寄せるという発想が起こらないという弱点がありました。

固定資産税納税通知書は、毎年固定資産税を納めていると送られてくるもので、記載されている住所から被相続人の所有していた不動産を把握することができます。
しかし、固定資産税の課税対象ではない山奥の山林や保安林、私道などは非課税のため課税対象とならず、固定資産税納税通知書では確認できません。
また、毎年1月1日時点の名義で固定資産税納税通知書が作成されるため、1月2日以降に取得した不動産については翌年にならないと反映されません。

権利証(または登記識別情報通知)が自宅の金庫や貸金庫などに保管されていれば、所有不動産を把握できるケースもあります。
しかし、すべての権利証(または登記識別情報通知)が保管されているとは限らず、見つかったとしてもその権利証(または登記識別情報通知)がすべての所有不動産の権利証(または登記識別情報通知)なのかどうか確認する術もありません。
結果として、把握に漏れが生じる可能性もあります。

こうした調査方法では確認することのできなかった被相続人の所有不動産を把握するための制度が、「所有不動産記録証明制度」です。
所有不動産記録証明制度では、相続人が法務大臣の指定する法務局に一定の手数料を納付すると、被相続人のすべての所有不動産に関する登記情報の一覧が「所有不動産記録証明書」として発行されます。
この新しい制度を活用すれば、全国の不動産を一括して調査することができるため、これまで存在した一部の不動産について相続登記が漏れていたという事態を防ぐことが可能です。

もっとも、所有不動産記録証明書は所有者の住所と氏名が一致していないと一覧表に反映されないという課題があります。
ただし、2026年4月1日からは住所や氏名の変更登記も義務化されるため、今後、不一致のケースは減っていくと見られています。
何世代にもわたって相続登記がされていない土地などは、所有者の住所と氏名が一致していないケースが多く、所有不動産記録証明制度でも漏れが出てしまう可能性があるため、ほかの調査方法も併用しながら被相続人の所有不動産を把握する必要が出てくるでしょう。

所有不動産記録証明書は不動産の名義人本人や相続人のほか、司法書士などの名義人または相続人から委任を受けた代理人も請求することができます。
相続登記の際に、被相続人の所有不動産を把握できていないのであれば、まずは複数の調査方法を熟知している司法書士などの専門家に相談してみることをおすすめします。


※本記事の記載内容は、2024年12月現在の法令・情報等に基づいています。