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相続登記で「住所がつながらない」場合にどうすればよいか?

24.09.03
業種別【不動産業(登記)】
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2024年4月1日から相続登記の義務化が始まりました。
法務局では、これまで相続登記が行われず、長期間にわたって放置されていた不動産に関しても登記申請を行うように促しています。
しかし、いざ相続登記を行おうとしても、登記簿に記載されている被相続人の住所が昔のままになっており、場合によっては登記申請できないケースがあります。
そのような状況で書類がどうしても揃わない場合に必要になるのが『上申書』です。
相続登記の際に、上申書が必要になるケースについて把握しておきましょう。

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相続登記に必要な住民票の除票と戸籍の附票

不動産の相続登記を行う際には、登記申請書をはじめとしたさまざまな書類が必要です。
特に重要なのが、被相続人である故人の『戸籍謄本』と『(本籍地記載の)住民票の除票』、または『戸籍の附票』です。
戸籍謄本は、故人の身分や親族関係などを記載した戸籍簿の写しのことで、住民票の除票とは、本人の死亡などによって住民登録が削除された住民票のこと、戸籍の附票とは、はじめて本籍を定めたとき以降の住民票の移り変わりを記録したものを指します。
戸籍謄本と戸籍の附票は被相続人の本籍地の市区町村で、住民票の除票は死亡時の住所地の市区町村で取得することができます。

これらの書類は、亡くなった被相続人と不動産の登記名義人が同一人物であることを確認するために必要となる書類です。
相続登記の際に、法務局は戸籍謄本で『被相続人が死亡した事実』と『法定相続人』を確認しますが、戸籍謄本だけでは被相続人の住所まで確認することができません。
もし、同姓同名の人物がいた場合に間違わないよう、戸籍謄本とあわせて(本籍地記載の)住民票の除票または戸籍の附票で被相続人の住所を確認し、登記名義人と被相続人が同一人物であることの裏付けを取っています。

登記上の住所と被相続人の死亡時の住所が異なるケースは多く、このような状況のことを相続登記では「住所がつながらない」といいます。
住所がつながらない状況のままだと、相続登記の手続きはできません。
そのため、被相続人が何度も転居している場合などは、戸籍の附票で登記上の住所と死亡時の住所までの経緯がわかる状態にする必要があります。
これまでに何度も転居している人であっても、本籍地に変更がなければ、戸籍の附票によって生涯に渡る住所の移り変わりを把握でき、「住所をつなげる」状態にできるということです。

被相続人が同一人物であることを証明

相続登記に必要な住民票の除票や戸籍の附票ですが、場合によっては取得できないこともあります。
2019年に住民基本台帳法の一部が改正されたことにより、住民票の除票と戸籍の附票は、同年6月20日から保存期間が5年から150年に延長されました。
したがって、2019年の5年前にあたる2014年以降の住民票の除票や戸籍の附票は今も保存されていますが、2014年より前の分については、市区町村によっては破棄されている場合もあります。

では、すでに破棄されており「住所をつなげる」ための書類が手に入らない場合は、どうすればよいのでしょうか。
法務省は2017年に、被相続人と登記簿上の所有者が同一人物であることを確認できる書類(「被相続人の同一性を証する書面」)について、通知を出しました。
それによると、住民票や戸籍の附票、または「所有権に関する被相続人名義の登記済証」のうちいずれかの書類があれば、被相続人の同一性が確認でき、登記ができるとされました。

また、2023年の法務省の通知により、次のような場合にも、被相続人の同一性が証明でき、相続登記が行えることになりました。

・被相続人の住民票(または戸籍の附票)、固定資産税の納税証明書(または評価証明書)、不在籍証明書および不在住証明書により、被相続人の氏名や住所などの一致によって同一人であると確認できた場合
・公正証書遺言により相続登記手続を行うにあたり、被相続人の同一性を証する情報として納税証明書などが提供された場合、登記簿謄本と納税証明書(または評価証明書)で不動産の表示および被相続人の氏名が一致し、公正証書遺言と納税証明書(または評価証明書)で被相続人の住所および氏名が一致、かつ、公正証書遺言と戸籍などの謄本で被相続人および相続人の氏名および生年月日の一致によって、同一人であると確認できた場合

もし、住民票の除票や戸籍の附票がすでに破棄されていて取得できず、所有権に関する被相続人名義の登記済証もない場合は『上申書』が必要になる場合があります。
上申書とは、「亡くなったのが自分の被相続人であり、登記上の人物と同一人物」であることを法務局に申告するための書類のことで、原則として法定相続人全員の署名と実印の押印、そして印鑑証明が必要になります。
複数の法定相続人のなかで一人だけが不動産を相続する場合でも、全員の署名と実印と印鑑証明を用意しなければいけません。

被相続人の同一性の証明には、ほかの書類でも確認ができるため、住民票の除票や戸籍の附票が取得できないからといって、必ずしも上申書が必要になるわけではありません。
提出すべき書類が、どうしても揃わないという状況で、上申書の作成を検討することになるケースが多いでしょう。
いずれにしろ上申書を作成するうえでは専門家のサポートが必要になるため、登記申請を行うための書類が揃わない時点で、まずは管轄の法務局や専門家に相談することをおすすめします。


※本記事の記載内容は、2024年9月現在の法令・情報等に基づいています。