「自立支援での要介護度改善」で報酬アップを前向きに検討 取り組みを行わない事業所は報酬を下げる可能性
11月10日に首相官邸で開かれた未来投資会議で、安倍晋三首相は「介護のパラダイムシフトを起こす」と明言。介護保険制度を、「自立支援」に軸足を置いて設計し直し、2020年から本格稼働させたいとした。要介護者を減らすことで介護費を抑制し、社会保障費の増加傾向を食い止めようとする強い意志を示した形だ。
介護保険法では、「自立支援がその目的」と明記されているが、実際の介護は入浴や排泄、食事といった介助が中心で、自立支援の取り組みが広く行われているとは言いがたい。
しかし、自立支援に取り組むことで着実に成果を挙げている例も多い。
同会議でも、要介護度5で移動は車イス全介助、アルツハイマー型認知症とも診断されて特別養護老人ホームに入所した93歳の女性が、自立支援介護を実施することで半年後に歩行器歩行ができるまでに回復した例が紹介された。
安倍首相は、こうした事例紹介を受けた形で「介護が要らない状態までの回復をできるかぎり目指す」と表明。また、「要介護度が下がっていく達成感を要介護者ともに味わえることは『専門職としての働きがい』にもつながる」とし、介護人材のモチベーションアップにも役立つと指摘した。
さらに、こうした取り組みを先端モデルとして世界に発信し、アジアをはじめとする周辺諸国での介護人材の育成・還流につなげる構想も明らかにしている。
具体的には、まず2017年秋までに「自立支援のための介護の構造化・標準化」を図るとした。
状態に応じた適切な介護や、自立支援を促す介護の内容について取りまとめ、介護現場での標準的な取り組みとしていきたい意向だ。
また、要介護度を改善させた事業所には報酬をアップさせる方向で検討を進めていることも明らかにした。
そのために、2018年度の介護報酬改定で、インセンティブ措置の導入を目指すとしている。
一方で、標準化された自立支援の取り組みを行わない事業所に対しては、ディスインセンティブになる仕組みを盛り込み、報酬を下げることも検討。
賞罰式を取り入れることに賛否両論が起こることが容易に予想されるが、首相および政府の社会保障改革に対する強い決意の表れとも言えよう。
介護事業者にとっても、本腰を入れて取り組まなければならない事案になるのではないだろうか。