「生活援助」の介護保険適用は継続へ 事業者への介護報酬引き下げは検討を続ける
10月12日、厚生労働省の諮問機関である社会保障審議会介護給付費分科会が開かれ、訪問介護の中でも掃除や選択、買い物、調理などを行う「生活援助」は、介護保険の対象として継続させる方針を示した。介護費用の抑制のため、介護保険の適用外として自治体の事業へ移行することを検討してきたが、当面見送られることとなる。
訪問介護のサービスは、入浴や着替え、排泄や食事の解除など利用者の体に直接触れる「身体介護」と、掃除や選択、買い物、調理、薬の受け取りなどの「生活援助」の2種類がある。要介護1~5の認定者は、原則として自己負担1割でこれらのサービスを利用可能だ。
厚生労働省が10月4日に公表した「介護保険事業状況報告(暫定)」によれば、要支援・要介護該当者の総数約611万人に対して、「要介護1」は約120万人、「要介護2」は約106万人。つまり「要介護1」「要介護2」の該当者は約226万人と、介護保険被保険者の約37%を占めている。
訪問介護の中でも「生活援助」サービスの利用率が高いのが、この比較的介護の必要度が低い「要介護1」「要介護2」の該当者であり、一部で「ヘルパーを家事代行として活用している」と指摘をされてきた。そのため、膨らみ続ける社会保障費を抑制したい財務省からは、再三にわたって「要介護1」「要介護2」を対象に「生活援助」の利用を原則として自己負担にするよう求められてきた。
これを受け、厚生労働省では「生活援助」を介護保険の給付対象から外して自治体の事業に移行することを検討してきた。しかし、社会保障審議会介護給付費分科会では「利用者の切り捨てにつながりかねない」「介護保険から外すことで重度化につながる恐れもある」などの慎重論が相次いだ。
現在、「要介護1」より軽度な「要支援1」「要支援2」の訪問介護は2017年度までに3年間をかけて自治体の事業に移行しているため、まずはこれを着実に進め、結果を検証したうえで検討するべきとの判断に落ち着き、今回の見送りに至った。