阿部尚武税理士事務所

公取委、規制緩和し「混合介護」取り組みを強く提言 保険外サービスを柔軟に 株式会社も特養ホーム運営

16.09.20
C-MAS会-介護事業
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公正取引委員会は9月5日、介護保険対象サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する「混合介護」をより弾力的に運用できるようにすることを提言した。公取委は介護分野の規制改革に関する報告書をまとめ発表したもので2度目となる。

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注目される提言は、株式会社も特別養護老人ホームを運営できるようにすべきと「規制緩和」を強く進めた。

保険内と保険外のサービスを柔軟に組み合わせ、公定価格より高い料金を設定できるようにする「混合介護の弾力化」も認めるよう求めた。

訪問介護の現場などで認められていなかった同居家族の食事の支度や洗濯などを、追加料金を徴収した上で一体的に提供することを可能にしようという内容だ。

効率的なサービス提供が可能になり、事業者の採算性の向上も期待できるとして、政府の規制改革推進会議などに検討を求めていく考えだ。

公取委が介護分野に関する規制緩和の報告書をまとめたのは2002年以来。
前回は、介護だけでなく医療・労働も含めた提言だったが、今回は介護分野に
絞ってまとめた。

今回の報告書の中で、介護分野に競争政策の考え方を広く取り入れていくこと
の重要性を強調する。公平で自由な競争が活発になれば、多様な事業者が参
入してきて創意工夫を発揮する環境がつくられ、必要なサービスの供給量が
徐々に増えていくとともに、その質の向上にもつながっていくと主張した。

市場原理をうまく機能させていくことにより、利便性を高めつつ事業の効率化を
図れると呼びかけている。

公取委は、競争政策の観点から介護分野について検討を行うには次の4項目に
注目した。

①様々な事業者の新規参入が可能となる環境
②事業者が公平な条件の下で競争できる環境
③事業者の創意工夫が発揮され得る環境
④利用者の選択が適切に行われ得る環境

が整っている、といった点を最重視して検討を行った。 

  

そこで公取委が具体策として打ち出したのが規制緩和。特養の待機者が多い
現状に触れ、「開設主体の規制を撤廃し、医療法人や株式会社などが社会福
祉法人と対等の立場で参入できるようにすることが望ましい」と意見した。

特養の運営は現在、地方公共団体や社会福祉法人などにしか許されていない。
重度の要介護者や低所得者を受け入れる公的な性格が強いため、事業の安定
性・継続性を担保する必要がある。
 倒産による撤退のリスクがつきまとう株式会社などでは、入所者を保護できな
くなる懸念が拭えないからだ。

しかし公取委はこれに反論。撤退時のルールを事前に決めておくことなどで対応
できるとして、「株式会社であることをもって参入を排除する合理性は乏しい」
と断じた。

補助金や税制による優遇も改め、それぞれが平等に競い合える土壌をつくること
も要請した。

保険内・外のサービスを組み合わせる「混合介護」にも言及した。
現行の制度では、原則としてそれぞれを明確に分けて提供しなければいけないと
されているが、これを一体的に行えるようにしてはどうかと提唱する。
サービスの価格も自由化し、介護報酬を上回る値段をつけることを容認すべき
とした。

具体的な例として、訪問介護の際に帰宅が遅くなる家族の食事もあわせて用意
した場合に、通常より高い独自の利用料を取る形などをあげている。