阿部尚武税理士事務所

中小企業が増税された平成28年度税制改正~法人税とは?!

16.07.06
事務所通信
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あっという間に今年も半分終わり、本格的な夏がやってきました。
 夏といえば、そう、賞与の時期ですね。

 日経新聞によると、平成28年度上半期の賞与は対前年で3.7%増加し、 8年ぶりの増加ということです。(2016/6/7 日本経済新聞)
 一方中小企業については、おおむね減少という記事が目立っています。

 例えば大阪シティ銀行の発表によれば、支給企業が4年ぶりに減少(前年比▲1.3%) しているそうです。

 ただ平均の支給額は上がっており、また規模の大きい企業ほど支給企業の 割合が多いそうです。(2016/6/27 マイナビニュース) 規模の大きい企業が儲かっているのかもしれませんね。

 さて今回の記事は、平成28年度税制改正より、法人税に関する改正を紹介します。
 
 昨年末に平成28年税制改正大綱の記事を書かせていただきましたが、 当時は詳細の資料がなく、自民党発表の税制改正大綱を読み解いて 紹介いたしました。そして今年の3月に法案が成立し、その内容が明らかになったのですが、 実は中小企業に対しては法人税が増税されていました!
その驚愕の事実をお伝えいたします。
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1.法人税率 (中小企業増税・大企業減税)


 巷では法人税率が30%を切ることを自民党が公約として取り組み、

法人税率がマイナス0.7%減の23.2%となることが喧伝されていたのですが、

実は中小企業に対する税率が5%増加の19%となっていました。

※法人税の税率
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
       H29/3/31まで H29/4/1以降 H30/4/1以降
中小企業
 800万円以下    15%     19%    19%
 800万円超    23.9%    23.4%   23.2%
大企業       23.9%    23.4%   23.2%
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

地方税である事業税や県市民税の税率と合わせると、現在の法人税率は

約24.895%(中小企業800万円以下の場合)ですが、

これが平成29年4月以降だと、約29.587%となり、約5%の増税となります。



2.繰越欠損金 (中小企業減税・大企業増税)


 次に繰越欠損金についてですが、現在の繰越期間は9年となってますが、

平成30年4月以降開始事業年度については10年間の繰越が可能となります。

 一方、中小企業以外の企業については、欠損金の控除額の制限が

さらに増えることになります。

※欠損金の控除制限(大企業に限る)
~~~~~~~~~~~~~
    繰越控除限度額
現在      65%
H28/4/1以降 60%
H29/4/1以降 55%
H30/4/1以降 50%
~~~~~~~~~~~~~
 
 注意してほしいのは大企業の子会社です。資本金5億円以上の子会社である

法人は大企業とみなされますので、たとえ規模が小さくても欠損金の損金算入制限を

受けることになります。


 いかがでしょうか。法人税減税が大きく報道される中で、その財源確保の名目で

増税が行われています。今回取り上げなかった減価償却費の改正

(建物付属設備・構築物について定率法の不適用)と合わせて、しっかりと動向を

把握しておきましょう。