阿部尚武税理士事務所

直系尊属からの贈与は税率が安い?

16.02.02
事務所通信
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さて今回は贈与税のお話です。 贈与税は、相続税の補完税と言われています。 本来、相続税は家族間の相続による財産の移転を課税機会ととらえて課税しています。基礎控除は平成27年から3600万円+法定相続人×600万円で計算した金額で、この金額を超える場合、相続税の申告が必要になります。 でも少し頭のいい人はこう考えるかもしれません。「だったら自分が相続になるまえに、生前に贈与をしてしまえば相続税がかからなくて済むんじゃないか?」
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つまり贈与税は、相続税の課税逃れを防止するために作られた租税なのです。
ですので、常に相続税と一体として考える必要があります。 贈与税は相続税の課税逃れ防止のために作られた税ですので、課税趣旨は懲罰的な税です。ですので相続税に比べると少額な基礎控除と高率の税が課せられています。


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      基礎控除   税率
相続税  3,000万円~  10%(1,000万円以下)から55%(6億円超)
贈与税   110万円   10%(200万円以下) から55%(3,000万円超)
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相続税は3000万円まで課税されませんが、贈与税は110万円から課税されてしまいます。
実に贈与税と27倍の開きがあります税率は約5倍から20倍です ですので、一般的には贈与税のほうが納税額が高額になる場合が殆どです。 ただし、現在の政策では景気対策のため、特定の目的のためであれば少額の税、もしくは無税にて贈与を奨励している政策(制度)があります。※贈与を奨励している制度(いずれも平成28年1月現在)
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1.相続時精算課税制度(60歳以上の父母祖父母から2,500万円)
2.住宅取得資金のための贈与税の非課税(平成28年度は原則700万円   但し消費税率10%が適用される住宅は、平成299月まで2,500万円)
3.住宅取得資金のための相続時精算課税の適用(60歳未満の父母祖父母OK
4.配偶者に対する居住用財産の贈与(配偶者控除2,000万円)
5.各種納税猶予制度
6.直系卑属に対する教育資金の贈与の非課税(1,500万円)
7.直系卑属に対する結婚・子育て資金の一括贈与時の非課税(1,000万円)
8.直系尊属からの贈与(特例贈与財産)に関する贈与税の税率軽減

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この中であまり知られていないのが8の制度です。この制度は極めてシンプルです。
直系尊属(曾祖父・祖父・父母など)から直系卑属(子・孫・ひ孫など)への贈与については贈与税の税率が軽減されます。


※例1 贈与財産が500万円(課税対象が500万円-110万円=390万円)の場合
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①一般の場合 390万円×20%-25万円=53万円
②直系尊属  390万円×15%-10万円=48.5万円(差額4.5万円)
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※例2 贈与財産が1,200万円(課税対象が1,200万円-110万円=1,090万円)の場合
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①一般の場合 1,090万円×45%-175万円=315.5万円
②直系尊属  1,090万円×40%-190万円=246万円(差額69.5万円)
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 いかがでしょうか。贈与は一般に税金が高いのですが、生前贈与をすることで相続の際の遺産分割がスムーズになる場合があります。
 知っておくと、ちょっとしたところで役に立つかもしれませんよ?