C-MASインフォメーションVol.10
☆介護保険制度―区分支給限度基準額、引き上げへ
消費増税費用を介護報酬に上乗せ 26年4月実施
26年4月、消費税率が引き上げられたときの対応案を検討して
いる社会保障審議会の介護給付費分科会は12月10日、介護
保険サービスに関する消費税の取扱いを取りまとめた。同分科
会は消費増税で介護保険サービス事業者の費用が増す分を、
事業者が受け取る介護報酬に上乗せする方針を決めた。
介護報酬は、診療報酬と同じく「消費税非課税」となっているため、介護事業所に控除対象外消費税(損税)が生じている。消費税率が上がれば、その分この損税も拡大するため、介護報酬のプラス改定を行うことが焦点となっていた。
この日の分科会では消費税8%時の対応について、(1)介護報酬、(2)基準費用額、特定入所者介護サービス費(居住費・食費関係)、(3)区分支給限度基準額―の3点について議論した。
<審議の要点>
介護報酬対応は、基本単位数への上乗せ率を、各サービスの課税割合
に税率引上げ分を乗じて算出
上乗せ率と同様に課税費用に係る上乗せで対応
・基本単位数に対する割合で設定されている加算と福祉用具貸与に
係る加算の上乗せ対応は行わない
・消費税引上げによる影響分は区分支給限度基準額を引上げる
介護報酬制度の改定サイクルは3年毎と決まっているが、
次回は2015年4月と消費増税の後になるため、厚労省
は次期の改定を待たずに見直すことになった。
年末の予算編成を経て上乗せ率を決め、4月から適用
する。
<消費税対応の基本方針>
厚労省はこれまで、3年に1度の介護報酬改定とは別に、
消費増税を踏まえた「増税対応改定」を2014年度に行う
方針を決めていて、この日は、テーマの中でも焦点となる
消費税対応の基本方針を決める予定を組んでいた。
特に在宅サービスの利用量の上限である区分支給限度
基準額などについて注目が集まっていた。
厚労省案では、税率が引き上げられたときの基本的な対応
として、「介護報酬の基本単位数への上乗せ」が示され、
これを介護給付費分科会は大筋で了解した。
<社会保障審議会介護給付費分科会では >
これまでの経緯をみると、社会保障審議会介護給付費
分科会は、次の2点のような対応をとる方針を固めていた。
特に(2)で厚労省の対応が注目されていた。
(1)基本単位数・一部加算への上乗せを行う(上乗率は
各サービスの課税割合に税率引上げ分を乗じて算出する。
算定では、人件費など消費税がかからない費用分を差し引く。
厚労省の調べでは介護サービスに占める非課税費用の
割合は人件費を中心に平均77.9%と高い。
このため上乗せ率は、消費税率の3%引き上げに比べ、
1%未満と小さくなる見込み)。
(2)区分支給限度基準額を引上げる
区分支給限度基準額とは、居宅(在宅)サービス利用者が
1ヵ月間に受けられる介護保険給付の上限額のことで、
要介護度に応じて「要介護1では16万5800円」「要介護5
では35万8300円」などと設定されている。
しかし消費税引上げに伴う介護報酬の上乗せ対応を行う
ことにより、利用者がこれまでと同量のサービスを利用して
いても区分支給限度基準額を超える可能性があり、
厚労省の対応が注目されていた。
<区分支給限度基準額についての提案>
この日の会合で厚労省から、現状で利用者に占める区分
支給限度基準額を超えている人の割合は、中重度の要介
護者の比率が高く、消費税引上げの影響は中重度者に
大きく及ぶとの説明があった。
厚労省案は区分支給限度基準額について、次のような
提案を行った。
・消費税引上げに伴い不利益を被る利用者をできる限り
少なくすることに留意する
・これまでと同量のサービスを利用しているのにも関わらず、
区分支給限度基準額を超える利用者が新たに生じることや、
中重度の要介護者により大きな影響が及ぶことから、消費税
引上げによる影響分は区分支給限度基準額を引上げる
これに対して多くの委員から賛成の声が上がり、了承された。
<保険者システムについて>
厚労省では11日、基準額を引上げた場合、保険者システムに
ついて
「受給者台帳上の区分支給限度基準額を改定するシステム改修」
が必要になると通知した。
都道府県と市町村の介護保険担当者に対し「システム改修に
ついて予算担当者やシステムベンダーなどの関係者と検討し、
必要な予算の確保、システム改修作業の実施に向けた準備を
行う」
よう要請している。
特定福祉用具販売と住宅改修の支給限度基準額は、
公定価格などでない理由から特定福祉用具販売と住宅改修の
支給限度基準額は、引き上げの対象外となっている。