介護の外国人受入れ要件に日本語能力試験 厚労省提案
「外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会」開く
厚生労働省は11月27日、「外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会」を開催し「技能実習制度」を使って介護業界に外国人の労働者を受け入れていく場合、一定の日本語スキルをその要件にすることを提案した。
その是非や具体的な仕組みをめぐる10月の初会合に続き議論が本格的にスタートした。
技能実習制度を介護分野でも活用する構想
技能実習制度を介護分野でも活用する構想は、
政府が6月に打ち出した経済財政諮問会議などの成長戦
略で提案した。
法務省の会議が外国人の労働者を受け入れる「技能実習
制度」の見直しを協議していたが、対象の職種に介護を
加えることを検討すべきと提案する報告書をまとめたこ
とに始まる。
外国人の受け入れを拡大し、介護サービスを提供する
人材を確保していこうというもので、予定では年内に方針
を固める方向にある。
日本語のスキルについて
検討会では実習生が来日する前提として、少なくとも
日本語能力試験の「N3」レベルに到達していることを、
何らかの形で担保する仕組みをつくりたい考え。日本語
能力試験の「N3」は、「日常的な場面で使われる日本語
をある程度理解することができる」というステップで、
介護サービスの質を維持するための最低限だと判断した。
今回の提案は、政府が提案している「外国人技能実習
制度」の活用が発端。初回に続きこの日の会議でも、サ
ービスの質や日本人の処遇に悪影響が出るとして、推進
衆院選の影響で年明け以降にずれ込む公算が大きい。
初回の会合では構成委員からは、「高齢者が相手の現場
では高いコミュニケーション力が欠かせない」として、
十分な日本語スキルを前提にするよう求める声が続出した。
したがい報告書は、日本語(習熟度合いなど)に関する条
件の設定を盛り込んだ内容になりそうだ。
技能実習制度とは
技能実習制度はもともと、途上国などの外国人に能力を
身につけてもらうことにより、日本が「人づくり」を支援
する国際協力のスキームだ。ただ現実には、外国の労働力
を得るツールとして使われてきた側面がある。現在の対象
は、農業や漁業、建設などに関わる68職種。ここに介護
が加われば、外国人の受け入れが広がっていくことになる。
制度を受け持つ法務省も、アジア諸国で介護ニーズが高ま
っていく今後を見据え、「人づくりという制度の主旨にも合
う」と前向きだ。
介護福祉会からの反対も
ただし、介護業界では慎重論が高まっている。来年度の介
護報酬改定をめぐり、財務省が6%という大幅な引き下げを
提案したことを受けて、介護関係者からは強い不満の声が一
気に噴出した。
介護福祉会は「安易に適用され、十分な知識・技術を持た
ない外国人が入ってくる、介護は単純労働ではない」と反
対声明。
日本最大の介護従事者の労働組合・UAゼンセン日本介護
クラフトユニオン(陶山浩三会長、組合員150万人)も、
「ただでさえ良くない介護従事者の処遇がさらに悪くなる」
として、危機感をこれまで以上に強め介護従事者に「今こ
そ結束してともに闘おう」と呼びかけている。介護職員の処
遇がますます悪化したり、サービスの質が下がったりする
懸念が強いとして、複数の団体が抵抗を続けている。