阿部尚武税理士事務所

退職金を使った節税にも少しずつメスが!短期退職所得に対する課税とは!?

21.11.17
事務所通信
みなさんこんにちは。

久しぶりの投稿で緊張しています。

暫くご無沙汰してしまいましたが、

今後はいつものペースで投稿する様

努めてまいりますので、

またお付き合いいただければ幸いです。

さて今回は、改正された退職金に対する

課税について説明をいたします。
一般のサラリーマンにとっても重要な退職金ですが、

中小企業の社長さんにとっても退職金は

重要な要素です。

近年、M&Aが非常に身近になってきました。

日本M&Aセンターの記事によると、

2021年上半期のM&A件数が2,128件で

2020年の2,028件を上回り、

過去最高になったそうです。
(元データはレフコM&Aデータベースだそうです)

退職金は、通常の株式譲渡よりも税金が安くなる

場合があり、またM&Aの対価の支払いの一部としても

活用される面が多いです。

さらに多くの活用方法があり、知っておくべき

税制の一つです。


なお、退職金は所得税法上退職所得となります。

退職所得は、他の所得とは合算されず、

退職所得のみで所得税を計算します。

所得税は累進課税のため、金額が少ない方が

納税額が減少します。

退職所得は、退職者(主にリタイアされる方)の

今後の生活を支える退職金に

過度の所得税を課さない様、他の所得と

合算しない事で、税率を過度に上げない

工夫なんですね。


所得税法に規定されている退職金

(退職所得と言います)は以下の3つです。

※退職所得の種類
****************************
1.一般退職手当等
2.特定役員退職手当等
3.短期退職手当等
****************************

1.一般退職手当等

一般退職手当金等とは、通常の退職手当金等で

上記2及び3に該当しないものをいいます。

この一般退職手当等に関する

退職所得の金額の計算方法は

下記の通りです。

※一般退職手当等の
        退職所得の金額
*********************************
退職所得の金額=(①-②)÷2
① 一般退職手当等の金額
② 退職所得控除額
*********************************

上記計算方法が基本となりますので

よく覚えておいてください。

なお、退職所得控除は以下の通り計算します。

※退職所得控除額
*********************************
① 在籍年数が20年以下
       在籍年数×40万円
       (最低80万円になる)
② 在籍年数が20年超
800万円+(在籍年数-20)×70万円
*********************************

つまり、在籍年数20年間は年40万円、20年を

超えると年70万円になるんですね。


2.特定役員退職手当等

特定役員退職手当等は、在職年数5年以下の

役員が受け取る退職手当金等を言います。

なお役員とは、法人の取締役及び、

国会議員・地方公共団体の議会の議員並びに

国家公務員・地方公務員を言います。

使用人兼務役員も上記役員に含まれるので、

注意が必要です。


特定役員退職手当等の退職所得は

以下のように計算します。

※特定役員退職手当等の
        退職所得の金額
*********************************
退職所得の金額=(①-②)
① 特定役員退職手当等の金額
② 退職所得控除額
*********************************

一般退職手当等の違いが分かりますか?

そうです、『÷2』がありません。

前述の通り、使用人兼務役員も

上記規定に該当する事になりますので、

使用人から役員登用した場合には、

少なくとも5年以上は役員に就任した方が

よさそうです。


3.短期退職手当等

最後に短期退職手当等です。

計算方法は次の通りです。

※短期退職手当等の
        退職所得の金額

A.短期退職手当等が
       300万円以下の場合
*********************************
退職所得の金額=(①-②)÷2
① 短期退職手当等の金額
② 退職所得控除額
*********************************


B.短期退職手当等が
       300万円超の場合

*********************************
退職所得の金額=(①-②)
① 短期退職手当等-150万円
② 退職手当控除額
*********************************

Aの場合は、一般退職手当等と変わりませんが、

Bの場合は、やっぱり『÷2』がありません。

その代わり150万円を引いています。つまり、

300万円を超える部分は『÷2』を

しないという事です。


短期退職手当等は、役員に限らず全ての者に適用される点がポイントです。

先に述べましたが、退職金はM&Aの譲渡対価の一部として

活用されています。

例えば、株式も持たず役員にもならない

元オーナーに、退職後数年で多額の

退職金を支払う事で、この退職金が

特定役員退職手当等に該当せず

退職所得で節税するスキームがありますが、

これが封じられることになります。

因みに短期退職手当等の取り扱いは、

令和4年1月1日以降に収入すべき日が

確定した退職金に適用されます。


課税庁も研究していますね。

節税スキームについては税制改正が

頻繁にあるので、知らない間に

予想より多額の課税がされない様

十分勉強しましょう。