CMASインフォメーションvol.18
介護報酬改定へ特養・多床室の負担増を検討、厚労省方針
低所得者を除く特別養護老人ホームの室料自己負担問題
――厚生労働省
厚生労働省は特別養護老人ホームの「多床室」を使っている入居者の自己負担について、低所得の人を除き、新たに家賃に相当する「室料」を徴収する検討を始めた。大部屋に間仕切りをするなどし、一定のプライバシーを確保した相部屋を想定している。「準個室」のような室料に相当する額を増やすことを検討する考えを示した「案」で波紋を呼んでいる。
この問題が顕在化したのは、7月23日に厚生労働省
が開いた社会保障審議会・介護給付費分科会で議論の
中心となった。
同省の狙いは、負担の公平性を高めつつ、増大を続ける
費用の抑制にも繋げるのが狙いで、来年度の介護報酬
改定に向けた論点にしたい考えがある。
たしかに現行の仕組みには不満もくすぶっている。
多床室の入居者から室料をとらないのは、在宅の高齢
者や個室の入居者からみて不公平だという批判で、見
直しを求める声は以前からあがっていた。最も軽い負
担で済むのは、1部屋に複数のベッドがある多床室だ。
介護保険制度をめぐるこれまでの議論でも、たびたび
取り上げられてきているのだ。とはいえ入居者の負担
を増やすことには反対する意見が出ており、今後は慎
重な検討を求められそうだ。
厚労省には特養の個室化を進めている事情もある。介
護施設の住環境改善が目的だが、個室への入居者から
は、部屋のタイプに応じて月額3万5000円~5万
円程度の室料を徴収している。一方、相部屋は室料を
払う必要がない。そこで同省は、室料負担を求めるこ
とができる一定水準以上の、「準個室」のような相部屋
の具体例を示すことにしている。
同省は、個室入居者や在宅介護サービスを利用してい
る人との公平性を考慮し、相部屋への入居者にも室料を
求めることを前提に与党などと調整に入る。
7月の同審議会で厚労省は、現在の仕組みを今後も継
続していくべきかどうかを、来年の介護報酬改定に向
けて改めて議論する考えを示した。それには負担の公
平性を高めるため、多床室でも室料の一部、または全
部の負担を求めることを協議していく。
しかし相部屋を利用する人の大半は低所得の人が多い。
室料の徴収を始めることについて、特養の運営者からは
「低価格でしか介護を利用できない高齢者の選択肢を狭
める」と批判が出ている。与党内には「多くの人が経済
的理由で相部屋を選択している。簡単に手は付けられな
い」との慎重論も根強くある。その対応策の一つに厚労
省は、収入が国民年金しかないような住民税非課税世帯
の人は、引き続き室料を負担しなくともいいようにする
考えだ。厚労省から具体的な提案が出るのは9月の同審
議会開催になる見込み。