阿部尚武税理士事務所

法人成りをする社長の給与はいくらが適正か~①前提を知る

17.04.11
事務所通信
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桜の見ごろがピークを迎えています。でもこの時期はいつも雨が多く、 雨の中の花見になってしまいました。

それでも桜の並木道を通ると春が来たことを実感できますね。


さて今回は、法人成りに関する社長の給与についてです。


 確定申告が終わり、個人事業を法人成りをした方、もしくは法人成りを 検討している方もいらっしゃるかもしれません。

 法人成りとは、特に決まった定義はありませんが、一般的には 【法人を設立し、個人事業をその法人に承継させる】ことを言います。

 その際によく聞かれることがあります。

それは 【社長の給与はいくらにすればいいか?】という質問です。
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実は平成22年頃に法人成りの記事を書いております。

法人成りについてはこちらを参考にしてみてください。


 そこで、いくつか考え方があると思うのですが、今回は2つの考え方をご紹介します。


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1.法人利益0方式
2.生活費方式
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 但し、これらを検討する際にいわなければならないことがあります。
(ややこしくてすみません)

今回はその前提条件を十分理解しましょう。


※前提を知る

役員報酬を検討する前に、理解しておく事項があります。ここはかなり重要です。
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① 社会保険の強制加入は覚悟しなければならない 
② 借入金返済は法人利益からしか返済できない 
③ 上記2つの事実から基本金額の補正をする 
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ここで基本金額とは、役員報酬の金額を算出するうえで基本となる金額を言います。

基本金額=法人成りの前年の事業所得+青色申告特別控除+青色専従者給与

これは要するに、実質的な利益を指します。社長はこの金額ぐらい稼いでいたという事です。


① 社会保険の強制加入は覚悟しなければならない

 法人成りの際に重要な論点がもう一つあります。それは社会保険の

強制加入です。

おそらくこれが法人成りの最大のデメリットです。単純に経費が増えます。

今後は役員報酬を含む給与には、+15%の別の出費がかかる事を忘れないでください。

基本金額はこの補正が必要になります。

社会保険の補正:基本金額=補正前の基本金額÷(1+15%)
(なお15%は、平成29年度の社会保険料の会社負担額です。)

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※例1
事業所得 500万円・減価償却費 100万円
専従者給与 150万円・青色申告特別控除65万円の場合
基本所得 (500 + 65 + 150)÷1.15 = 621万円
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この補正は絶対に必要になります。ですので、法人成りをした場合には、

現状の粗利益率を見直す必要が必須と言えます。


② 借入金返済は法人利益からしか返済できない

 借入金がある状態で法人成りをした方は、返済の資金を確保しなければなりません。

まず重要な事実を一つ。借入金は利益からしか返せません。

例外はありません。極めて重要な事実です。本当に忘れないでください。


 で、ざっくりですが年間返済額の合計を計算してみてください。その金額と

減価償却費の金額を比較して、その結果を基に基本金額の補正をします。
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年間返済額=<減価償却費 ・・・ 補正は不要です
年間返済額 >減価償却費 ・・・ 補正が必要
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補正後の基本金額は以下の通りです。
借入金返済の補正:
基本金額=修正前基本金額-(年間返済額-減価償却)÷(1-25%)
(なお25%は平成29年度の場合の法人税の税率です。)

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※例1
事業所得 500万円・減価償却費 100万円
専従者給与 150万円・青色申告特別控除65万円
年間返済額 90万円の場合
基本所得 (500 + 65 + 150)÷1.15 = 621万円
(年間返済額90万円<減価償却費100万円のため補正が不要)

※例2
例1の場合で年間返済額が175万円の場合
基本所得 (500 + 65 + 150 - 100※)÷1.15 =534万円
※補正 (175-100)÷(1-0.25)=100万円
        ・・・返済の為にあと100万円の利益が必要になる。
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もう一度言います。借入金は利益からしか返済できません。


 いかがでしょうか。法人成りがメリットがあるかどうか、税金の立場だけで考えると

どうしても社会保険を考えざるを得ません。でもここは絶対に無視できない要素です。

しっかり押さえておきましょう。