阿部尚武税理士事務所

介護事業所が備えるべき『同一労働同一賃金』への対応とは?

26.11.03
業種別【介護業】
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働き方改革関連法の施行により、『同一労働同一賃金』への適切な対応はすべての介護事業所に求められる重要課題となっています。
介護業界では、正社員、パート職員、契約職員など多様な雇用形態の職員が共に働いているため、賃金や手当、福利厚生の取り扱いについて適切な説明と根拠が必要です。
基本給や手当などの待遇の違いについて説明を果たせない場合、損害賠償請求や職員の離職につながるリスクもあります。
今回は、同一労働同一賃金の基本ルールと対応法について解説します。

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待遇差を解消する『同一労働同一賃金』とは

『同一労働同一賃金』とは、正社員とパート・契約社員などの非正規雇用労働者との不合理な待遇差を解消する制度で、2020年4月(中小企業は2021年4月)から施行されています。
さらに、2026年10月1日から同一労働同一賃金ガイドラインなどが改正され、待遇差に関する説明や雇用管理上の対応がより重視されています。

介護業界は非正規雇用で働く人の割合が高く、雇用形態によって「給与」「手当」「賞与」などに差が設けられているケースが少なくありません。
重要なのは、「業務内容」「責任の程度」「人事異動の範囲」などの違いに応じ、待遇差を合理的に説明できるかどうかです。

たとえば、同じ介護業務を行なっていても、正社員には「リーダー業務」「シフト管理」「会議参加」「事故対応」などの責任が付与されている一方、パート職員は限定的な業務範囲にとどまるなど、職務内容や責任の違いが明確であれば一定の待遇差が合理的と判断される場合があります。
しかし、実質的な業務内容や責任がほぼ同じであるにもかかわらず、単に「雇用形態が違うから」という理由だけで賞与や手当を支給しない場合は、不合理と判断されるリスクが高くなります。
説明のつかない不合理な差とみなされた場合、損害賠償請求などのトラブルや、事業所としての社会的信用を失うおそれがあります。
不合理な待遇差と判断されないためにも、まずは自事業所における職員区分ごとの役割・責任を整理し、待遇との関係性を明確に提示できる体制を整えることが重要です。

待遇差の説明責任に備えるためのポイント

「職務内容(仕事内容や責任の重さ)」と「配置の変更範囲(転勤や昇進・異動の有無)」が同じであれば差別的な取り扱いをしてはならず、違いがある場合も、その違いに応じた均衡のとれた待遇にすることが義務づけられています。

介護現場において、特に待遇内容の違いを確認しておくべきポイントは以下の通りです。

1.各種手当の支給基準の違い
資格手当、皆勤手当、夜勤手当、通勤手当などの支給基準を確認します。
特に通勤手当や夜勤手当を、単に「雇用形態がパートだから」という理由だけで不支給とすると、不合理と判断されるリスクがあります。

2.賞与や退職金の有無
賞与や退職金に差がある場合も、その性質や目的、職務内容、責任、貢献度などをふまえ、合理的に説明する必要があります。
実態としてパート職員も同じ責任を負っている場合は見直しが必要です。

3.基本給の決定基準
正社員とパートで基本給の昇給制度や評価基準が異なっている場合、その理由が職務内容や能力の違いに基づいているかを明確に提示できなければなりません。

「介護職員等処遇改善加算」の配分のルールが不明確だと、職員の不公平感につながります。
待遇の決定基準を明文化し、就業規則や賃金規程、手当支給基準などに反映しておきましょう。

介護事業所が取り組むべき実務対応

トラブルを未然に防ぎ、職員が納得して働ける環境を整えるためには、以下の手順で見直しを進めることが重要です。

1.雇用形態ごとの「職務内容」と「責任」の明確化
正社員、パート、契約社員それぞれの業務範囲、責任の程度、シフトや異動の有無を整理・明文化します。
「パートも正社員もまったく同じ仕事をしている」状態であれば、業務の役割分担を再設計するか、待遇をそろえる検討が必要です。

2.待遇差の洗い出しと理由のチェック
基本給、各種手当、賞与、福利厚生などの全項目について、雇用形態による違いを一覧表にまとめ、それぞれの違いに対して「なぜその差があるのか」を客観的・合理的に説明できるかをチェックします。

3.説明がつかない待遇差の改定
不合理な差が見つかった場合は、手当の支給条件変更や基本給の算定ルールの見直しを行います。
不利益変更にならないよう考慮しつつ、就業規則や賃金規程を改正します。

4.説明義務への備えと職員への周知
非正規雇用職員から「正社員との待遇差の理由」について説明を求められた場合、事業主は説明する義務があります。
さらに、2026年10月からは、雇入れ時に待遇差の内容や理由について説明を求めることができる旨を明示する必要があります。
どのような基準で待遇が決まっているのかを明文化し、面談などを通じて丁寧に周知・説明できる体制を整えましょう。

「同一労働同一賃金」への対応は、法令遵守だけでなく、人材定着にもつながる重要な取り組みです。
正社員と非正規職員の職務内容や責任の違いと待遇差の根拠を整理し、制度や就業規則などを定期的に見直して、公平・公正な職場づくりを進めましょう。


※本記事の記載内容は、2026年11月現在の法令・情報等に基づいています。