わかもり税理士事務所

医療ミスなどによる損害賠償請求に備えよう

22.12.06
業種別【歯科医業】
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医師が注意をしていれば防げた過失による医療ミスのことを『医療過誤』といいます。
過去には、抜歯中に神経を傷つけてしまったり、抜く必要のない歯を抜いたりした医療過誤が起きています。
歯科治療中の医療過誤によって患者に損害を与えた場合、歯科医師はその患者に対して賠償責任を負うことになります。
どんなに気をつけていてもミスは起こりえます。
万が一医療過誤を起こしてしまった場合、どうすればよいのでしょうか。
歯科医院における医療過誤への対応策や、医療過誤が起きた場合の『備え』などについて解説します。
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医療過誤に対して歯科医院が負う賠償責任

治療行為中に患者が損害を受けた場合、患者は医師に民法で定められた『債務不履行』や『不法行為』があったとして、損賠賠償を請求することがあります。

債務不履行とは、どのようなケースが該当するのでしょうか。
民法では患者が治療に同意した段階で、歯科医院・歯科医と患者の間で診療契約が結ばれることになり、歯科医には患者に適切な治療を施す責任が生じます。
もし、適切な治療を行っていない場合は、この診療契約が履行されず、不履行となります。
医療過誤によって患者の症状が悪化してしまったり、後遺症が残ってしまったりした場合も診療契約が履行されていないことになるため、債務不履行に基づく損害賠償責任を負うことになります。

また、歯科医院で雇用している勤務医や歯科助手が起こした医療ミスについても、歯科医院は賠償責任を負わなければなりません。

歯科医院は従業員に対する管理監督義務や、民法715条に定められた使用者責任を負っています。
日頃から注意を払い、適切な指導をしていたとしても、従業員の医療ミスによる賠償責任から免れることはほとんどありません。

慰謝料などを含む損害賠償金の請求額は、医療過誤の度合いや、被害の規模などによってさまざまです。
たとえば、歯科矯正治療において患者に「治療期間はおよそ1年」と説明していたにも関わらず、2年にわたって治療が続いたケースでは、裁判所が歯科医院の不法行為責任を認め、100万円の慰謝料と35万円の弁護士費用の賠償を命じました。


転ばぬ先の杖として賠償責任保険の検討を

スタッフ間の連携強化や教育の徹底などによって、医療過誤を防止することはとても重要です。
加えて、万が一の備えも大切です。
歯科医院は、医療過誤に基づく損害賠償金を補償する『歯科医師賠償責任保険』の利用を検討しておきましょう

歯科医師賠償責任保険は、歯科医師はもちろん、歯科医院に勤務する勤務医や歯科助手が医療ミスを起こしてしまった場合も適用されます

ただし、歯のホワイトニングなど、美容を目的とした医療行為に起因する損害賠償や、患者の秘密漏洩に起因する損害賠償などは認められないケースが多いので、加入する保険の保険約款や特別約款をよく確認しておきましょう。

保険会社から支払われる保険金は、患者に対して支払う損害賠償金のほかに、医療事故による損害の拡大を防ぐための『損害防止費用』や、医療事故が発生した際の緊急措置に要した『緊急措置費用』、損害賠償に関する『訴訟費用』なども含まれます。

開業医の場合は、歯科医師賠償責任保険のほかに、『医療施設賠償責任保険』とセットで加入しておくと医療施設の欠陥によって生じた対人および対物の損害を補償してくれます。
たとえば、医療機器を移動中に患者にぶつかってケガをさせてしまった場合や、歯科医院の表の看板が落下して道路の自動車を破損させてしまった場合なども、保険金が支払われます。

歯科医院の経営にはさまざまなリスクがつきものです。
歯科医師賠償責任保険や医療施設賠償責任保険は、一般的な保険よりも取り扱っている保険会社や保険代理店は多くありませんが、個人や歯科医院のほかに、歯科医師会を通じて加入することができます。
もしものときに備え、検討してみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2022年12月現在の法令・情報等に基づいています。