わかもり税理士事務所

フリーランスの美容師に業務を委託するメリットと注意点

21.06.01
業種別【美容業】
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サロンに雇用されて働く形だけでなく、フリーランス(個人事業主)としてサロンと業務委託契約を結ぶ美容師も増えています。
業務委託契約を結ぶ際には、雇用契約との違いを、委託者・受託者の双方がよく理解しておくことが大切です。
今回は、雇用契約と業務委託契約それぞれのメリットとデメリット、そして業務委託契約を結ぶ際の注意点について、解説します。
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雇用契約と業務委託契約のメリット・デメリット

業務委託契約とは、会社が外部の会社や個人に仕事を委託するというもので、労働時間に対してではなく、委託された仕事の成果に対して報酬を支払います
個人がサロンと業務委託契約を結ぶ場合、フリーランス(個人事業主)としてサロンと対等な立場で契約を交わすことになります。

では、従業員を雇う場合と、業務委託契約で働いてもらう場合の、それぞれのメリット・デメリットについて、考えてみましょう。

まず、従業員を雇う場合は、時間をかけて人材育成ができ、サロン運営の安定化を図りやすいというメリットがあります。
従業員自身に帰属意識も芽生えるため、サロンスタッフ間の一体感も生まれやすくなるでしょう。

一方、雇用契約の場合は、労働法の規定に従い、健康保険・厚生年金保険・雇用保険などの社会保険料、労災保険料を負担する必要がありますし、労働時間に対して報酬を支払うため、仮に施術が発生しない日が続いても、給与を支払わなければなりません
また、美容業界のスタッフ定着率は非常に低いという現状があり、せっかく育っていたスタッフが一人前になる前に退職することもよくあります。
そうなると、教育のためにかけたコストを回収できなくなることもあるでしょう。

これに対し、業務委託契約には、高い技術力のあるスタッフをすぐに取り込めるというメリットがあります。
特に、若手を育てている余裕のない小規模店にとっては、教育のためのコストや手間を削ることが可能となります。
また、雇用契約の場合のように、社会保険料等を負担する義務はなく、仕事の成果に対して報酬を支払うため、稼働の程度に関わらずいつも同じ時給や日給を支払うこともありません。

一方、自分の技術を伝えながら長期的にスタッフを育てるということはできませんし、店舗のカラーを作りづらい面もあるでしょう。
業務委託のスタッフが高い技術をもっていたとしても、それがスタッフに共有されるわけでもありません。
また、業務委託のスタッフには、契約外の業務を行う義務はないため、契約外のことを気軽に頼むことは難しいでしょう。


業務委託のスタッフにはどんなメリットがある?

では、業務委託で働くスタッフにとってのメリットは何でしょうか。

まずは、契約内容にもよりますが、労働時間を自由に調整できることがあげられます。
複数のサロンと業務委託契約を結ぶことも可能ですし、技術力を上げたい人にとっては、さまざまなサロンを渡り歩くことで、自分のキャリアプランを立てやすくもなります。
実力によっては高収入を得られる可能性もあり、自身の売上を伸ばすことができれば、自信や次へのステップにもつながります。
また、契約内容によっては、清掃などの雑務をする必要がなく、施術と接客に集中できることもメリットの一つでしょう。

もちろん、業務委託で働くデメリットもあります。
業務委託で働く場合は、労働者を保護する労働法が適用されず、自己責任の部分が大きくなり、収入が不安定になるリスクも伴います。
経理や確定申告、納税を自分で行う必要がありますし、健康保険や国民年金保険にも自身で加入することになります。
収入によっては、個人事業税を支払う義務も生じます。
これらについては、委託する側も理解しておく必要があります。


業務委託契約を交わす場合の注意点

業務委託契約を締結する場合は、トラブルを防ぐためにも、必ず業務委託契約書を交わしましょう。
「親しい知人だから」などと口頭で簡単に済ませるケースもあるようですが、報酬や業務の範囲について明確に定め、書面で合意を得ておくようにしましょう。
急病等、何らかの理由で出勤できない場合にどうするか、自店の備品はどの程度使ってよいのか、はさみなどの施術器具でお客の顔を傷つけてしまった場合にはどうするかなど、さまざまなケースに対する条件や対応を設定しておくことも大切です。

また、業務委託契約と雇用契約では、“指揮命令権の有無”という点が大きく異なることに注意が必要です。
雇用契約においては、雇用主が従業員に業務上の指示をする『指揮命令権』がありますが、業務委託契約では委託者に指揮命令権はありません。
そのため、委託者は仕事の進め方について、口出しすることはできません。
細かく業務指示を出す、労働時間の拘束が強いなど、実態が雇用契約と同じであれば、労働法が適用され、残業代の支払い義務などが発生します。

サロンが資本金1,000万円を超える法人の場合は、『下請法』が適用されることも知っておきましょう。
下請法では、優先的地位の乱用などは禁止されており、たとえば、親事業者は、サービスを提供された(業務が発生した)日から60日以内に報酬を支払わなければならないことなどが定められています。

雇用契約と業務委託契約には、それぞれにメリットとデメリットがあります。
どのような形態で働いてもらうかについては、サロンをどのように運営していきたいのかを考えて判断していくことが大切です。
そして、業務委託契約を締結する際には、トラブルを防ぐために細かなところまで注意を払い、取り決めていきましょう。


※本記事の記載内容は、2021年6月現在の法令・情報等に基づいています。