わかもり税理士事務所

賃貸借契約時には要チェック! 原状回復費用の負担について

20.02.10
ビジネス【法律豆知識】
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現在賃貸住宅に住んでいる人、あるいは過去に住んだ経験がある人は多くいると思います。
賃貸住宅では隣人トラブル、設備に関する問題など、さまざまトラブルに見舞われることがあります。
なかでもよくあるのが、「敷金が戻ってこない」「高額な原状回復費を請求された」など、退去時のトラブルです。
こうした問題を回避するためには、借りる側が必要な知識を身につけておくことが大切です。
今回は、賃貸借契約が終了した際の『原状回復費用の負担』について説明します。
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賃借物件返還時の『原状回復』とは?

契約が終了して敷金を返還してもらう際に、原状回復費用が引かれることがあります。
このときの『原状回復』とは一体どういうものなのでしょうか。

賃借人は、契約終了により賃借物件を賃貸人に返還する場合、賃借物件に附属させた物を収去し、原状に修復しなければならないとされています(民法598条、616条)。
たとえば、賃借物件の床・壁などを汚したり傷めたりした場合には、返還時には賃借人が修繕費を負担する必要があります。

では、賃借人は入居時と全く同じ状態になるまで、賃借物件を復旧させなければならないのでしょうか。
この点、原状回復の定義について、国土交通省住宅局作成の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』(以下、本ガイドライン)では、賃借人が借りた当時の状態に戻すことではなく、『賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(以下、損耗等)を復旧すること』をいうとしました。

つまり、復旧の対象は、賃借人に故意または過失があったり、賃借人に善管注意義務違反(社会通念上、客観的に期待される程度の注意をもって取り扱う義務に反すること)があったり、通常の使用を超えるような使用をすることにより発生した損耗・毀損に限定されているということです。
これは、建物の価値は居住の有無にかかわらず、時間の経過により減少しますし、契約により定められた使用方法に従い、適切に賃借物件を使用していれば、使用開始当時の状態よりも悪くなっていたとしてもそのまま賃貸人に返還すればよいとする判例の考え方に沿ったものです。


賃借人は具体的にどんな費用を負担する?

本ガイドラインによると、経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃貸人負担、故意または過失による損耗等の修繕費用は、賃借人負担となります。
たとえば、カーペットに飲み物等をこぼしたことによるシミ、カビ(こぼした後の手入れ不足等の場合)、フローリングの色落ち(賃借人の不注意で雨が吹き込んだことなどによるもの)については、賃借人の負担とされています。
他方で、畳の裏返し、表替え(特に破損していないが、次の入居者確保のために行うもの)や家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡については、賃貸人が負担することとなっています。
そのほかの例については、本ガイドラインに記載があります。
敷金から原状回復費用が引かれすぎていると感じたら、一度確認してみるとよいでしょう。


賃貸借契約時の『通常損耗補修特約』は無効?

これまでお話ししてきたとおり、経年変化、通常の使用による損耗等(以下、通常損耗)の修繕費用は、原則賃借人が負担することはありません。
もっとも、契約自由の原則があるなかで、通常損耗の修繕費用についても賃借人が負担するとの特約(『通常損耗補修特約』)があった場合はどうなるのでしょうか。

当該特約の有効性について、判例は、以下の場合に限り特約が有効であると考えています。

(1)特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
(2)賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
(3)賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていることを満たしていること

(1)は、たとえば、家賃を周辺相場に比較して明らかに安価に設定する代わりに、こうした義務を賃借人に課すような場合等が考えられ、(3)については、賃借人が負担する通常損耗の範囲が賃貸借契約の条項自体に具体的に明記されているなどその旨の特約が明確に合意されていることが必要です。
これらを充足していない場合には、特約が無効になる可能性があるので、ぜひ一度ご自身の賃貸借契約を確認してみましょう。

以上を踏まえ、貸主または管理会社による物件状況の確認に立ち会う際には、トラブル回避のため、原状回復の費用をどちらが負担するのかを確認するとよいでしょう。
また、具体的な費用が明らかになった際に納得できないことがあれば、説明を求めましょう。
賃貸借契約を結ぶときに、原状回復等の費用負担についてよく確認し、理解しておくことも大切です。


※本記事の記載内容は、2020年2月現在の法令・情報等に基づいています。