わかもり税理士事務所

雇用の維持や創生につながる『ワークシェアリング』とは?

19.03.27
ビジネス【人的資源】
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現在、働き方改革の一貫として推奨されている『ワークシェアリング』。 
企業や労働者が抱えている問題を解決する切り札として期待されている働き方の一つです。 
では、ワークシェアリングとは、いったいどういうものなのでしょうか。 
活用することによって得られるメリットや、具体的な導入例も含めてご紹介します。
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ワークシェアリングが再評価される時代に 

『ワークシェアリング』とは、一つの仕事に対して、時間や日数で区切り、複数の人が“シェア”しながら業務に当たるという働き方で、コスト面や労働環境の面から見ても、多くのメリットがあります。 

実は日本では、1990年代のいわゆる『平成不況』の時点でワークシェアリングが推奨されていましたが、ほとんど実施されることはありませんでした。 
しかし、各業界の人材不足が深刻化すると同時に、リモートワークやアウトソーシングなど働き方の多様性が広がるにつれ、ワークシェアリングの再評価の機運が生まれ、導入する企業も出てきました。 

ワークシェアリング導入のメリットとは?   

ワークシェアリングの大きなメリットとしては、まずは『雇用の維持』があげられます。 
現在、日本は欧州諸国と比べると、週に49時間以上働いている労働者の割合が高くなっており、労働時間の長さが問題になっています。 
たとえば、労働政策研究・研修機構『データブック国際労働比較2017』ILO(国際労働機関)『ILOSTAT Database』によると、週に40時間以上働いている時間外労働者は59.0%を占めているのです。 
この長時間労働者を救ってくれるのが、ワークシェアリングです。 
なぜならば、仕事をシェアすることで、各人の労働時間を短縮し、一人ひとりの負担を減らしてくれるからです。 
さらに、従業員を長時間労働から解放することで、離職の防止にもつながります。 

同時に、ワークシェアリングには、各人のモチベーションの増加や、生産性の向上なども期待できます。 
人間は何時間も集中力を持って作業に臨むことはできません。
一人に長時間労働を課すよりも、一つの仕事を複数人で区切ってそれぞれが短時間で集中しながら作業にあたったほうが、効率がよいといえるでしょう。 
また、企業側からの『雇用の維持』という観点で見ると、各人の労働時間を減らすことで賃金も減らし、結果として従業員を解雇することなく、企業の存続を図ることができます。 

次に、『雇用の創生』というメリットもあります。なぜならば、仕事をシェアすることで、より多くの雇用を生み出すことができるからです。 

たとえば、育児中の人や介護中の人、高齢者やパートタイマー希望者など、さまざまな事情があり、フルタイムで働くことのできない人の受け皿になるのではないでしょうか。 

また、場合によっては、人材にかかるコストも抑えることができます。 
たとえば、配偶者などの扶養に入っており、自分自身は社会保険には加入したくないというパートタイマーもいます。 
社会保険加入の条件に、週の勤務時間が20時間以上あることがあげられます。
そこで、ワークシェアリングでうまく仕事を割り振り、一人の労働時間を週20時間未満にすれば、会社が支払う社会保険料分のコストを浮かせることが可能になるでしょう。 
このようにワークシェアリングは、女性の社会進出や高齢者の雇用創生にもつながるうえ、自社の離職率の低下はもちろん、すでに雇用状態にある優秀な人材の流出も防ぐことになります。 

   
ワークシェアリングを導入した企業の具体例 

では、具体的にはどのようにワークシェアリングを取り入れていけばいいのでしょうか。 
日本で実際に導入している企業を見ていきましょう。 

最も有名な実例は、トヨタ自動車です。 
自動車の売上が低迷した2009年、アメリカの工場で働く従業員を対象に、ワークシェアリングを実施。
各従業員の労働時間を減らすと共に給与の削減を行いました。さらに日本でも工場を停止し、その分の賃金をカットしました。 
給与は減ったものの、従業員は解雇されることなく、また、企業側も従業員を減らすことなく、売上低迷という会社のピンチをしのぐことができました。
解雇を行わずに、『雇用の維持』に成功したというわけです。 

ほかにも、『雇用の創生』という観点では、通信教育や出版などの事業を行っているベネッセコーポレーションが広く知られています。 
ベネッセコーポレーションでは、子育て中の母親でも働きやすいように、短時間正社員制度を導入しています。
併せて在宅勤務の柔軟性を高める施策や制度づくりにも積極的で、ワークシェアリングに対する意識の高い企業だといえます。 

このように、ワークシェアリングは使い方によって、『雇用の維持』や『雇用の創生』につなげることのできる働き方です。 
企業によっては、導入を検討してみる価値はありそうです。一度考えてみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2019年3月現在の法令・情報等に基づいています。