『場所』の販売戦略!『リテールテインメント』で買い物を魅力的に
近年、消費者の価値観が「モノ消費」から「コト消費」へとシフトするなかで、北米を中心に、「リテールテインメント」という新たな商業形態が注目を集めています。
「リテールテインメント」とは、小売を意味する「リテール(Retail)」と、娯楽を意味する「エンターテインメント(Entertainment)」を組み合わせた造語で、単に商品を売るだけではなく、顧客が楽しめるユニークな体験を提供する店舗のことを指します。
熱心なファンを集める「リテールテインメント」を実施している店舗の事例を紹介し、その効果について解説します。
リテールテインメントが注目を集める理由
物があふれる現代において、消費者はただ商品を所有するだけでは満足できなくなりました。
所有するよりも、その商品やサービスを通じて得られる感動、学び、人とのつながり、あるいはそこでしかできない体験に、より大きな価値を見出す人が増えています。
効率性や利便性においてはデジタルの優位性は揺らぎませんが、だからこそ、実際に店舗に足を運び、商品を手に取り、五感で感じるリアルな体験の価値が相対的に向上しているといえます。
「モノ消費」よりも、「コト消費」が重視されるようになったことで、実店舗は販売チャネルというだけではなく、ブランドの世界観を体現し、ユーザーとの感情的な絆を結ぶための『エンゲージメントの場』へと変わりました。
実際に日本でも、リテールテインメントの考え方を取り入れた店舗が誕生しています。
たとえば、衣料品大手の「ユニクロ」は、売り場と公園が融合した新型店舗「ユニクロ PARK 横浜ベイサイド店」を2020年4月にオープンしました。
この施設は、子どもを遊ばせながら商品を選ぶことのできる店舗として、多くのユーザーで賑わっています。
また、2020年7月には、アウトドアブランドの「スノーピーク」が長野県白馬村に野遊びや地域の魅力を体験できる複合施設「snow peak LAND STATION HAKUBA」をオープンしました。
施設では、キャンプやピクニックを体験しながら、同時にショッピングや食事を楽しむこともできます。
ほかにも、「ソニーストア 銀座」が製品を手に取って試せる体験型ストアをリニューアルオープンしましたし、「日産自動車」は新型車をアピールするための体験型店舗の出店を増やすことを発表しました。
熱心なファンをつくるために欠かせない施策
企業がリテールテインメントに取り組むメリットの一つに、より広い顧客層の集客が期待できるという点があります。
リテールテインメントは店舗を訪れることそのものが目的になるようなワクワクする仕掛けや、深い満足感をもたらすような設計がされています。
体験やエンターテイメント要素があることで、「買うつもりがなかった人」や「普段、そのブランドに関心が薄かった人」でも、純粋に「楽しそうだから行ってみよう」という動機で来店するようになります。
これは、潜在的な顧客との接点を圧倒的に増やす効果があるといえるでしょう。
また、顧客の店舗滞在時間が長くなる点もメリットです。
楽しめる要素や体験できるアクティビティが多いほど、顧客は店舗内で過ごす時間が長くなります。
滞在時間が長くなればなるほど、商品を目にする機会が増え、体験によってブランドへの愛着や理解が深まるため、結果的に購入意欲の向上につながります。
さらに、オンライン上での価格競争や、他店との品揃えの差などが縮まりつつあるなかで、「その店舗でしか得られない特別な体験」は、差別化を図るための大きな要素になります。
リテールテインメントは、店舗を独自のブランドの世界観を伝えるメディアに変え、ユーザーの記憶に強く残り、競合他社には真似できない強力な個性と魅力を持つことができる施策です。
ロイヤルティの高いファンを育成し、安定的な収益基盤を築くうえでも、リテールテインメントは非常に重要な取り組みといえます。
デジタル技術が進化し、何でもオンラインで済ませられる時代だからこそ、実店舗の存在意義は「販売」から「体験の提供」へと大きく変化しています。
リテールテインメントは、この新しい時代の店舗の役割を象徴するキーワードではないでしょうか。
商品を並べるだけでなく、場所そのものがユーザーに喜びや感動を提供する戦略は、企業と顧客との間に感情的な結びつきを生み出します。
結果として、長期的なブランド価値の向上と、企業の持続的な成長を実現させるでしょう。
まずは、自社の店舗をどのようにデザインし、どのような体験を付加することで、顧客にとって魅力的な場所となるのか、考えてみてはいかがでしょうか。
※本記事の記載内容は、2026年1月現在の法令・情報等に基づいています。