上場を目指すなら把握しておきたい『上場基準』と『上場維持基準』
企業の上場には、その市場区分で定められた「上場基準」と呼ばれる基準を満たす必要があります。
一方、上場後も投資家が安心して株式を売買できる環境を保つために、継続すべき基準があり、こちらは「上場維持基準」と呼ばれます。
2022年の市場区分の見直し以降は、従来市場に存在していた課題を解消し、企業の持続的な成長を促すための制度が大きく変わりました。
さらに、上場維持基準の未達企業に対して適用されていた経過措置が2025年3月に終了します。
上場を目指す企業に向けて、新しい市場区分における上場基準と上場維持基準を解説します。
新市場区分における新しい上場基準
2022年、東京証券取引所は長年続いてきた5つの市場区分を大幅に見直し、「プライム」「スタンダード」「グロース」という3つの新しい市場区分をスタートさせました。
それ以前は、「市場第一部」「市場第二部」「マザーズ」「JASDAQスタンダード」「JASDAQグロース」の5区分が並立していましたが、市場間の役割が重複している、企業の成長段階に応じた市場区分の位置づけがわかりにくいといった課題が指摘されていました。
特に、投資家から見ると、どの市場区分がどのような企業を対象としているのか理解しづらく、企業にとっても「どの市場区分を目指すべきか」があいまいな状況でした。
そこで、新たに3つの市場区分を設け、それぞれが明確なコンセプトを持つように再構築されました。
新しい市場区分では、グローバルに資金を集めたい企業向けの「プライム」、安定的な事業基盤を持つ企業向けの「スタンダード」、成長フェーズにある企業向けの「グロース」という役割に分けられています。
新しい3つの市場区分では、それぞれのコンセプトに合わせた独自の上場基準が設定されています。
いずれの市場区分でも、投資家が安心して取引できる環境を確保するため、流通株式比率や流通株式時価総額といった流動性に関する基準が重要視されています。
また、企業のガバナンスが適切に機能しているかを確認するため、コーポレートガバナンス・コードへの対応状況も審査の対象となります。
経営成績や財政状態はもちろん、事業を継続してきた年数、成長可能性、情報開示の正確さなど、多面的に企業の状態がチェックされる点が、新市場区分の特徴です。
特に重要なのは、市場区分ごとに基準の水準が大きく異なることです。
たとえば、プライム市場は世界中の投資家から資金を集めることを想定しているため、厳格なガバナンス体制や流通株式時価総額が求められます。
一方、グロース市場は成長可能性を重視し、財務的な基準を柔軟にしつつ、将来の成長戦略の実現可能性が問われます。
スタンダード市場はその中間に位置し、一定の事業安定性を備えながらも、幅広い企業が挑戦できるようバランスの取れた基準となっています。
上場を目指す会社が知っておきたい新基準
2022年の市場区分見直しから3年の経過期間が設けられ、上場維持基準に達していない企業は、その期間中に基準達成を目指すことが求められてきました。
しかし、2025年3月1日以降に到来する基準日からは、この経過措置が終了し、本来の上場維持基準が厳格に適用されています。
上場維持基準は、上場基準と同様、株主数や流通株式数、流通株式時価総額、流通株式比率など、市場の健全な流動性を維持するための要素が中心となります。
さらに、売買代金や売買高といった実際の市場取引量も基準に含まれ、実際に投資家が売買しやすい状態を保てているかが問われます。
企業価値を判断するうえで重視される時価総額の水準も重要です。
これらの基準は、企業が上場した後も適切なガバナンスを維持し、継続的に情報開示を行い、株主との対話を続けているかを確認する目的があります。
上場し、株式市場から資金を調達する以上、透明性の高い経営が求められ、企業は自社の財務・ガバナンス・事業の質を改善する努力を続ける必要があります。
経過措置終了後は、市場区分ごとに設定された維持基準に達していない場合、改善計画の提出や指定期間内での達成が求められます。
それでも達成が見込めない場合には、『上場廃止』となる可能性があります。
そのため、企業は基準日までに自社の現状を正しく把握し、必要な改善策を着実に進めておくことが重要になります。
一方、上場を目指す企業にとって、上場基準と上場維持基準は、企業の経営基盤を強固にし、投資家から信頼される企業になるための羅針盤ともいえる存在です。
新しい基準では、ガバナンスの強化や情報開示の質向上が以前よりも重視されています。
これは、上場企業が社会的責任を果たし、持続的に成長していくためには欠かせない要素です。
基準を満たすために社内の体制を整備した企業は、結果として内部統制が強化され、経営上のリスクを早期に把握できるようになります。
また、上場後に維持基準を満たし続けることは、企業価値を向上させる努力の継続を意味します。
投資家は、短期的な利益だけでなく、長期的な成長性を重視します。
そのため、基準への対応は単に上場のための準備にとどまらず、企業のブランド力や信用力を高める取り組みとしても非常に重要になります。
これから上場を目指す企業は、早い段階から自社の事業規模・財務状況・ガバナンスの整備状況を確認し、どの市場区分を目指すべきかを慎重に検討しておきましょう。
※本記事の記載内容は、2026年1月現在の法令・情報等に基づいています。