従来の採用との違いは?『タレントアクイジション』に取り組むメリット
少子高齢化や働き方の多様化により、企業が欲しい人材を確保する難易度は年々高まっています。
「求人を出しても応募が来ない」「企業文化に合う人が見つからない」という悩みを抱える企業も少なくありません。
そうしたなか、注目を集めているのが「タレントアクイジション(Talent Acquisition)」という採用手法です。
「才能の獲得」と訳せるこの方法の最大の特徴は、従来の「待ち」の採用ではなく、経営戦略と連動して必要な人材を戦略的に採りに行く「攻め」の採用を行う点です。
これからの時代に不可欠となるこの手法について、具体的に解説します。
タレントアクイジションと従来の採用の違い
これまで多くの企業で行われてきた一般的な「採用活動(リクルーティング)」は、欠員が出た際や増員が必要になったタイミングで求人票を公開し、応募してくる人を待つというものでした。
一方で「タレントアクイジション」は、より長期的かつ経営的な視座を持つ採用手法です。
これは、今すぐに欠員があるかどうかにかかわらず、将来の事業戦略を実現するために必要な「才能(タレント)」を定義し、その人材に対して企業側から積極的にアプローチを仕掛けていくというものです。
つまり、採用活動を「応募者の選定業務」ととらえるのではなく、「人材市場へのマーケティング活動」や「関係構築(エンゲージメント)」としてとらえ直すのがタレントアクイジションの本質といえます。
優秀な人材は、必ずしも今すぐ転職を考えているわけではありません。
そうした「転職潜在層」に対しても自社の魅力を発信し続け、接点を持ち、いざというときに自社を選んでもらえるよう働きかける一連のプロセスこそが、「タレントアクイジション」という考え方の軸になります。
では、実際にどのようにして攻めのアプローチを行えばよいのでしょうか。
まず重要なのが「自社のデータベース活用」です。
これは、過去に接点があったものの採用に至らなかった候補者や、イベントで名刺交換をした優秀な人材などの情報をデータベースにプールしておき、定期的にコンタクトを取り続けるというものです。
企業の状況や候補者のキャリアステージが変化したタイミングで再アプローチすることで、ゼロからの母集団形成よりも効率的に人材を獲得できる可能性があります。
また、「SNSの活用」も欠かせません。
X(旧Twitter)やFacebookなどのソーシャルメディアを通じ、企業文化や働く社員の姿を日常的に発信することで、求人サイトのスペック情報だけでは伝わらない「温度感」を伝えることができ、候補者のファン化を促します。
さらに、気になる人材に対して人事担当者が直接メッセージを送るダイレクトリクルーティングも、SNSを活用することでよりスピーディーに行うことが可能になります。
その他、社員による紹介、いわゆる「リファラル採用」も有効です。
リファラル採用とは、現場で働く社員の人脈を活用し、友人や知人を紹介してもらう手法を指します。
社員自身が自社の魅力を理解し、友人にすすめたいと思える環境でなければ成立しませんが、マッチングの精度は高く、タレントアクイジションにおいて最も強力なチャネルの一つといえます。
タレントアクイジションに取り組むメリット
手間をかけてタレントアクイジションに取り組む最大のメリットは、「優秀な人材を確保できる」確率が格段に上がることです。
一般的に、スキルが高く実績のある人材ほど、現在の職場で重宝されており、みずから求人サイトを見て回ることは稀です。
こうした『転職市場に出てこない優秀な層』に対して、企業側からアプローチすることで、競合他社とバッティングすることなく独占的に対話を進められる可能性が高まります。
また、「マッチング率が高い」ことも大きな利点といえるでしょう。
従来の採用では、応募書類や数回の面接だけで合否を判断しなければならず、入社後のミスマッチが起きがちでした。
しかし、タレントアクイジションでは、本格的な選考が始まる前から中長期的にコミュニケーションを取り、お互いの価値観やビジョンを共有する期間を設けます。
そのため、入社後のギャップが生まれにくく、結果として早期離職の防止や、入社直後からの高いパフォーマンス発揮につながる可能性が高くなります。
もちろん、タレントアクイジションの導入にあたっては、いくつか課題もあります。
たとえば、相手との関係構築を前提とするため、今日声をかけて明日入社してもらう、といったスピード感のある対応には不向きです。
短期の採用を望むのであれば、別の方法で人材を確保しなければいけません。
また、どうしても工数に手間がかかるため、人事担当者の負担が増えてしまうのもネックです。
したがって、すべての採用活動をタレントアクイジションにするのではなく、突発的な欠員補充には従来の求人媒体を使い、将来を見据えたコア人材の獲得にはタレントアクイジションを行うなど、目的と時間軸に合わせて手法を使い分けるバランス感覚が求められます。
しかし、これまでの受け身の採用から脱却して、才能をみずから獲得しに行く主体的な行動は、きっと企業の成長につながるはずです。
まずは、人材をプールするためのデータベースの構築やSNSでの発信など、できることから始めてみてはいかがでしょう。
※本記事の記載内容は、2026年1月現在の法令・情報等に基づいています。